ユニファイドコマースの普及が消費者に与える影響とは

 マーケティングのトレンドは常に変化しており、様々なアプローチが話題になっています。その中でも注目を集めているのがユニファイドコマースです。ユニファイドコマースは、OMOやオムニチャネルの進化系と言われており、オンラインコマース(ECサイト・スマートフォンアプリなど)とオフラインコマース(実店舗やポップアップショップ)の情報連携することにより、それぞれチャネルから集めた顧客情報や購買・行動データを活用することで、お客様一人ひとりに最適な買い物体験を提供するマーケティング手法です。
 2020年から世界的に蔓延した新型コロナウイルス感染拡大の影響で、非対面でのサービスやオンラインショッピングの需要が増加し、EC化率が一段と加速しました。これに伴い、各企業のオンラインコマース(ECサイト・スマートフォンアプリなど)とオフラインコマース(実店舗やポップアップショップ)の情報連携が急務となったことが、ユニファイドコマースの需要が高まった要因と考えられています。この記事では、今後さらに普及の勢いが増すユニファイドコマースが消費生活に与える影響について紹介していきます。

データ活用によるパーソナライズされた買い物体験の享受

 まず、ユニファイドコマースの普及が消費者に与える影響として、データ活用によるパーソナライズされた商品提案の享受が挙げられます。
 パーソナライズとは、お客様一人ひとりに最適な商品提案やサービスの提供を行うことを指します。ユニファイドコマースでは、複数の販売チャネルやシステムから多くのデータを集めて分析することで、よりきめ細やかなマーケティングアプローチが可能となります。これにより、消費者ひとりひとりの好みやライフスタイルに合った買い物体験が実現します。ユニファイドコマースにおけるパーソナライズには、下記の内容が挙げられます。

  • パーソナライズされた買い物情報の享受

  ユニファイドコマースでは、ユーザーの顧客情報や購買・行動履歴のデータを分析し、一人ひとりに適した商品やサービスをおすすめします。例えば、ECサイトでのおすすめ商品の表示やスマートフォンアプリへのプッシュ通知などがあげられます。
ユーザーは、生活必需品などの前回購入した商品を、消費しきる前にお知らせを受け取ることができます。

  • パーソナライズされたクーポンや割引などの特典の享受

 ユニファイドコマースを導入している企業は、会員情報のデータベース上の購買履歴や行動に基づいて、ユーザーのニーズにあった特典や割引を提供します。これにより、ユーザーは、不特定多数への機械的なアプローチではなく、自分がまるでVIP待遇のような特別な存在として扱われていると感じることができます。

  • パーソナライズされた広告表示・配信の享受

  ユニファイドコマースは、オンライン広告や電子メール・SNSなどのデジタルチャネルを使用して、より精度の高いターゲティングされた広告を配信します。すでにインターネット広告でも、閲覧履歴や年齢・性別・エリアなどを絞ったセグメントをおこなうことが可能ですが、ユニファイドコマースにおける広告配信では、年齢・性別・エリアはもちろん、ユーザーの購入履歴や行動履歴に基づいて、より緻密な広告アプローチが可能となります。

これにより、消費者は全く興味のない商品の広告が表示される」といったストレスなく、興味のある商品やサービスに関する情報を受け取ることができます。

  • 診断コンテンツやオンラインカウンセリングの利用

 ユニファイドコマースを導入している企業は、ユーザーの好みやニーズを把握するためのコンテンツ作りをおこないます。たとえば、ECサイトやスマートフォンアプリ上に、診断コンテンツやオンラインカウンセリング機能を設置するなどして、ユーザー一人ひとりに最適な商品提案をおこないます。近年では、簡単な質問に答えるだけで自身にぴったりなアイテムを見つけられる「パーソナルカラー診断」や「骨格タイプ診断」などが流行しました。 テクノロジーの力で消費者を楽しませながら、最適な商品選択を導くコンテンツ開発も、ユニファイドコマースの取り組みのひとつです。

 例えば、化粧品会社の株式会社コーセーでは、スマートフォンのブラウザ上で顔写真1枚を読み込むだけで、パーソナルカラータイプと顔立ちタイプを瞬時に判定するサービス「パソカラ」を提供しています。アイテムの中から似合うカラー、個性美を引き立てるメイクや、なりたい印象に近づけるメイクアドバイスをユーザーに提案しています。

累計体験者数330万人*突破!AIパーソナルカラー判定サービス「パソカラ」がアップデート!新機能「顔立ちタイプ診断」を期間限定追加

データ連携によるスムーズで便利な買い物体験の享受

 ユニファイドコマースでは、消費者がオンライン・オフライン問わず、自身の好みの方法で買い物を楽しめます。ユニファイドコマースをマーケティング戦略に導入している企業では、顧客情報や購買履歴、ポイント情報が一元管理されています。これにより、企業はユーザーの購入履歴や行動履歴を分析し、おすすめの商品情報やセール情報を提供することができます。また、ユーザーはECサイトで商品を購入しても実店舗で購入しても、購入ポイントを貯めたり、利用することが可能となります。
ユニファイドコマースが普及することで、消費者は実店舗やECサイトなどどのチャネルから商品を購入しても、一貫したサービスや特典を受けることができるようになります。この施策は、すでにOMO戦略のひとつとして導入をし始めている企業もあり、消費者の生活に浸透しつつあります。

 例えば、スポーツ用品小売の株式会社ヒマラヤは、スマートフォンアプリ「ヒマラヤアプリ」を2023年4月に提供開始しました。「ヒマラヤアプリ」は、ヒマラヤが全国に約100店舗展開する「ヒマラヤスポーツ」「ヒマラヤゴルフ」「ヒマラヤスポーツ&ゴルフ」の公式アプリです。
「ヒマラヤアプリ」を利用すると、店頭とECの両方でお買い物を便利に楽しむことができます。デジタル会員証やクーポンでスムーズにお買い物ができるだけでなく、店頭商品のバーコードをスキャンして、来店中店舗やECで在庫確認や注文をしたり、ECで注文したものを店頭で受け取りが可能となりました。ヒマラヤポイントは、店頭・ECいずれの利用でもたまり、年間の購買金額に応じた会員ステージにより付与率が上がるなど、アプリ会員ならではの特典を提供しています。

スポーツ用品小売ヒマラヤのOMO起点となる「ヒマラヤアプリ」を開発支援

 このように、買い物が格段と便利になります。オンラインコマース(ECサイト・スマートフォンアプリなど)とオフラインコマース(実店舗やポップアップショップ)の情報が連携されることで、消費者は一貫した便利な買い物体験を享受できるようになります。

商品受取方法の選択肢が増えることによる買い物の利便性の向上

 ユニファイドコマースでは、オンラインとオフラインの商品在庫情報が一元管理されます。商品の在庫情報が一元管理されることで、消費者はECサイトで購入した商品を実店舗で受け取ったり、反対に店舗在庫をECサイトから購入することができるようになります。
例えば、自宅を留守にしがちな場合でも、オンラインショッピングで注文した商品を近隣の受取用ロッカーやコンビニエンストアで商品を受け取れる、オンラインショッピングで注文した商品を、店舗で試着してサイズが合うか確認してから購入するなど、商品の受取方法の選択肢が増え、買い物より便利になることが期待できます。

店舗受取サービスはBOPIS(Buy Online, Pick Up In Store)とも呼ばれ、日本でも浸透しつつあるサービスです。アパレル業界を中心に導入する企業が増えており、購入商品の受取だけでなく、試着予約サービスに取り組む企業も増えてきています。

“ネットで取り寄せ、お店で試着・購入”OMOサービス「クリック&トライ」リニューアル

オンラインショッピングの不安を解消

 オンラインショッピングでは、実際に商品を手に取って確認することができません。ユニファイドコマースはシステム連携やデータ活用による買い物体験の向上の他に、消費者のオンラインショッピングに対する不安を解消できるといった側面も持ちます。企業は自社のユニファイドコマース戦略に、オンライン接客やAR(拡張現実)・VR(仮想現実)による試着・試用・試し置き等のサービスを取り入れることで、オンラインショッピングにおける商品購入の不安点を解消することができます。テクノロジーを用いることで、写真画像やテキストだけでない商品のリアルな情報を提供することができます。消費者に与える影響としては、下記の通りです。

  • AR(拡張現実)/VR(仮想現実)による試着・試用・試し置きの利用
     AR(拡張現実)やVR(仮想現実)はユニファイドコマース戦略と相性が良いテクノロジーです。オンラインショッピングでは、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)は有効です。AR(拡張現実)・VR(仮想現実)の活用例として、服の仮想試着やコスメの試用、家具などの試し置きなどが挙げられます。これらのテクノロジーを、ECサイトやスマートフォンアプリに搭載することでオ、ンラインショッピングの利便性が格段と向上します。

 例えば、AIおよびAR技術を活用したソリューションサービスを提供し、アパレルや美容業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)を奨励するパーフェクト株式会社は、1枚の画像から”揺れる”装着イメージが自動生成される「バーチャルジュエリー試着機能」を発表しています。

「4℃」の公式サイト(https://www.fdcp.co.jp/4c-jewelry/special/VTO/?bid=4c-jewelry)では、イヤリング・ピアスを含め12点(随時追加予定)がバーチャル試着に対応しており、スマートフォンおよびタブレット端末上で購入前に装着イメージが確認できます。またアップロードした写真へのAR試着にも対応しており、パートナーの顔写真で装着イメージを確認しながら、ギフトを選ぶことも可能になっております。

1枚の画像から”揺れる”装着イメージが自動生成されるパーフェクト社の新技術「バーチャルジュエリー試着機能」を「4℃」が日本国内初導入!

 このように、ユニファイドコマースは、オンラインショッピングの欠点を補うことで、買い物体験を向上させる役割も果たします。

  • オンライン接客の利用

 消費者は、ユニファイドコマースによるオンライン接客を利用することで、実店舗の有人接客と同等の商品説明やカウンセリングなどを受けることができます。AI(人工知能)や有人のチャットサービスやビデオ通話の他、ライブコマースや店舗スタッフによるコーディネート投稿なども、ユニファイドコマースにおけるオンライン接客に含まれます。オンラインショッピングでは「商品の実物を確認できない」という消費者心理が生じます。ユニファイドコマースでは、リアルな商品情報を充実させたり、インタラクティブに消費者とコミュニケーションをとることで、商品購入の不安を解消させます。

 近年では、OpenAI社の「ChatGPT」が登場し、AI(人工知能)が注目されています。ユニファイドコマースにおいて、AIの活用は様々なポテンシャルを持っています。特に接客などこれまでは有人でおこなっていたサービスもAIの技術が活用されはじめています。

「羽田エアポートガーデン(羽田空港第3ターミナル直結の大型商業施設)」では、インバウンド観光客に対応した、AIによる多言語接客が導入されたことで話題となりました。羽田エアポートガーデンは、全室合計1,717室の2つのホテル、展望天然温泉、約80店舗が軒を連ねるショッピングエリアに、大型バスターミナルなどを有する商業施設です。特に国際便の飛行場が直結しているため、多くの外国人観光客が訪れます。

 日中は施設内のインフォメーションカウンターにて外国語を話せるスタッフが対応をしているものの、実際に外国人観光客が到着するのは早朝や夜間であり、案内が不足している状況でした。この問題を解決するため、羽田エアポートガーデンは、多言語対応とコミュニケーション能力に優れたAI接客を導入するに至りました。

「羽田エアポートガーデン(羽田空港第3ターミナル直結の大型商業施設)」に「AIさくらさん」が導入!多言語での案内でインバウンド対応を実現します

少子高齢化による日本の労働人口の減少といった問題の対策としても、AIによるオンライン接客の導入は大きなポテンシャルを秘めています。

新しいテクノロジーの普及による買い物の利便性の向上

 企業がユニファイドコマースの実現を目指し、消費者ニーズにあわせた新しいシステム開発に挑むことで、テクノロジーの発展が期待できます。新しいテクノロジーの採用は、企業にとっては顧客満足度の向上と競争力の強化につながることはもちろん、消費者にとってもより便利で効率的な買い物体験を受けることができます。

 例えば、店舗内のデジタルサイネージもユニファイドコマースの普及により、さらに進化していくことが期待できます。

 株式会社デイトナ・インターナショナルは、オフラインとオンラインを融合させたOMO(Online Merges with Offline)の取り組みとしてオリジナルインタラクティブミラー「+PLUS MIRROR(プラスミラー)」の開発と提供を行っています。店内に設置した大型のモニター「+PLUS MIRROR(プラスミラー)」は、AIカメラレコメンドやフェイス・パーソナルカラー診断、ファッション診断などの没入感のあるコンテンツを搭載しています。

【アパレル企業の枠を超えた試み】FREAK’S STOREを運営する株式会社デイトナ・インターナショナルが店舗DXソリューション「+PLUS Series」の外部提供をスタート!

 このように、ユニファイドコマースの普及することで、次々と新しいテクノロジーが採用され、消費者の生活がより便利になっていくことが期待されます。ユニファイドコマースの普及には、様々な可能性が秘められています。

まとめ

 この記事では、ユニファイドコマースが消費者に与える影響について、まとめてみました。ユニファイドコマースが普及することで、消費者の暮らしは格段と便利になることが予想されます。
新しいテクノロジーが次々と採用されることで、買い物がどんどん便利になり、経済社会の活性化も期待できます。
 W2株式会社は、ECプラットフォーム「W2 Unified」「W2 Repeat」を展開しており、国内市場でユニファイドコマースをリードしている会社のひとつです。次世代の新しいスタイルのECに取り組みたい、課題を洗い出しをしたいなどのご相談がありましたら、ぜひ弊社へお声がけください。

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ライター:ユニファイドコマースメディア編集部

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「ユニファイドコマースメディア」は、OMOやオムニチャネルの進化系であるユニファイドコマースに関する情報を発信するWEBメディアです。 ユニファイドコマース(Unified Commerce)とは、オンライン・オフラインという概念にこだわらず、ECサイトや実店舗で取得したデータ(顧客情報・行動履歴など)を統合し活用する、顧客一人ひとりに価値ある購買体験を提供するマーケティング手法を指します。

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