ライブコマースは、InstagramやYouTube、TikTokなどソーシャルメディアの普及により広がった販売手法です。「いつでもどこでも手軽にスマートフォンで買い物を楽しみたい」という消費者ニーズへも対応しており、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症による外出自粛の影響で、さらに注目が集まりました。

 コマースのトレンドは、オンラインとオフラインをシームレスにつなぐことで、より良い買い物体験を提供するユニファイドコマースへと向かっています。感染拡大が落ち着き、自由に外出してショッピングを楽しむ機会が戻ってきた今でも、ライブコマースは新しい販売形態として注目されており、ユニファイドコマースを目指す上でも重要な取り組みのひとつです。

 この記事では、ユニファイドコマースにおけるライブコマースの特徴について詳しく紹介します。

ライブコマースの導入のメリット

 ライブコマースは、オンラインでECサイトとリアルタイムの動画配信を組み合わせた販売手法です。ユニファイドコマース戦略に取り組むにあたって、ライブコマースの導入はどのようなメリットがあるのか挙げていきます。

  • 顧客体験の向上
     ライブコマースは、実際に商品を手に取ることができないオンラインショッピングのデメリットを、商品の実演やデモンストレーションで補います。例えば、ライブコマースで洋服を販売する場合は、配信者が洋服を試着して見せることで、洋服のサイズ感や色味をよりリアルに視聴者へ伝えることができます。ライブコマ―スはオンラインのデメリットを補うことで、顧客体験の向上を目指す位置づけであると考えられます。
  • 顧客とのリアルタイムでのインタラクティブなコミュニケーション
     ライブコマースでは、リアルタイムの動画配信です。ライブ中のチャットやコメントを介して、視聴者とコミュニケーションをとることができます。ライブコマースはテレビショッピングのような一方向のコミュニケーションではなく、視聴者は商品やサービスに関する疑問をその場で解決することができます。また、インフルエンサーや名物販売員・バイヤーなどを起用し、出演者のカリスマ性やキャラクターを立てた、対面販売に近いスタイルのコミュニケーションもライブコマースの特徴です。その商品の専門家やジャンルに詳しい消費者目線で飾らないリアルな言葉で商品の魅力を伝えることで、より信頼性のある情報を視聴者へ提供することができます。
  • 競合優位性の獲得と販促施策としての活用
     ライブコマースは比較的まだ新しい取り組みです。まだ多くの企業が採用していないため、早期に導入することで競合との競争優位性の獲得が期待できます。SNSとの相性も良く拡散効果も期待できるので、新商品や限定商品の販促施策としても有効です。
  • 新規顧客の獲得と売上のアップ
     新しいチャネルを増やすことは、新規顧客の獲得と売上アップが期待できます。2023年のNTTコム リサーチの調査では、日本国内でのライブコマースの認知はまだまだ低いものの、視聴経験者の商品購入経験率が半数を超えており、若年層の購入経験率が高いなどライブコマース利用者の特徴をまとめています。ライブコマースは市場拡大に向けた黎明期で、今後の市場拡大が期待されるポテンシャルのある市場とされています。

調査の結果、「ライブコマース」についての認知は31.9%。視聴経験があるのは3.9%だった。現時点でのライブコマース視聴経験者は多いとは言えないが、視聴経験者の商品購入経験率は54.8%と半数を超える。特に20代・30代の若年層ほど商品購入経験率が高い。また視聴経験はないが視聴意向がある人も約2割出現、今後の利用者拡大が期待される。

参考:NTTコムサーチ「ライブコマース」に関する調査結果

ライブコマース導入のデメリット

 次に、ライブコマースを導入するデメリットを挙げていきます。商品との相性や社内のリソース、予算などと照らし合わせて考えていきましょう。

  • 集客力のある配信者の選定が必要
     ライブコマースの成功には、集客力のあるインフルエンサーやパートナーシップが必要です。自社のブランドイメージとの相性はもちろん、商品の魅力をしっかり伝えてくれるインフルエンサーを選びましょう。適切なインフルエンサーが確保できない場合、視聴者数が不足し、目標売上の達成が難しくなってしまいます。人気のインフルエンサーは報酬が高額だったり、競合他社との契約の制限がある場合もあります。自社の従業員を配信者として起用する場合も、商品の魅力を伝えるための出演者選定や適切なトレーニングを行う必要があります。
  • 運用体制の構築が必要
     ライブコマースを実施するには、適切な運用体制が必要です。動画を配信することだけでなく、集客設計から配信時のシナリオ作成、生配信時のお客様からの質問への対応対策、バックオフィスでは出荷指示や発送対応など、運用体制を整えておく必要があります。瞬間的に注文が殺到するので、事前準備を徹底しましょう。
  • 導入コストがかかる
     ライブコマースを成功させるためには、もちろんコストもかかります。視聴者を集めるための広告コスト、インフルエンサーとの契約、インターネット環境の整備、ノウハウのあるスタッフの採用などが想定されます。ライブコマース専用のプラットフォームを使用する場合は、導入コストも発生します。

ライブコマースの成功事例①アリババ(阿里巴巴集団)

 中国では、毎年11月11日「ダブルイレブン(W11 / 独身の日)」に、大規模なショッピングのイベントが行われます。2022年のダブルイレブンでは、”アリババが運営する「天猫(Tmall)」で過去最大となる29万ブランドが参加したことで話題となりました。

“アリババが運営する「天猫(Tmall)」には、世界90以上の国と地域から29万以上のブランドが参加した。11月10日午後8時に始まったイベントでは、開始後4時間で130以上のブランドが販売額1億元を突破した。スポーツ・アウトドア、ペット用品、コレクターズトイ、宝飾品が特に好調だった。また、輸入品を扱う「天猫国際」では、1,009個の国外ブランドが販売された。”

”同じくアリババが運営する「淘宝(タオバオ)」のライブコマースを視聴した消費者は、ダブルイレブンの事前イベント期間も含めて3億人以上に達した。ダブルイレブン期間中にタオバオで実施されたライブコマースのうち、62チャンネルが1億元以上を販売し、632チャンネルが1,000万元以上を販売した。”

 JETRO(日本貿易振興機構)によると、アリババは、ブルイレブンの期間中(2022年10月31日~11月11日)の販売額は、新型コロナウイルス流行などで経済状況が厳しい中でも、セール中の売上は2021年と同程度〔2021年の販売額は5,403億元(約10兆8,060億円、1元=約20円)〕の水準だったとされています。

参考:ダブルイレブン、タオバオのライブコマースを3億人以上が視聴

 また、中国では、KOL(Key Opinion Leader)”という専門性を持つインフルエンサーを起用したライブコマースが特徴です。中国のライブコマース市場規模は急成長しており、将来的にはオンライン小売のシェアをさらに拡大していく事が期待されています。

ライブコマースの成功事例②LIVEBUY

 これまで、日本でもメルカリの「メルカリチャンネル」やYahoo!の「ショッピングLIVE」など多くのライブコマースサービスが生まれたものの、サービスは飛躍せずに閉鎖されてしまった背景があります。このため「日本ではライブコマースは流行らない」といわれてきました。しかし、LINEは2021年に新たなライブコマースツール「LIVEBUY」を発表しています。「LIVEBUY」は、LINEユーザーがライブ配信を見ながら気に入った商品を1タップで購入できるライブコマースサービスです。LINE Payまたはクレジットカードと連携することでスムーズに決済可能となり、ライブ視聴中でもお気に入りの商品を購入することができます。

 韓国のスキンケアブランド「MEDIHEAL(メディヒール)」は、人気美容系TikTokerの「2人目のエガチャン」を起用したライブコマース配信をLIVE BUYで行いました。このライブコマースは、配信開始からわずか1時間で商品が完売し、話題となりました。

 中国と比較すると日本国内のライブコマース市場は大きいとは言えませんが、このように日本でも少しずつライブコマースが広がりつつあります。

参考:LIVEBUY

参考:【1時間で即完売】LINEのライブコマース「LIVEBUY」で、2人目のエガチャン×MEDIHEAL(メディヒール)のコラボイベント実施

まとめ

 従来のオンラインショッピングでは伝えきれなかった商品の魅力を、動画配信を通じて視聴者へ伝えることで、視聴者の購買意欲を喚起させるライブコマース。メリットとデメリットを見極めながら、自社の商品にあったプロモーションを計画してみてはいかがでしょうか。

 W2株式会社は、ECプラットフォーム「W2 Unified」「W2 Repeat」を展開しており、国内市場でユニファイドコマースをリードしている会社のひとつです。今回ご紹介したECと相性の良いライブコマースのオプションも備えています。次世代の新しいスタイルのECに取り組みたい、課題を洗い出しをしたいなどのご相談がありましたら、ぜひ弊社へお声がけください。

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ライター:ユニファイドコマースメディア編集部

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「ユニファイドコマースメディア」は、OMOやオムニチャネルの進化系であるユニファイドコマースに関する情報を発信するWEBメディアです。 ユニファイドコマース(Unified Commerce)とは、オンライン・オフラインという概念にこだわらず、ECサイトや実店舗で取得したデータ(顧客情報・行動履歴など)を統合し活用する、顧客一人ひとりに価値ある購買体験を提供するマーケティング手法を指します。

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