ユニファイドコマースにおけるパーソナライズマーケティングとは

 近年、お客様一人ひとりの属性や興味、趣味嗜好、行動などに合わせて最適な情報やサービスを提供するマーケティング手法であるパーソナライズマーケティングが注目されています。従来のマーケティングでは、大量生産と大量消費、さらにテレビCMなどのマスメディアによる不特定多数へのアプローチが主流でした。しかし近年では、新聞や雑誌、テレビ離れをする消費者が増えて、マス広告が有効でなくなる中、マーケティング手法にも変化が求められらています。
 例えば、2023年2月に電通が発表した「2022年日本の広告費」によると、インターネット広告費は、3兆912億円(前年比114.3%)となり、2兆円を超えた2019年からわずか3年で約1兆円増加しています。マスコミ四媒体広告費(テレビ・新聞・雑誌・ラジオの4マス媒体の合計)の2兆3,985億円(前年比97.7%)も優に超えており、多くの企業がインターネット広告に注力するようになったと言えるでしょう。

 こういった時代の変化を背景に、注目されているのが、パーソナライズマーケティングです。パーソナライズマーケティングとは、お客様一人ひとりに合わせたアプローチをおこなうことで、マスマーケティングに対して購入率の向上などが期待されます。パーソナライズマーケティングには、オフラインも含めると様々な施策がありますが、代表的な例として、パーソナライズされたインターネット広告やメールマーケティングによるクーポンやセール情報のパーソナライズ化、ECサイトにおける商品のレコメンド表示、パーソナルカラーや骨格診断などの診断コンテンツによる個人の嗜好や背景に合った商品の提供などが挙げられます。この記事では、今注目されているパーソナライズマーケティングとユニファイドコマースについて紹介していきます。

電通 2022年日本の広告費

ユニファイドコマースに欠かせないパーソナライズマーケティングの重要ポイント

 ユニファイドコマースを成功させるためには、データ活用によるパーソナライズマーケティングの導入が必要です。
 ユニファイドコマースでは、顧客に関するデータを統合し、それを活用して一貫性のある顧客体験を提供します。具体的には実店舗とECサイトの取引データや行動履歴、好みなどの情報を一元管理し、データを活用することで個々のお客様に合わせたアプローチをおこないます。
ユニファイドコマースにおけるパーソナライズマーケティングでは、実店舗とECサイト両方のデータを活用することで、より緻密な分析とアプローチが可能となります。お客様一人ひとりに適した商品をECサイト上にレコメンド表示させたり、お客様が何度も閲覧している商品のセール情報やクーポンを送信したりなど、よりきめ細やかなアプローチを実施できます。
 ユニファイドコマースでは、より便利でストレスのない買い物体験をお客様に提供することで顧客体験を向上させることを目的としており、そのためにはパーソナライズマーケティングが必要不可欠となります。ユニファイドコマースにおけるパーソナライズマーケティングの、特に重要なポイントをあげていきます。

  • データの収集と分析
     オンラインにおけるパーソナライズマーケティングの基盤は、顧客データの収集と分析にあります。ユニファイドコマースでは、オンラインとオフライン双方での顧客情報や行動データ、購買履歴、好みなどを収集し、これらのデータを分析して利用することが可能です。ユニファイドコマースにおけるパーソナライズマーケティングでは、オンライン、オフラインどちらかのデータではなく双方から得たデータを活用することで、より緻密な分析をおこなうことができます。
  • セグメンテーションの細分化
     ユニファイドコマースでは、オンラインとオフラインの双方から集めた膨大なデータを、細やかなセグメントに分けることが可能です。性別や年齢、地域といった大きな区分けはもちろん、購入頻度や来店履歴、ECサイトの閲覧履歴やアクセス頻度、どのキャンペーンから購入に至ったのかなどの細かい区分けも可能です。さらにアンケート結果などから得られる属性データを反映することで、より緻密なセグメントとパーソナライズされた情報発信が可能となります。
  • お客様の行動の予測分析とアプローチ
     ユニファイドコマースにおけるパーソナライズマーケティングではデータの収集と分析により、お客様の購買行動の予測分析をおこないます。例えばお客様が店舗で購入した商品を消費しきる頃にメールやスマートフォンアプリへ通知をおこなったり、お客様がECサイトで何度も閲覧している商品のクーポンを送ったりなどのアプローチをおこないます。お客様の購買意欲が高まるタイミングを狙うことで、購入率のアップが期待できます。
  • オンラインとオフラインをシームレスにつなぐ一貫性
     ユニファイドコマースにおけるパーソナライズマーケティングは、ECサイト、スマートフォンアプリ、実店舗などの異なるチャネルを通じて一貫した購買体験を提供することを目指しています。お客様がどのチャネルを利用しても、お客様一人ひとり最適なパーソナライズされた商品提案やお客様に合わせたクーポン、購入履歴の確認などの情報やサービスが得られるようにします。
  • AI(人工知能)などのテクノロジーやMA(マーケティングオートメーション)の導入
     ユニファイドコマースにおけるパーソナライズマーケティングでは、ビッグデータを処理する必要があります。AI(人工知能)などのテクノロジーを導入することで膨大な量のデータを解析し、お客様の購入傾向など複雑なパターンを見つけ出すことが可能となります。あわせてMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入することで、AI(人工知能)によりセグメントされた母数に対し、事前に決められたシナリオにそった情報発信を自動化するなど、より高度で精緻なマーケティングアプローチが可能になります。

 ユニファイドコマースに取り組むにあたって、パーソナライズマーケティングの考え方は特に重要なポイントとなります。特にユニファイドコマースにおけるパーソナライズマーケティングでは、データを活用することで実現する顧客体験の向上が求められます。

ユニファイドコマースを成功させるためにパーソナライズマーケティングを重視する理由

 ユニファイドコマースの成功を目指すにあたって、パーソナライズマーケティングは不可欠な取り組みです。ユニファイドコマースにおいてパーソナライズマーケティングを重視する理由を挙げていきます。

  • 顧客エンゲージメントの向上
     パーソナライズマーケティングは、お客様一人ひとりに合わせた情報や提案を提供します。メールや広告を不特定多数に一斉に送るのではなく、お客様ひとりひとりの好みやニーズに沿った内容のアプローチを適切なタイミングでおこなうことで、お客様に商品やサービスにより深い関心を持たせることが可能となります。また、パーソナライズされたアプローチは、お客様との強い結びつきを生み出すのにも役立ちます。買い物体験において、お客様が売り手側から大切にされていると感じると、その企業やブランドに対する信頼感や愛着がわきます。これにより、お客様と企業とのエンゲージメントの向上が期待できます。
  • 購入率の向上
     パーソナライズマーケティングは、顧客の行動や嗜好に基づいて特定の製品やサービスを提案できるため、購入率の向上が期待できます。ターゲットに適した情報を提供することで、購買意欲を刺激しやすくなります。
  • 効果的なターゲティング
     パーソナライズマーケティングは、データ活用のアプローチを取るため、より効果的なターゲティングが可能です。顧客のデモグラフィック情報や購買履歴などを分析し、それに基づいて特定のセグメントに対して最適なメッセージやプロモーションを提供することができます。
  • キャンペーンの効果予測
     パーソナライズマーケティングでは多くのデータが生成されます。これにより、お客様の行動や反応を詳細に分析し、キャンペーンの効果を測定できます。得られたデータを活用して戦略を最適化することで、将来のマーケティング活動の成功確率を高めることができます。

 企業がユニファイドコマースを目指すにあたって、パーソナライズマーケティングはお客様一人ひとりに最適なアプローチを図ることで、顧客体験の向上に寄与します。つまり、ユニファイドコマースにとってパーソナライズマーケティングは必要不可欠な要素であり、重視する必要があります。

パーソナライズマーケティングの事例

 ユニファイドコマースを成功させるためのパーソナライズマーケティングの重要性ついて説明してきました。続いて、パーソナライズマーケティングには、具体的にどのような取り組みがあるのかを紹介していきます。データ活用によるパーソナライズされたアプローチや最先端テクノロジーの導入による計測データをマーケティング施策に活用している例と、診断コンテンツ等を活用することでお客様一人ひとりに最適な商品提案を行っている例を挙げていきます。

ZOZOTOWN

 ZOZOTOWNは、約9000ブランドのアイテムを取り扱う日本最大級のファッション通販サイトです。ZOZOTOWNでは。パーソナライズマーケティングの施策のひとつとして「あなただけのタイムセール」を実施しています。

「あなただけのタイムセール」は、お客様が「お気に入り」として保存している商品やアイテムページを開いてチェックしたことがある商品がタイムセールになるというパーソナライズされたキャンペーンです。お気に入りに登録した商品や購入履歴のあるブランドなど、お客様一人ひとりの好みに合わせた内容のタイムセールなので、楽しみにしているユーザーも多いと言われています。

 その他にも、ZOZOTOWNは最先端のテクノロジーをパーソナライズマーケティングに取り入れることにも積極的です。オンラインショッピングをより楽しく、より便利にするためのテクノロジーとして、3D計測用ボディースーツ「ZOZOSUIT」(2022年6月終了)や、足の3D計測用マット「ZOZOMAT」、フェイスカラー計測ツール「ZOZOGLASS」などの計測ツール導入し、たびたび注目を集めています。ZOZOはこれらの計測ツールを導入することで、お客様が提供した計測情報を元に、最適なサイズや色味の商品をレコメンドすることで、顧客体験を向上させています。
 2021年にはスマートフォンを使い精度の高い手指の3Dサイズ計測が自宅で簡単にできる「ZOZOMAT for Hands(ゾゾマットフォーハンズ)」をブルガリ ジャパン株式会社へ提供しています。「ZOZOMAT for Hands」を利用することで、これまで個人で計測することが難しかった手指のサイズを、自宅にいながら簡単に、かつ高精度に計測することが可能となり、テクノロジーの力によるパーソナライズと顧客体験の向上に貢献しています。

ブルガリがZOZOMAT for Handsを導入

FUJIMI

 パーソナライズマーケティングを強化し、企業が自社のオンラインショッピングサイトなどで、消費者に直接商品を販売するD2C(Direct-to-Consumer)ブランドもあります。診断コンテンツなどを取り入れて、お客様一人ひとりに最適な商品の提案をすることで、顧客体験の向上を図っています。

 例えば、FUJIMIサプリメントは「成分」「品質」「パーソナライズ」「デザイン」にこだわり抜いたパーソナライズサプリメントです。累計400万人以上のパーソナライズ分析結果※1 を元に、一人ひとりの状態・価値観・ライフスタイルに寄り添い、体の内側から美肌づくりをサポートしています。丁寧に選び抜いた成分のみで作られたFUJIMIオリジナルの11粒から、機能性粒2粒とパーソナライズ分析の結果を元にお客様一人ひとりの「今の調子」に合わせた3粒を選んで届けています。
※1. 2019年2月16日から2022年12月31日の期間にパーソナライズ分析「FUJIMI MIRROR」を実施した累計ユーザー数

400万人以上のパーソナライズ分析を元に「FUJIMI パーソナライズサプリメント」を機能性表示食品にリニューアル

YOUR MEAL

 YOUR MEALは、株式会社YOUR MEAL(ユアミール)が運営する、一人ひとりの目的や好みに合わせた食事を届けるカスタムミールブランドです。食事診断により、「ダイエット」などの目的や体組成、日々の生活や嗜好性から必要な栄養素を分析し、150種類以上のメニューによる約11億パターンの中から診断結果に基づいた食事を冷凍でユーザーの自宅まで配送します。ユーザーは、自宅で温めるだけで自分に最適な食事を摂ることができます。さらに、管理栄養士によるサポート体制も提供しており、サービスを使い続けることで、より一人ひとりの健康に寄り添った最適な食事を実現していくサービスです。近年では、ヴィーガン対応のメニューなど、プラントベースのメニューの販売もおこなっています。

パーソナライズフードD2Cの「YOUR MEAL」が大豆ミートなどを使用した新商品6メニューを6月30日(木)より販売開始! 食事診断であなたに最適なプラントベースフードをお届けします。

Spotify

世界的なオーディオストリーミングサービスSpotifyでも、独自のパーソナライズマーケティングに取り組んでいます。Spotifyはお客様の好みや聴取行動データを活用することでパーソナライズされた音楽体験を提供しています。

 2023年6月には、新しいリスニング機能「スマートシャッフル」を国内のSpotifyプレミアムユーザーに提供しました。この機能では、お客様が作成したプレイリストと共にAIが適切な楽曲をレコメンドし、それを元のプレイリストの曲と組み合わせてスマートシャッフルをおこないます。日々の音楽鑑賞を通じて、自然な形で新しいお気に入りの曲やアーティストに出会いを提供しています。

Spotify、ユーザーが作成したプレイリストに合ったレコメンド曲をミックスし、シャッフル再生してくれる新たなリスニング機能「スマートシャッフル」を国内でも提供開始

まとめ

 消費者のライフスタイルの変化や技術の進歩により、企業はテレビCMなどのマスメディアに頼った宣伝広告・マーケティングを主軸にしているだけでは、市場で生き残ることが難しくなってきています。マーケティング戦略を見直す中で、注目が集まっているのが、データ活用によりお客様一人ひとりに最適な商品提案をおこなうことで、顧客体験の向上を目指すマーケティング手法です。
 W2株式会社は、ECプラットフォーム「W2 Unified」「W2 Repeat」を展開しており、国内市場でユニファイドコマースをリードしている会社のひとつです。次世代の新しいスタイルのECに取り組みたい、課題を洗い出しをしたいなどのご相談がありましたら、ぜひ弊社へお声がけください。
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ライター:ユニファイドコマースメディア編集部
 

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「ユニファイドコマースメディア」は、OMOやオムニチャネルの進化系であるユニファイドコマースに関する情報を発信するWEBメディアです。 ユニファイドコマース(Unified Commerce)とは、オンライン・オフラインという概念にこだわらず、ECサイトや実店舗で取得したデータ(顧客情報・行動履歴など)を統合し活用する、顧客一人ひとりに価値ある購買体験を提供するマーケティング手法を指します。

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