日本の小売業界で注目されているユニファイドコマースとは

ユニファイドコマースは、オンラインコマース(ECサイト・スマートフォンアプリなど)とオフラインコマース(実店舗やポップアップショップ)の情報連携することにより、それぞれチャネルから集めた顧客情報や購買・行動データを活用することで、お客様一人ひとりに最適な買い物体験を提供するマーケティング手法です。近年、オムニチャネルやOMOのその先を行くマーケティングのトレンドとして注目されています。特に小売業界では、ユニファイドコマースを導入することで、市場や経営に大きな変革をもたらすと、今後の発展が期待されています。
この記事では、日本の小売業界にユニファイドコマースが必要な理由とユニファイドコマースの導入により解決できることについて、ご紹介していきます。

日本の小売業の歴史とユニファイドコマースの登場

日本の小売業界は、社会的背景や消費者ニーズを受けて、販売戦略や経営方針を進化させてきました。特に1990年代以降はテクノロジーの発展により、オフラインのみだった販売チャネルをオンラインに広げるオムニチャネルやOMOといわれるマーケティング戦略に企業が取り組み始めたことで、消費者の生活は便利になり大きく変わりました。
2020年代の現在もテクノロジーは日々進化しており、マーケティングのトレンドは、オムニチャネルやOMOを超えたユニファイドコマースの時代へ向かっています。

まずはじめに、日本の小売業界の歴史について、振り返ってみましょう。

1900年代~個人商店から百貨店へ

日本の小売業界は、これまでに様々な変遷を経て発展してきました。第二次世界大戦前の主に個人の商店が中心となっていた中、1904年に三越呉服店が三越百貨店(現・三越伊勢丹)に名称を変更して「デパートメントストア宣言」をしたことが、百貨店の始まりとなり、現代の小売業界の礎になったと言われています。戦後の 1950年代には、百貨店が都市部に多く出店を拡大し、高級品から一般商品までを取り扱ったことで、百貨店の黄金期が訪れました。1970年代前半までの高度成長期で、 日本経済は年平均で約10%もの成長を続けました。

日本初の百貨店「三越」が、おかげさまで 2023年 創業350周年を迎えます

1970年代~スーパーマーケットやアウトレットモールの出店拡大

その後、1970年代から1980年代にかけて、紀伊国屋、ヨーカ堂、ダイエーなどのスーパーマーケットが台頭し、低価格で幅広い商品を提供する形態が普及しました。
1980年代にはショッピングモールが登場します。一つの敷地内に多くの小売事業者が集まり、映画館などの娯楽施設や飲食店も併設され、ショッピングの新しいスタイルが生まれました。ショッピングモールが地域にオープンすることで、地域経済の活性化をはじめ、地域コミュニティの活性化や交通インフラの整備、雇用の増加など、街づくりにとっても様々なメリットが生じます。1981年に開業したららぽーと船橋ショッピングセンター(現:ららぽーとTOKYO-BAY)は、千葉県船橋市に位置する大型ショッピングモールであり、現在も多くの近隣エリアの利用者から親しまれています。
1990年代からは、高級ブランド品がリーズナブルに購入できるアウトレットモールが人気を博しました。軽井沢・プリンスショッピングプラザは、北陸新幹線の軽井沢駅への延伸を見据えて1995年に開業しています。1997年7月には、敷地内のエリアにアウトレット業態を導入し、日本でのアウトレットブームの先駆けとなりました。軽井沢プリンスホテルに隣接し、夏は避暑地として、冬はスキーやスノーボードを楽しめるウィンタースポーツスポットとしても人気の観光地です。軽井沢・プリンスショッピングプラザにも毎年観光スポットとして多くの旅行客が訪れています。

三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY
美しい自然に包まれた日本有数の高原リゾート「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」

1990年代~Windows95の登場とオンラインショッピングモールの登場

1990年代後半から2000年代初頭にかけて、Windows95の販売開始を皮切りに、インターネットの普及が急速に進み、2000年前後のADSL回線の普及とともに多くの家庭で利用されるようになりました。これにより、小売業界にも大きな変革が訪れます。
Yahoo! や Amazonの日本法人が立ち上がり、インターネット上のショッピングモールが広がったことから、オンライン上での商取引(EC)の時代へと移り変わります。
2009年には国内のインターネット広告費が新聞広告費を抜き、2019年にはインターネット広告が初めてテレビの広告費を抜くなど、広告業界においても急速にデジタル化が進みました。

2009年日本の広告費
2019年日本の広告費

2010年代~スマートフォンの普及とオンラインショッピングの拡大

2010年代初頭からスマートフォンの普及が急速に進み、ユーザーがいつでもどこでもインターネットにアクセスできるようになりました。スマートフォンをはじめとするモバイル端末を通じた通じたオンラインショッピングが一般的となり、小売業界では、自社ECサイトやスマートフォンアプリを導入し、モバイルファーストなEC戦略を取り入れることがスタンダードになりはじめます。同時に、2000年代はソーシャルメディア(SNS)が広がり、LINE、Facebook、Twitter(現・X)、Instagramなどのプラットフォームが広く利用され、ユーザー間で情報や体験を共有する場として機能するようになりました。

平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

これらのテクノロジーの進化は、日本の小売業界において顧客体験のデジタル化を促進し、オンラインショッピングやデジタルマーケティングの重要性を高めました。スマートフォンとSNSを利用したインフルエンサーマーケティングやパーソナライズされたデジタル広告が一般的となりはじめました。2010年代はテクノロジーの進化とともに、日本の小売業界も大きく変革を遂げた時代と言えるでしょう。小売業界において、従来の実店舗重視型だった販売戦略に、ECが加わったことから複数チャネルで商品を販売を販売することがスタンダードになりました。

インターネット「消費者取引連絡会口コミサイト・インフルエンサーマーケティングの動向整理」

2020年代~感染症の世界的な蔓延とEC化率の急成長、オムニチャネル・OMOの先を行くユニファイドコマース時代のはじまり

2020年から世界的に蔓延した感染症拡大の影響で、非対面でのサービスやオンラインショッピングの需要が増加し、EC化率が一段と加速しました。BtoC-EC市場規模の経年推移を感染症拡大以前の2019年と終息後の2022年とで比較すると、2019年が19.3兆円に対し2022年は22.7兆円と2年で17.6%増加しています。

電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

感染症の感染拡大に伴う外出自粛を背景に、消費者にとってECの利用が一層拡大し、オンラインショッピングがより身近になりました。小売業界では、顧客により良い買い物体験の提供を目指すために、オンラインショッピングサイトの機能充実はもちろん、オンラインとオフラインをつなぐ、オムニチャネル・OMO化を推進するようになりました。
今、小売業界では、オムニチャネル・OMOの次に注目されているのがユニファイドコマースです。小売業において、今後特に重要になるのが、オフラインとオンラインの情報を連携し、データ活用によりお客様に便利な買い物体験を提供することはもちろん、実店舗とECサイトから取得した顧客情報や一元管理し、顧客情報や購買・行動データをマーケティングアプローチに活用することで実現する、より良い顧客体験です。お客様一人ひとりに最適な商品提案を行うことで、ブランドロイヤルティを高め、ブランドのファンを育てることが求められています。
さらに、2024年1月現在、小売業界をはじめ日本の経済社会を取り巻く状況は非常にシビアです。感染症の終息後も、少子高齢化による労働人口不足、さらに世界情勢の影響による物価や運送費の高騰などの様々な課題を抱えています。大きな転換期を迎える日本経済社会の中、小売業界にもさらなる進化が求められ、その解決策のひとつがユニファイドコマースです。

ユニファイドコマースに取り組むことで日本の小売業が解決できること

アメリカでは、小売業者の事業管理・最適化を実現するテクノロジーソリューションを指す「小売業テック(retail technology)」という言葉も注目されており、スーパーマーケット大手のターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)が、大きな資本を投下し、新しいテクノロジ―の導入や開発に力を注いています。  最新のテクノロジーによる数々のソリューションの導入は、顧客体験の向上による市場優位化が目的とされており、大手企業を中心に、オムニチャネルやOMOの実現を牽引しています。
日本の小売業界も同様に、オムニチャネルやOMOの追及はもちろん、いち早くユニファイドコマースに取り組むことで、自社を競合企業と差別化し、市場優位性を得られることが期待できます。
ユニファイドコマースに取り組むことで日本の小売業界が解決できることについて、挙げていきます。

日本貿易振興機構(ジェトロ)米国小売業における小売業テック市場の動向調査

  • 顧客体験の向上
    日本の小売業界において、顧客体験の向上を図ることは、市場優位を築くことに重要な取り組みとされています。ユニファイドコマースは、オンラインとオフラインの境界を取り払い、お客様に便利な買い物体験を提供することで、顧客体験の向上を図ります。ユニファイドコマースに取り組むことで叶うメリットは複数ありますが、一番のメリットとして顧客体験の向上が挙げられます。
  • 在庫管理の最適化
    日本の小売業界において、在庫管理の最適化は取り組むべき課題です。ユニファイドコマースでは、オンラインとオフラインの在庫情報を連携させ、リアルタイム共有することで在庫情報の最適化を図ります。これによりお客様がオンラインショップで購入した商品を最寄りの実店舗で受け取れる、試着してから商品購入ができるなど、より便利な買い物体験の提供が実現します。また、ユニファイドコマースを目指す上で取り組む、オンラインとオフラインの在庫情報のリアルタイム連携は、在庫管理業務の効率化はもちろん、在庫切れや売れ残りを防ぐことにも繋がります。過剰在庫を抱えるという観点では、日本の小売業界において、商品廃棄の削減は大きな課題であり、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)の取り組みとしても、今後大きく改善していく必要あるでしょう。
  • より高度なデータ活用
    日本の小売業界において、高度なデータ活用によるマーケティング施策は大きな課題のひとつです。ユニファイドコマースは、オンライン・オフラインの双方から、お客様の購買履歴や行動データを収集します。「オンラインのみ」「オフラインのみ」では検証しきれなかった購買傾向などを洗い出すことにより、高度なデータ活用が叶います。オンライン・オフラインのどちらかに限定せず、マーケティング戦略の全体像を把握することで、よりリアルな顧客の購買パターンやターゲットの分析が期待できます。
  • オンライン(ECサイト・スマートフォンアプリなど)とオフライン(ECサイト・スマートフォンアプリなど)の相互送客
    ユニファイドコマースは、オンラインとオフラインの相互送客効果にも寄与します。例えば、お客様オンラインショッピングで商品購入の際に、実店舗で使える割引クーポンを提供したり、オンラインショッピングサイトの商品詳細ページに、実店舗の商品在庫を表示させたり、オンラインとオフラインの相互送客が可能です。これからの日本の小売業界では、ECと実店舗の集客を分断せず、相互集客をおこなうことでさらなるシナジーが期待できます。
  • ブランドロイヤルティの向上
    日本の小売業界において、自社のファンを作るためのブランドロイヤルティの向上は重要な課題です。オンラインとオフラインの隔たりのない便利な買い物体験の提供やお客様一人ひとりに最適な提案をおこなうユニファイドコマースの取り組みは、ブランドロイヤルティの向上に寄与します。ユニファイドコマースでは、便利な買い物環境を提供することはもちろん、AR(拡張現実)VR(仮想現実)等の最新のテクノロジーを取り入れた商品の試着・試用、試し置きなどのエンターテイメント性の高い取り組みも効果的です。
  • 人手不足と労働力の確保
    日本社会では、少子高齢化による就業人口の減少や労働力の不足が問題視されています。小売業界でも従業員の確保が課題となっています。ユニファイドコマースへ取り組むことは、業務の自動化および効率化にも寄与します。例えば、AI(人工知能)によるオンライン接客やSNS上でのライブコマース、診断コンテンツや有人のビデオ通話によるオンラインカウンセリングなどもユニファイドコマースの取り組みに含まれ、業務の省人化や働き方改革の一環としての側面を持ちます。

まとめ

日本の小売業界で注目されているユニファイドコマースについてご紹介して参りました。ユニファイドコマースは、オムニチャネルやOMOの先を行くトレンドとして、今後注目しておくべきマーケティング手法です。特徴を理解し、ぜひ導入を検討してみてください。
W2株式会社は、ECプラットフォーム「W2 Unified」「W2 Repeat」を展開しており、国内市場でユニファイドコマースをリードしている会社のひとつです。 次世代の新しいスタイルのECに取り組みたい、課題を洗い出しをしたいなどのご相談がありましたら、ぜひ弊社へお声がけください。
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ライター:ユニファイドコマースメディア編集部

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「ユニファイドコマースメディア」は、OMOやオムニチャネルの進化系であるユニファイドコマースに関する情報を発信するWEBメディアです。 ユニファイドコマース(Unified Commerce)とは、オンライン・オフラインという概念にこだわらず、ECサイトや実店舗で取得したデータ(顧客情報・行動履歴など)を統合し活用する、顧客一人ひとりに価値ある購買体験を提供するマーケティング手法を指します。

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