CRMとユニファイドコマース
CRMとユニファイドコマースは、密接に関連しており併用することで相乗効果が期待できます。
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係を強化していくことで自社や商品・サービスのファンを育成することで、利益を最大化させる戦略的なアプローチを意味します。顧客データの収集、分析、活用し、顧客満足度やロイヤリティを高め、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指す手法です。デジタルマーケティングの時代では、すでに多くの企業がなんらかの形で取り組んでいるかと思われます。
ユニファイドコマース(Unified Commerce)は、オムニチャネルの次のマーケティング手法ともいわれており、実店舗とECサイトの境目をなくすことはもちろん、商品や在庫の管理、注文処理、支払い処理、配送などの配送の自動化までが含まれます。例えば、アパレルなどの小売業の企業は、いち早くユニファイドコマースに着目しており、ユニファイドコマースの施策の一部であるオンライン接客やライブコマース、ECサイトで購入した商品を店舗やコンビニエンスストアで受け取るサービスなどの導入をはじめています。また、顧客がECサイトから近隣の店舗の商品在庫を確認できるなど、オンラインショップと店頭の在庫情報の一元化に取り組んでいる企業も増えてきており、コマースの時流はユニファイドコマースへ向かっていると考えられます。特に「ユニクロ」では、実店舗とECサイトのシームレス化や顧客データの活用だけでなく、2018年に大規模な物流改革を実施し、顧客のオーダーから出荷までのリードタイムの大幅短縮やRFID(非接触型電子タグ)を活用した100%自動検品、その他の作業工程の省人化にも成功し、コストカットと業務効率化に成功しています。
すでにCRM施策を実践している企業は、ユニファイドコマースをマーケティング戦略に取り入れることによって、さらなる事業拡大が期待できるでしょう。顧客データを集めやすいオンラインショップをはじめ、店舗の顧客リストやSNSからの情報を集めて統合することで、顧客一人ひとりにあわせたよりきめ細やかなアプローチの実施や、顧客のブランドロイヤリティの向上が期待できるので、ぜひ導入をご検討ください。この記事ではユニファイドコマースとCRMのメリットや導入時の課題や注意点を紹介していきます。
CRM×ユニファイドコマースの活用のメリット
ユニファイドコマースをマーケティング戦略に取り入れ、実店舗やECサイトから収集した収集した顧客データを活用することにより、CRM施策との相乗効果が期待できます。CRM施策でより良い成果を出すためにはユニファイドコマースが必要であると同時に、ユニファイドコマースの成果を最大化するためにもCRM施策がなくてはならない存在です。CRM×ユニファイドコマースの主なメリットとしては下記があります。
- 顧客へのきめ細やか最適な提案
それぞれのチャネルから収集した顧客データを分析・活用することにより、従来のCRM施策よりもきめ細やかなアプローチが実施できます。例えば、メルマガやDMなどで顧客へのアプローチを行う際、顧客一人ひとりの好みにやニーズにあわせた最適な提案をおこなうことできます。
- 顧客ロイヤリティの向上
ECサイトや実店舗といったチャネルに関係なく、いつでもどこでも商品を購入できる利便性から、顧客ロイヤリティの向上が期待できます。さらに統合されたデータを活用することにより、顧客一人ひとりの好みやニーズあった最適な提案をするできるので、顧客側もブランドや商品に対するロイヤリティーがより高まると考えられます。
- ROIの改善
これまで販売チャネルや広告媒体毎におこなっていたマーケティング施策の効果測定も、より効率的に収集・分析ができるでしょう。精度の高い効果測定により、次におこなう施策のブラッシュアップとROIの改善が期待できます。
- 業務効率化
販売チャネルごとにバラバラに行っていた作業をまとめて管理できるようになることで、業務効率化も期待できます。在庫や売上情報などもまとめて管理することにより、在庫切れなどのトラブルも防止にもつながるでしょう
- 売上の最大化
顧客ロイヤリティの向上によるLTVの拡大やROIの改善により、売上の拡大が期待できます。
ユニファイドコマース 導入の課題
ユニファイドコマースを導入するにあたって、既存のCRM施策に使用している顧客データとユニファイドコマースによる顧客データの統合が課題としてあげられます。導入を検討の際は、まずは既存のシステムやツールの仕様を確認し、データを統合するにあたり課題となる点を洗い出す必要があります。想定される課題と対応策を参考までに上げてみました。
顧客データの整合性と品質の問題
自社で管理している顧客データの整合性と品質に問題がある場合は、各システムでのデータの品質チェックを行うことが必要です。必要に応じては手動で修正し、整合性を確保しなければいけない場合もあります。管理しているデータのフォーマットがチャネル毎に違う、古いデータが混ざっているなどの場合は下記のような対策が必要です。
- データのクレンジングやマッピングを自動化するソフトウェアの導入
- データ入力時のバリデーションを強化するためのフィールドレベルのルール設定
- 人工知能(AI)や機械学習(ML)を活用して、データ品質の改善を自動化する
管理システムの複雑さの問題
顧客管理システムの複雑さに対処するためには、まずはシステムの構成を正確に理解し、必要なAPIやプロトコルなどの技術的な側面を把握することが重要です。また、複雑なシステムはトラブルを誘発するので、できるだけ単純さを重視することが望ましいです。さらに、システムのテストを適切に実施し、問題が発生した場合にはすぐに修正することが必要です。
- クラウドサービスの導入によるシステムの簡素化
- API管理ソリューションの導入によるシステム統合の簡素化
- 従来のモノリシックシステムからマイクロサービスアーキテクチャへの移行
互換性の問題
異なるシステム間の互換性の問題を解決するためには、まずは両方のシステムが使用する技術やプロトコルを理解し、必要に応じて変換することが必要です。また、APIの設計や通信方式を統一することで、システム間の互換性を高めることができます。
- APIの設計を統一するためのAPI仕様書の策定
- ミドルウェアの導入によるシステム間の通信方式の統一化
- システムの互換性を確認するためのインテグレーションテストの導入
セキュリティの問題
顧客データのセキュリティ保護は最も重要です。セキュリティの問題を解決するためには、まずは両方のシステムのセキュリティ機能を理解することが必要です。次に、暗号化やアクセス制御などのセキュリティ機能を設定することで、顧客データを保護することができます。また、データ漏洩のリスクを低減するために、セキュリティ監視や脅威検知機能を設定することが望ましいです。近年ではECビジネスの成長とともにサイバーセキュリティ犯罪も増えています。トラブルに巻き込まれないような対策が必須です。
- セキュリティ管理ソリューションの導入によるセキュリティ機能の統合
- 2要素認証やシングルサインオン(SSO)の導入によるアクセス制御の強化
- セキュリティ脅威に対する対策を定期的に行うための監視ツールの導入
まとめ
マーケティング戦略にユニファイドコマースに取り入れることは、企業により多くのメリットをもたらします。またCRMとユニファイドコマースは、お互いになくてはならない存在であると言えるでしょう。データ統合するにあたっての課題もありますが、消費者の購買スタイルの変化にあわせたマーケティング戦略をおこなう上で、避けては通れない取り組みとも言えます。ユニファイドコマースを取り入れた戦略に乗り出すことが激化する市場競争の中で、生き残るカギとも言えるでしょう。
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ライター:ユニファイドコマースメディア編集部