BtoB ECとは?市場規模やEC構築方法、成功している企業の特徴を解説
BtoB ECの市場規模は、徐々に拡大しています。BtoB事業で物販を営んでいる企業はデジタル化があまり進んでいないことがありますが、ECサイトを開設することで業務面や販売面で多くのメリットがあります。
しかし、BtoB ECサイトは多種多様なため、開設する際はBtoB ECの特徴や種類などを踏まえて選定することが重要です。
本記事では、BtoB ECサイト構築の基礎知識から、拡大する市場規模、そして成功事例から学べる5つの構築方法をご紹介します。
受発注業務の効率化を目指している方や、BtoB ECに興味関心がありどんなものがあるのか知りたい方、BtoB ECシステムの新規導入やリプレイスを検討している方はぜひ参考にしてください。
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BtoB ECとは?
BtoB(Business-to-Business)EC(Electronic Commerce)とは、企業間取引をオンライン上で行う電子商取引のことを指します。これは企業が他の企業に対して製品やサービスを販売する場合に用いられるシステムで、BtoC(Business-to-Consumer)EC、つまり企業が消費者に向けて製品やサービスを販売する電子商取引とは異なります。
BtoB ECの特徴としては、取引量が大きく、契約内容が複雑であり、価格交渉や納期調整など、対人でのやり取りが必要なケースが多いことが挙げられます。
よって、BtoC ECと比較して、取引に関わるプロセスが多岐にわたり、質の高いサービスが求められることが特徴です。
また、EDI(Electronic Data Interchange)という技術がBtoB ECにおいて重要な役割を果たしています。EDIは、企業間で標準化されたフォーマットを用いて文書やデータを電子的に交換するシステムです。これにより、発注書や請求書などの書類を紙でやり取りすることなく、迅速かつ正確に情報を交換することができるシステムです。
そのEDIのサービスがあることで、電話やFAXといったアナログの対応をせずに済むため、BtoB ECにおける取引の効率化やコスト削減が実現しています。
注意点としては、EDIはNTTが提供するISDN回線を使用するのが一般的ですが、ISDN回線は2024年からサービスを順次、終了する予定のためISDNに変わる回線を確保する必要があります。
これらのように、BtoB ECは企業間取引をデジタル化し、効率化する手段として注目されており、今後もその重要性が高まっていくと考えられます。
BtoB ECの市場規模
現在、日本のみならず世界的に見てもBtoB ECの市場規模は顕著に成長をし続けています。
経済産業省の市場調査によると、2023年の日本のBtoB EC市場規模は、420.2兆円(前年比12.8%増)となっています。
特に「電気・情報関連機器」や「繊維・日用品・科学」といった製造業が順当に成長しており、EC化率も約70%を超えています。
また、BtoB EC市場は、今後も拡大が見込まれています。
その理由は、以下のとおりです。
企業の業務効率化のニーズ
企業の業務効率化のニーズが高まっており、BtoB ECによる受発注や在庫管理の効率化が期待されています。
新規顧客開拓のニーズ
新たな顧客を開拓するために、BtoB ECを活用する企業が増えています。
海外市場の拡大
海外市場への進出を検討する企業が増えており、BtoB ECを活用したグローバル展開が期待されています。
さらに、2023年10月から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されたことで、電子インボイスの作成、送信、受信、保存などの対応が必要とされます。
そのため、課税対象の事業者はBtoB ECを活用する予測が立てられるので今後も益々市場規模は成長するでしょう。
その他、様々なEC業界の市場規模を詳しく知りたい方は以下の記事で詳細に解説しています。この機会に是非ご一読ください。
【2023年最新版】EC市場規模は拡大中?市場課題と今後の動向について解説
BtoB ECの市場規模が成長している4つの背景
BtoB ECの市場規模が成長している背景には、以下の要因が挙げられます。
- BCPの推進
- 働き方改革
- ITインフラの整備
- デバイスの普及
詳しく解説します。
BCPの推進
近年、パンデミックや紛争、自然災害が発生したことによる資材調達難や原材料高騰、ライフラインの停止などが頻発しています。これらの影響を受ける企業は少なくなく、ビジネスのグローバル化や気候変動が背景にあります。
このような不確実性の高い現代において、BCPの策定が推進されています。
BCPとは、災害や事故、パンデミックなどの緊急事態においても、企業活動を継続し、早期に正常な業務運営を回復させるための計画です。
BCPが推進されていることで、何か問題が発生して商談や取引が困難な状況下になった場合でも、BtoB ECが安定した供給網の維持や迅速な情報共有を可能にし、事業の継続性を確保するための有効な手段となっています。
その結果、BtoB EC市場の成長に大きく貢献しているのです。
働き方改革
BtoB EC市場の成長において、働き方改革は重要な役割を果たしています。
働き方改革とは、2019年4月1日から順次施行されている政策で、従業員の労働環境を改善し労働生産性を向上させるための取り組みです。
この働き方改革がBtoB EC市場の成長に影響を与えています。
具体的にはテレワークの普及です。テレワークが普及したことでオフィス以外の場所でも業務を行うことが増えています。
これにより、オンラインでの商取引の需要が高まり、BtoB ECの利用が増加しています。
また、働き方改革が推進されていることで業務負担を軽減できるような仕組みが求められるようになりました。BtoB ECは受注プロセスを自動化し、紙ベースの書類を削減することができるので需要が高まり市場規模の成長に繋がっています。
ITインフラの整備
ITインフラの整備や普及は業務効率化を目指す企業にとって注目されており、結果的にBtoB EC市場規模の成長に繋がっています。
BtoC・CtoC EC では、ITインフラが整備されているにもかかわらず、BtoBビジネスにおいては業務工数がかかるアナログなやり取りが主流であったため、業務工数を削減できてデジタルを用いているBtoC EC市場の需要が高まったことで市場規模が成長する要因となっています。加えて、デジタルトランスフォーメーションの推進などがBtoB ECの市場拡大を後押ししています。
これらの要因により、BtoB EC市場はより効率的でスムーズな取引が可能になり、市場規模の成長に寄与しています。
デバイスの普及
スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどのデバイスが普及したことで、ビジネスパーソンが場所を選ばずにインターネットにアクセスしてWebサイトを操作できるようになりました。
これにより外出先や移動中でもBtoB ECサイトを利用できることで取引の機会が増加して市場規模の拡大に繋がっています。
また、モバイルアプリを活用した決済や受注システムや、リアルタイムで在庫情報を共有するサービスなど、新たなビジネスモデルが登場しています。
さらに、デバイスの普及により中小企業や地方の企業もBtoB EC市場に参入しやすくなり、市場全体が活性化し、成長が加速しています。技術の進化とともにデバイスの役割は今後さらに大きくなることが予想されます。
BtoB ECのメリット
BtoB ECのメリットは、大きく分けて以下の3つに分けられます。
- コスト削減
店舗を持たずに商品やサービスを販売できるため、店舗運営にかかるコストを削減できます。また、受発注や在庫管理などの業務をシステム化することで、人件費や事務作業のコストも削減できます。
- 業務効率化
インターネット上で取引を行うため、注文や発注、納品などの業務を効率化できます。また、リアルタイムで在庫や売上状況を把握できるため、経営判断のスピードアップにもつながります。
- 顧客開拓
インターネットを活用することで、全国の企業に商品やサービスをアピールすることができます。また、自社サイトを充実させることで、顧客とのエンゲージメントを高め、リピート率や取引単価の向上を図ることができます。
BtoB ECサイトの種類
BtoB ECサイトには様々な種類がありますが、代表的な2つのECサイトの種類について解説します。
クローズド型BtoB ECサイト
クローズド型BtoB ECサイトは、特定の企業や取引先のみがアクセスできる閉じられたECサイトです。ECサイトのアクセスには会員登録や認証が必要で、一般の消費者や非会員企業は利用できません。
このECサイトの特徴は、取引先によって異なるサービスや価格設定を提供できることです。
また、セキュリティが高く情報漏洩のリスクを抑えられるため機密性の高い取引に適しています。
総じて、クローズド型BtoB ECサイトは、特定の業界やベンダー、サプライチェーン内での取引を円滑に行いたい企業に適しています。
スモール型BtoB ECサイト
スモール型BtoB ECサイトは、中小企業やスタートアップ向けの小規模なECサイトです。低コストで簡単に導入できることが特徴で、小規模な取引先との商取引や営業を効率化するために利用されます。
このタイプのECサイトは、基本的な受発注機能や在庫管理機能、出荷作業の簡易化といった必要最小限の機能に絞ることで運用コストを抑えることができます。
また利用者が少ないため、企業のニーズに合わせた柔軟な独自のカスタマイズ対応が可能です。しかし、事業が拡大していくうえでECシステムが大量のアクセス数に耐えきれずにECサイトが落ちてしまう可能性があります。そのため、長期的な事業戦略などを事前に考慮したうえでスモール型BtoB ECサイトを選定しましょう。
総じて、スモール型BtoB ECサイトは、初期投資を抑えつつBtoB取引のデジタル化を進めたい中小企業に適しています。
BtoB ECサイトの主な構築方法4選
BtoB ECサイトの構築方法は主に5つの種類に分かれます。
それぞれコストや特徴などが異なる為、どのようなBtoB EC事業を展開するかどうかを熟考した上で構築方法を選定しましょう。
具体的には以下の5つの構築方法と、それぞれのメリット・デメリットの一覧を以下の表にまとめています。
構築方法 | メリット | デメリット | 費用目安 |
ASP型 | ・コストを比較的抑えやすい
・構築のハードルが低い |
カスタマイズ性が低い | 0円~10万円 |
パッケージ型 | ・サポートが充実している
・カスタマイズ性が高い |
・コストが比較的高い | 100万円~ |
オープンソース型 | ・コストを比較的抑えやすい
・カスタマイズ性が高い |
・高度な知識が必要になる
・セキュリティリスクが高い |
0円~数千万円 |
クラウド型 | ・カスタマイズ性が高い
・システムの陳腐化を防げる |
・コストがやや高い | 500万円~ |
フルスクラッチ型 | ・自由度が最も高い
・カスタマイズが無限大 |
・時間とコストが特にかかる | 数千万円~憶規模 |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ASP型
ASP型とは、ECサイトの構築や運営に必要な機能をクラウド上でレンタルするサービスです。
このサービスの特徴は、比較的短い期間でECサイトを立ち上げることができ、コストを抑えやすい点です。また、システムの保守やバージョンアップは提供元が行うためユーザーは常に最新のシステムを利用できます。
しかし、ASP型ECのデメリットとして、利用できる機能に制限があるためカスタマイズ性や拡張性が低いことが挙げられます。これは、外部システムとの連携や管理画面の拡張が難しいことを意味します。
一方、無料のASP型ECサービスもありますが、これらは初期費用や月額費用が無料ということもあり機能が制限されているケースが多いです。
有料のASP型ECサービスを利用すると、より充実した機能を利用できるため制限が少なくなります。
総じてスモール型BtoB ECサイトの構築を検討されている方には費用も抑えて導入できることからおすすめです。
その他、より詳しくASP型のECサイト構築方法のメリットやデメリットを知りたい方は以下の記事で解説しています。
ECサイトをASP型で構築するメリットと思わぬ落とし穴
パッケージ型
パッケージ型とは、ECサイト構築に必要な機能があらかじめパッケージ化されたシステムを購入し、それをベースに顧客のニーズに合わせてカスタマイズしてECサイトを構築する方法です。
この手法の特徴は、高いカスタマイズ性と在庫管理や基幹システムとの連携性に優れている点です。また、提供元からのサポートが充実しており、セキュリティ面でも信頼できるサービスが多いです。しかし、他の構築方法に比べて初期費用や月額費用が高くなる傾向があります。
一方で、自社のニーズに合わせてECサイトを構築できるため、大きな成果が期待できるのがメリットです。また、導入から運用までのサポート体制が整っており運営に安心感があります。基本的な必要機能は網羅されているため中規模から大規模のECサイト運営に適しています。
総じて、中長期的に安心して利用できるECサイトを構築できるため、業界や規模問わずBtoB EC事業者全員におすすめです。
その他、より詳しくパッケージ型のECサイト構築方法のメリットやデメリット、おすすめの選定ポイントを知りたい方は以下の記事で解説しています。
【最新版】パッケージ型のECサイト構築とは?メリットや選定ポイントを徹底解説
オープンソース型
オープンソース型とは、だれでも閲覧できるソースコードをサーバーにインストールしてECサイトを構築する手法です。特徴として、コストを大幅に抑えてサイトを構築できることとカスタマイズの自由度が高いことです。
しかし、高度なプログラミングスキルが必要でセキュリティリスクも伴います。オープンソースを使用すると商品の売上に応じた手数料のみで済み、システムの保守や更新も提供元が行うため最新の状態で利用できます。
一方で、カスタマイズの自由度が高いため技術力があれば自社のニーズに合わせたサイトを構築できます。しかし、サポートが限られているため障害が生じた場合は自力で対処や改修する必要があります。
また、システムが陳腐化しやすく大規模な障害やバグが発生した場合、責任は自社にあります。オープンソース型ECは技術力のある企業に適しており、低コストでカスタマイズ可能な点がメリットですがセキュリティ面での注意が必要です。
その他、より詳しくオープンソース型のECサイト構築方法のメリットやデメリット、他のECサイト構築方法の違いを知りたい方は以下の記事で解説しています。
ECサイトをオープンソースで構築するのは難しい理由と解決策
クラウド型
クラウド型とは、クラウド上のシステムを利用してECサイトを構築する手法であり、ASP型と似ていますが初期費用や導入期間に違いがあります。
クラウド型ECは、システムのアップデートが自動で行われるため最新の状態を維持でき、セキュリティも高い安全性が保たれます。また、カスタマイズ性や拡張性に優れており、機能の追加などは比較的低コストで行えます。
しかし保守費用やECカートシステムのランニングコストが高い傾向があるため、大規模なBtoB ECサイト構築を考えている事業者以外はパッケージ型などの費用を抑えて導入できる構築方法をおすすめします。
フルスクラッチ型
フルスクラッチ型とは、ゼロからオリジナルのECサイトを構築する方法であり自由に開発ができるので、自社の商材やコンセプト、ターゲットに合わせた最適なECサイトを追求できるのが最大の強みです。
カスタマイズ性が高く、サイト改善やカスタマイズに柔軟に対応できる一方で、サイト構築までに多くの時間とコストがかかります。
大企業が運用する大手ブランドのECサイトにはフルスクラッチ型がよく採用されており、社内の専門部署でシステムの定期的なメンテナンスや調整・拡張業務が行われています。
しかし、中小規模のビジネスを行う企業にとっては予算が合わない可能性もあり、採用する場合は、費用対効果を見込めるか慎重に検討することが重要です。
総じて、フルスクラッチ型は新規でのECサイト構築ではなく、既存のECサイトをリプレイスする方に対しておすすめです。
最近では、BtoB EC特化のパッケージ型のカスタマイズ性が向上しているので、予算が合わずフルスクラッチ型を選択できない場合はそちらも視野に入れてみるとよいでしょう。
その他、より詳しくフルスクラッチ型のECサイト構築方法のメリットやデメリットを知りたい方は以下のお役立ち記事で解説しています。
ECサイトをフルスクラッチで構築するメリット・デメリットまとめ
BtoB ECサイトの成功事例
モノタロウ
製造業や建設業向けの間接資材を販売するECサイトです。豊富な品ぞろえと低価格、24時間365日の受発注に対応していることが人気を集めています。
アスクル
オフィス用品や文房具、消耗品などを販売するECサイトです。全国の企業に配送サービスを提供しており、企業の業務効率化に貢献しています。
ニトムズ
日用品や文房具、医療製品などを販売するECサイトです。自社ブランドの強みを活かした商品展開が成功しています。
なお、下記の資料ではW2のサービスを利用されている13の企業様の導入企業事例を、その「秘訣」を実際の声と共に紹介しています。
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BtoB ECサイトの課題と対策
BtoB ECサイトの課題としては、以下のようなものが挙げられます。
コスト
BtoB ECサイトの構築・運営には、初期費用や月額費用、人件費など、コストがかかります。
専門知識
BtoB ECサイトの構築・運営には、Webサイトの構築やマーケティングなどの専門知識が必要です。
Webサイトの構築やマーケティングに関する知識を習得しましょう。また、外部業者に依頼する際にも、専門知識を持った業者を選びましょう。
セキュリティ
BtoB ECサイトでは、企業の機密情報を取り扱うため、セキュリティ対策が重要です。
SSL/TLSの導入や、アクセス制限の設定など、セキュリティ対策を強化しましょう。
受発注業務の複雑化
BtoB ECサイトでは、従来の受発注業務に加えて、請求書発行や入金管理などの業務も必要になります。
受発注業務の自動化や、請求書発行や入金管理などの業務を外部に委託するなど、受発注業務の効率化を図りましょう。
顧客のニーズが多様化
BtoB ECサイトの利用企業は、業種や規模、ニーズが多様化しています。
ターゲットユーザーを明確にし、ニーズに合わせたサイトづくりを心がけましょう。また、顧客の声を反映して、サイトを継続的に改善しましょう。