ユニファイドコマースの定義

ユニファイドコマースとは、「Unified Commerce(ユニファイドコマース)」とは、オンライン・オフラインという概念にこだわらず、ECサイトや実店舗で取得したデータ(顧客情報・行動履歴など)を統合し活用する、お客様一人ひとりに価値ある購買体験を提供するマーケティング手法のことです。

近年、ユニファイドコマースは新たなビジネス戦略の一つとして注目され、日本国内でも導入を試みる企業が少しずつ増えてきています。一方、技術やコスト、企業の組織体制などの問題から、実行を見送っている企業も多い事が実情です。とはいえ、競合他社に遅れをとることは、経営的なリスクにもつながります。ユニファイドコマースは、日本ではまだ導入事例が少ない状況ですが、海外ではすでにユニファイドコマースがマーケティングのトレンドとなっています。
この記事では、ユニファイドコマースにおける海外企業の事例をご紹介していきます。

Walmart(スーパーマーケットチェーン)

Walmartは、アメリカのスーパーマーケットチェーン店です。世界最大の小売り業とも言われており、ユニファイドコマース戦略を成功させた企業の一つです。https://www.walmart.com/

  1. 多様な商品受け取り方法
    Walmartでは、購入した商品の受取方法に複数の選択肢があります。宅配サービスの他、店舗受け取りサービス「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」をはじめ、店舗の駐車場で車に乗ったまま商品を受け取れる「Curbside pickup」を採用しています。お客様は事前に商品の購入と決済を済ませておくことで、レジでの待ち時間などの買い物時間を短縮することができます。
  2. サプライヤーとのリアルタイムな在庫共有
    Walmartの施策で特徴的なのは、徹底した在庫管理です。サプライチェーンおよびビジネスインテリジェンスプラットフォーム「Retail Link」は、自社とサプライヤーとのリアルタイムにデータ共有するために開発されました。「Retail Link」を活用することで、Walmartはサプライヤーに対してリアルタイムの販売データ、在庫情報、需要予測などの重要な情報を提供します。
    サプライヤー側も「Retail Link」を活用することで、商品の販売状況のモニタリングができる仕組みで、需要の変動や在庫の調整を効果的に管理することができます。「Retail Link」は在庫を管理するだけでなく、Walmartとサプライチェーンのパートナーシップを強化し、より効率的な供給チェーン管理と売上最大化に貢献しています。
  3. テクノロジーを駆使した倉庫管理
    WalmartはRFID(Radio Frequency Identification)技術を活用することで、徹底した在庫管理をおこなっています。RFIDタグを製品に取り付けることで、無線通信を通じて製品の識別と追跡をおこないます。これにより、倉庫や店舗内の在庫の正確な位置や数量を把握し、在庫不足や過剰在庫の問題を迅速に特定することができます。このように、Walmartは最新のテクノロジーを駆使することで、商品の在庫管理を徹底し、ユニファイドコマースを実現しています。
  4. AIを活用したオンライン注文
    Walmartは、2022年に「Text to Shop」という専用アプリを実用化しました。顧客がAIとの会話で「牛乳」「小麦粉」など欲しい商品を入力して送信すると、AIがそのテキストを解析し候補商品を提案するという仕組みです。顧客は欲しい商品を選択し、購入することができます。

Sephora(コスメ専門店)

 Sephoraはフランス発のコスメ専門店です。Sephoraはハイブランドからプチプラまで幅広いコスメ商品を取り扱っており、店頭でのメイク指導や新商品のトライアルなど、顧客体験を重視した独自の販売スタイルで成功を収めてきました。顧客データを分析したパーソナライズ性の強いマーケティング戦略が特徴的です。https://www.sephora.com/

  1. データ分析による商品提案
    Sephoraはユニファイドコマース戦略においても、顧客体験の向上を重視した取り組みを実施しています。Sephoraのモバイルアプリは、顧客体験を向上させるための様々な機能が搭載されており、その独自性を発揮しています。例えば、Sephoraのアプリは、顧客の来店を検知すると店舗用モードに切り替わり、店舗の在庫情報と連携した上で、顧客一人ひとりの好みにあったアイテムを提案するコンパニオンモードが搭載されています。
    また、SephoraのECサイトでは、顧客の商品購入時に、データ分析からその顧客が好みそうなサンプル商品の同梱をおこなっています。さらにサンプルが使い終わるタイミングを見計らってフルサイズの商品をメールで案内するなど、かなり細かい顧客行動分析をおこなっています。CDP(カスタマーデータプラットフォーム)を活用したパーソナライズを追及したマーケティング施策が、Sephoraの強みです。
  2. AR(拡張現実)の導入
    Sephoraのモバイルアプリには、顧客のプロフィールや好みに基づいて、カスタマイズされたおすすめ商品を表示する機能や購入前にバーチャルでメイクアップを試せる「Virtual Artist」の機能を搭載しています。「Virtual Artist」は、AR(拡張現実)のテクノロジーの活用により、スマートフォンのカメラを使って顔を認識し、リップスティック、アイシャドウ、チークなどのコスメを試すことができる機能です。
  3. AI(人工知能)の導入
    Sephoraは、実店舗でAI(人工知能)を活用した独自の計測システム「Sephora Color IQ」を採用しています。記録した顧客の肌の色味を顧客IDと紐づけることで、オンラインショップやモバイルアプリでも顧客の肌の色に合ったアイテムを提案しています。化粧品業界において「Sephora Color IQ」は、顧客がコスメを選ぶ際の迷いを減らし、カスタマイズされた購買体験を提供する革新的なツールです。
  4. 会員コミュニティのデータ活用
    Sephoraは会員コミュニティ「Beauty Insider」を運営しています。「Beauty Insider」はコスメフリークが集まるオンラインコミュニティです。商品のレビューをチェックできるだけでなく、会員同士の交流の場となっていることが「Beauty Insider」の最大の特徴です。Sephoraはこのコミュニティー内で、コスメや美容に関するトピックスをグループ化し、会員ごとが交流できる場を提供しています。これは単なる交流の場でなく、Sephoraは「商品の感想」や「肌悩み」「メイクの悩み」などのデータを取得し、自社のマーケティング活動に役立てています。

Chipotle Mexican Grill(メキシコ料理チェーン)

Chipotle Mexican Grill(以下、Chipotle)は、欧米を中心に展開するメキシコ料理チェーン店です。Chipotleは、特にテクノロジーの採用と顧客データの活用に力を入れています。https://www.chipotle.com/

  1. モバイルオーダーシステムの導入
    まず特徴的なのは独自のオーダーシステムです。Chipotleは、モバイルアプリやオンライン注文システムを採用することで、お客様が簡単に食事を注文・支払い・受け取りをできるようにしています。Chipotleは、タコスやブリトーなどのカジュアルなメキシコ料理を提供しており、トルティーヤの種類や肉、ソース、トッピングの種類をお好みで選択できる販売スタイルです。顧客は事前にメニューやカスタマイズオプションをオーダーし支払いまで済ませておくことで、お客様は店舗での待ち時間を短縮し、スムーズな買い物体験ができます。
  2. 多様な商品受け取り方法
    購入した商品の受取方法に複数の選択肢があります。店舗受け取りサービス「In Restaurant Pickup]」をはじめ、店舗の駐車場で車に乗ったまま商品を受け取れる「Curbside pickup」、デリバリーサービスを導入しています。顧客は自分の都合にあった方法で、便利に料理を受け取り食事を楽しむことができます。
  3. パーソナライズされた情報発信
    Chipotleは顧客データや注文履歴などのデータを元に、お客様一人ひとりに適した特別なプロモーションを提供しています。例えば、あるお客様が特定のメニューを頻繁に注文している場合は、そのメニューアイテムに関連するクーポンを配信したり、誕生日や記念日などの特別な日には、特別クーポンを配信するなどの施策を実施しています。
  4. リワードプログラムの導入
    Chipotleのリワードプログラムは、顧客がモバイルアプリやオンラインを通じてポイントを獲得し、特典や報酬を受け取る仕組みです。顧客は実店舗での注文やオンライン注文など、どのチャネルから買い物をしてもポイントを貯めることができます。

Best Buy(家電量販店)

Best Buyは、アメリカに本社を置く世界最大級の家電量販店です。https://www.bestbuy.com/

  1. 多様な商品受け取り方法
    Best Buyは、顧客が注文した商品の当日配送や「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」「Curbside pickup(店舗の駐車場での商品受け取り)」など、柔軟な配送オプションを用意しています。実店舗の商品の在庫情報がオンラインショップの商品ページに掲載されているので、顧客は欲しい商品の在庫があるお店を見つけて、取りに行くことができます。Best Buyのこの取り組みは「今すぐ欲しい」という顧客ニーズに明確に対応していることで、競合との差別化に成功しました。
  2. デジタル優先型小型店舗のオープン
    Best Buyは、2022年7月にノースカロライナ州にデジタル優先の小型店新フォーマットをオープンしたことでも注目されました。この店舗は、店頭での品揃えを絞り込む一方、デジタルでの接客を強化し、オンラインショップでの購入につなげる新しい形の店舗です。接客においても商品購入のための説明やアドバイスはオンラインでおこなうことを前提とし、スタッフの人数を絞っていることが特徴です。
  3. 実店舗のMFC化(Micro-Fulfillment Center)
    MFC(Micro-Fulfillment Center)は、ネットスーパーなど、店舗から商品を出荷する業務が増えたことで、普及が進み、注目が集まっている物流システムです。BestBuyでは、ミネソタ州の本社近隣の一部の店舗のMFC化を試みました。従来の売り場面積を約半分までに減らし、残りのスペースをMFCに改装し、ECからの注文向けの対応をおこなっています。MFCではECの注文品のピックアップと出荷を行い、店頭には陳列されていない商品もストックしています。
  4. オンライン接客の導入
    Best Buyのオンライン接客サービス「Shop with an Expert」は、顧客が店舗に在籍する専門スタッフから、商品の選び方や使用方法のアドバイスを受けられる仕組みです。

このように、すでに海外ではユニファイドコマース戦略を成功させている企業が多数あります。日本の企業の多くは、ユニファイドコマースの前段階であるOMOやオムニチャネル戦略を導入し始めた段階です。まずは海外事例を参考に、ユニファイドコマースの情報収集から初めてみてはいかがでしょうか。

まとめ

ユニファイドコマースは、企業と顧客の双方に多くのメリットをもたらします。日本ではまだなじみのないユニファイドコマースですが、いち早く導入をすることで、市場において有利な立場を築くことができるでしょう。W2株式会社は、ECプラットフォーム「W2 Unified」「W2 Repeat」を展開しており、国内市場でユニファイドコマースをリードしている会社のひとつです。次世代の新しいスタイルのECに取り組みたい、課題を洗い出しをしたいなどのご相談がありましたら、ぜひ弊社へお声がけください。

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ライター:ユニファイドコマースメディア編集部

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「ユニファイドコマースメディア」は、OMOやオムニチャネルの進化系であるユニファイドコマースに関する情報を発信するWEBメディアです。 ユニファイドコマース(Unified Commerce)とは、オンライン・オフラインという概念にこだわらず、ECサイトや実店舗で取得したデータ(顧客情報・行動履歴など)を統合し活用する、顧客一人ひとりに価値ある購買体験を提供するマーケティング手法を指します。

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