「ファッション AI」で検索すると服選びアプリの紹介ばかりが並び、アパレル企業がAIを何に使っているのかが見つからない。そんな経験はありませんか。
ファッションAIという言葉は、2つの意味で使われています。ひとつは、個人が服を選ぶときに使うアプリやチャットの機能。もうひとつは、アパレル企業や小売が、モデル画像の制作、サイズの不安の解消、トレンドや需要の予測に使うAIです。
このページが扱うのは後者、事業者側の事例です。企業の発表、公式ブログ、報道で確認できた15事例を、時期、AIが担う範囲、人の役割、数字の出どころの順にそろえて並べました。
ZOZOの「ChatGPT連携」や「ラボくん」、Googleの試着機能のように、個人が実際に触れる機能も含めています。成果を数字で示していた事例は、15件のうち3件でした。数字の読み方と、自社のECで始めるときの手順まで、事例に結びつけて確認していきます。
この記事でわかること
ファッションAIは、コーディネートの提案、試着、サイズの目安、モデル画像の生成、需要予測など、ファッションの場面でAIを使う技術やサービスの総称です。検索すると個人が使う服選びアプリが多く並びますが、このページではアパレル企業と小売がAIをどの業務にどう使っているかを事例で確認します。
ZOZOやGoogleのように、個人が触れる機能を企業が提供している例も含みます。
ZOZO、アダストリア、しまむら、三越伊勢丹、H&M、アルペンなど15の事例を、提案・接客、試着・サイズ、AIモデル・撮影、トレンド・需要予測の4領域に分けて確認しました。成果を数字で示していたのは3件で、比較の条件まで示した例はほとんどありません。数字の読み方は、事例のあとに整理しています。
解決したい課題を1つに絞り、AIに任せる範囲と人が担う範囲を決め、導入前の数字を測り始めるところからです。15事例の多くで、AIに任せる範囲が絞られていました。
モデル本人の同意と報酬、AI生成であることの表示、社内の利用ガイドラインの3点が論点になります。H&Mはモデルの同意と報酬、透かしによる表示を説明し、アダストリアは法務と連携してガイドラインを作ったうえで運用を始めています。
- 01|ファッションAIとは?個人向けと企業向けの違い
- 02|ファッションAIの活用事例15件の一覧
- 03|提案・接客のファッションAI事例(5件)
- 04|試着・サイズ提案のファッションAI事例(2件)
- 05|AIモデル・撮影のファッションAI事例(5件)
- 06|トレンド・需要予測のファッションAI事例(3件)
- 07|ファッションAIの事例にある数字の読み方
- 08|15事例に共通していた5つの設計
- 09|自社ECでファッションAIを始める手順
- 10|ファッションAIを使うときの注意点
- 11|ファッションAIの費用と補助金の見方
- 12|ECでファッションAIを活用するための基盤の選び方
- 13|ファッションAIに関するよくある質問
- 14|まとめ|ファッションAIは「範囲」「データ」「測り方」から決める
ファッションAIとは?個人向けと企業向けの違い
ファッションAIとは、服選びやコーディネートの提案、試着、サイズの目安、モデル画像の生成、トレンドや需要の予測など、ファッションに関わる場面でAIを使う技術やサービスの総称です。
使う人で分けると、次の2つに整理できます。
- 個人が使うもの:服の写真から着こなしを提案するアプリ、会話で服を選べるチャット、バーチャル試着など。ZOZOやGoogleのように、企業が個人向けに提供している機能が含まれます
- 企業が使うもの:AIモデルによる撮影の代わり、商品画像や動画の生成、サイト内検索とレコメンド、サイズの提案、トレンドの予測、需要予測と在庫の最適化など
この区別は目安にすぎず、境目は曖昧です。ZOZOの「ラボくん」は個人が使う機能ですが、裏側には企業が蓄積してきた投稿データがあります。個人向けの機能も、企業の事例として見ると、どのデータを根拠にしているかが見えてきます。
ファッションAIの4つの領域
15事例は、AIが関わる場面で4つの領域に分けると整理しやすくなります。
| 領域 | AIが担う役割 | 主な接点 | 本記事の事例 |
|---|---|---|---|
| 提案・接客 | 会話で好みを聞き、コーディネートや商品を提案する。商品の質問に答える | ChatGPT、LINE、ECサイトの商品ページ | ZOZO(3件)、アルペン、エアークローゼット |
| 試着・サイズ | 写真で着用イメージを見せる。手持ちの服と比べてサイズ感を伝える | 検索結果、ECサイトの商品ページ | Google、BEAMS |
| AIモデル・撮影 | モデルや着用画像、動画を生成して、撮影の手間を減らす | 広告、店頭の販促物、ECの商品ページ、SNS | しまむら、三越伊勢丹、アダストリア(2件)、H&M |
| トレンド・需要予測 | 画像からトレンドを読み取る。出荷量や在庫を予測する | 商品企画、物流、基幹システム | ニューロープ、TSIホールディングス、両備システムズ |
領域ごとに、必要なデータもつまずく場所も違います。提案・接客と試着・サイズは客の購入前の迷いに、AIモデル・撮影は制作のコストと速さに、トレンド・需要予測は欠品と売れ残りに関わります。
アダストリアのGoogle Cloudの事例は、画像生成に加えて、サイト内検索と店舗の声の分析も含みます。画像生成を中心に、AIモデル・撮影の領域に置きました。
ファッションはなぜAIで扱いにくいのか
ZOZOの澤田宏太郎社長は、2025年10月31日の決算説明会で、ファッションは家電のように仕様で選ぶ商品と違い、トレンド、コーディネート、サイズやフィットが複雑に絡み合うため、汎用のAIでは扱いにくい領域だと語っています(WWDJAPAN)。
客の側にも、言葉にしにくい事情があります。2024年のZOZOの調査では、着たいファッションの情報を言葉にできないと答えた人が約7割でした(ZOZOのリリース)。検索窓に入れる言葉が見つからない客に、会話や画像で近づく。後ほど見るZOZOの事例は、この点を出発点にしています。
ファッションAIの活用事例15件の一覧
15事例を、領域、時期、AIの役割、公表された成果の数字でそろえました。数字の欄は、発表資料や報道の表現をそのまま写しています。
| 事例 | 領域 | 時期 | AIの役割 | 公表された成果の数字 |
|---|---|---|---|---|
| ZOZO(ChatGPT連携) | 提案・接客 | 2026年3月 | 会話から、WEARのコーディネートとZOZOTOWNの商品情報を提案 | なし |
| ZOZO(ラボくん) | 提案・接客 | 2026年4月 | LINEの対話で好みを聞き、WEARの投稿から提案 | なし |
| ZOZO(アイテム着回しAI) | 提案・接客 | 2026年5月に報道 | 購入済みの服を使った着こなしを提案 | 利用者の翌月再訪問率が1.1倍(初期成果、比較条件は非公表) |
| アルペン | 提案・接客 | 2026年6月 | 商品ページから、メーカー提供の情報に基づく相談に答える | なし |
| エアークローゼット | 提案・接客 | 2025年10月 | 初回会員との対話で、コーディネートの方針をすり合わせる | なし(削減率などは非公表) |
| 試着・サイズ | 2025年10月(日本) | 全身写真と商品画像から、着用イメージを生成 | なし | |
| BEAMS | 試着・サイズ | 2021年6月 | 手持ちの服と比べて、サイズ感を確認 | なし |
| しまむら | AIモデル・撮影 | 2024年5〜6月 | AIモデル「瑠菜(るな)」を販促に起用 | なし |
| 三越伊勢丹・伊勢丹スタジオ | AIモデル・撮影 | 2025年8月 | AIモデルの着用画像と動画を生成 | なし |
| アダストリア(ELMIRA) | AIモデル・撮影 | 2026年10月 | ブランドの画像、商品画像、動画をAIで制作 | なし(平均価格は3,000円前後) |
| アダストリア(Google Cloud) | AIモデル・撮影 | 2024年12月 | 商品画像の生成、サイト内検索、店舗の声の分析 | 検索の遷移率+15%・CVR+20%、撮影コスト50%以上削減など |
| H&M | AIモデル・撮影 | 2025年3月 | 実在モデルのデジタルツインを生成 | なし |
| ニューロープ | トレンド・需要予測 | 2021年7月 | 画像1,000万点以上からトレンドを分析 | なし(ワイドパンツの出現量の例示のみ) |
| TSIホールディングス | トレンド・需要予測 | 2021年10月 | EC出荷量を予測 | 誤差率16.8%(手作業は42.0%) |
| 両備システムズ | トレンド・需要予測 | 2026年10月発表 | 基幹システムに需要予測を追加 | なし(2027年3月から提供予定) |
15件のうち、成果を数字で示しているのは、ZOZOのアイテム着回しAI、アダストリアのGoogle Cloudの事例、TSIホールディングスの3件です。2026年に発表または報道された6件でみると、数字があるのは着回しAIの1件だけで、残りは開始時点の発表でした。
数字がないことは、効果がないことを意味しません。発表の時点が開始直後だったか、成果を公表していないだけの場合もあります。2021年の3件(BEAMS、ニューロープ、TSIホールディングス)は当時の発表で、現在の運用状況は公開情報から確認できていません。
提案・接客のファッションAI事例(5件)
客が服を選ぶ場面にAIを置く事例です。ZOZOは自社に蓄積した投稿データ、アルペンは外部のAIサービス、エアークローゼットは人のスタイリストとの分担と、作り方がそれぞれ違います。ZOZOの戦略は、W2が整理したZOZOのAIエージェント戦略の解説でも取り上げています。
ZOZO|ChatGPTの会話からコーディネートと商品を提案
- 時期:2026年3月9日に発表
- AIの役割:ChatGPTの「Apps in ChatGPT」で、「WEAR」のコーディネート画像とZOZOTOWNの商品情報を、会話に合わせて見せる
- 根拠にするデータ:WEARのコーディネート投稿1,400万件超(2025年12月時点)
- 使い方:ChatGPTのアプリ一覧で「ZOZO」を見つけて接続し、メッセージの冒頭に「@ZOZO」をつけて呼び出す。WEARやZOZOTOWNの会員登録は不要で、ChatGPTへのログインが必要
- 公表された数字:なし
ZOZOのリリースが想定しているのは、着たい雰囲気はあっても検索の言葉にできない人です。季節の服装、天気に合う通勤の服装、デートに着ていくシャツといった依頼が例に挙がっています。
見ておきたい点は2つあります。ひとつは購入の流れです。リリースは、購入がChatGPT内で完結するのか、ZOZOTOWNへ移動するのかを書いていません。
もうひとつは、ZOZO自身が、この連携とは別に、ファッションに特化した対話型のAIエージェントを開発中と明記していることです。他社のAIの中に入っていく動きと、自社のAIを育てる動きを並行させています(ZOZOのリリース)。
ZOZO|LINEで服選びを相談できる「ラボくん」
- 時期:2026年4月27日に開設
- AIの役割:LINE公式アカウント「ZOZOの似合うコーデAI ラボくん」が、対話で服選びの相談に応える。WEARに投稿されたコーディネート画像から提案し、着こなしのポイントと、診断したファッションジャンルに合う理由をスタイリストのように説明する
- 使い方:LINEで友だち追加し、基本情報を登録して、コーディネート画像を選ぶファッションジャンル診断を受ける。そのあと希望を送る。対象は15歳以上
- 購入:提案されたコーディネートに含まれるアイテムと、似たアイテムを見られる。購入はZOZOTOWN
- 公表された数字:なし
ラボくんは、2025年7月31日に終了した「niaulab by ZOZO」で培った知見とデータを活用したと説明されています。ジャンル診断はZOZO独自のAIが行うとされ、基盤の大規模言語モデルの種類は明かされていません。
今後は、体型の悩み、コーディネートごとの味付け、与えたい印象といったデータの追加を予定している、とも書かれています(ZOZOのリリース)。
5月の報道では、WEARの「似合う」データに、味付けと与える印象の要素が加わったと伝えられています(ネットショップ担当者フォーラム)。
ZOZO|購入後の着こなしを支える「アイテム着回しAI」
- 時期:2026年5月12日に、ネットショップ担当者フォーラムがZOZOの中期経営計画の取り組みとして報道
- AIの役割:購入済みのアイテムやお気に入り、好み、ZOZO独自のコーディネートTipsを参照して、購入後の着こなしを提案する
- 公表された数字:利用者の翌月再訪問率が1.1倍(初期成果。比較の対象や期間は報道に記載なし)
提案というと購入前の場面に目が向きがちですが、ZOZOは購入後の使い道にもAIを広げています。買った服をどう着回すかを手助けして、次の訪問につなげる狙いです。
同じ報道は、ChatGPTやLINEを通じたAI施策の送客効果が、現時点では限定的とされていることも伝えています。具体的な数字は示されていません。個人向けのAIは、機能を出しただけでは売上に結びつきにくい場合があることを示す一文です(ネットショップ担当者フォーラム)。
アルペン|公式ECで商品の相談に答えるAIショッピングエージェント
- 時期:2026年6月12日に、提供元のFirework Japanが発表
- AIの役割:「Alpen Online」の商品ページから起動するチャットで、商品の技術や特徴の解説、競技レベルや使用環境に合うかの相談に24時間答える。回答に合わせて縦型のショート動画も見せる
- 対象:アディダス ジャパンのランニング用品とサッカー用品から開始。ほかのブランドやカテゴリーへの拡大を目指す
- 根拠にする情報:ブランドから提供された商品データと動画を優先して答える。誤った情報を生成してしまう(ハルシネーション)リスクを抑える狙い
- 公表された数字:なし
スポーツ用品が中心の小売ですが、ウェアやシューズも扱う小売のECにAIを置いた事例として載せています。
提供元はFirework Japanの「Firework Retail Connect」で、ブランドの公式動画やデータを小売のECへ直接届ける基盤です。対話のデータを分析して、SEOやAI検索への最適化に還元する仕組みも備えています(Fireworkのリリース)。
アルペンの執行役員兼デジタル本部長の蒲山雅文氏は、ほかのサイトで情報を集めなくても、Alpen Online内で購入まで完結できるようになったと述べています。
Alpen Onlineは、2025年12月にW2 Unifiedの採用が発表されたサイトです(W2の導入事例)。同じ導入事例では、今後の方針として、店舗とECを横断した行動データの分析に加えて、サイト上で提供する情報を最適化するためのAI活用も検討していると語られています。
AIショッピングエージェントの提供元はFirework Japanです(Fireworkのリリース、ECのミカタ)。
エアークローゼット|スタイリストの前段をAIが担う
- 時期:2025年10月9日にリリース
- AIの役割:月額制ファッションレンタル「airCloset」で、初回会員との対話を通じて、コーディネートの方針をすり合わせる工程を生成AIが受け持つ
- 人の役割:コーディネートを組むのは、これまでどおりプロのスタイリスト
- 公表された数字:なし(スタイリストの工数削減や満足度の改善幅は非公表)
AIに任せる範囲を、コーディネートを組む前の対話に絞っている点が特徴です。同社は、高い専門性が必要なコーディネートをAIだけで担うことは、現時点では難しいと説明しています。
大規模言語モデルを使った対話に、社内の知識や細かな規定を参照できる構造を組み合わせていて、明治大学の高木研究室との共同研究(2017年から継続)の成果で、特許出願中です(エアークローゼットのリリース)。
試着・サイズ提案のファッションAI事例(2件)
服のECでは、着たときの見え方とサイズが、購入のためらいや返品につながります。バーチャル試着の方式別の整理や費用はバーチャル試着システムの解説に任せ、ここではAIを使った2つの事例を確認します。
Google|全身写真から服や靴を試着できるバーチャル試着
- 時期:2025年10月8日に、日本での提供開始を発表。数週間かけて順次展開
- AIの役割:Google検索、ショッピング、画像検索に表示される衣類の試着アイコンから、全身写真をアップロードすると、商品を着た画像を数秒で生成する。トップス、ボトムス、ワンピースと、スニーカー、ヒール、ローファーなどの靴が対象
- 購入:購入ボタンから販売店のサイトへ移動して購入する
- 技術:布の垂れ方や伸びを表現するよう設計された、ファッション向けの画像モデル
- 公表された数字:なし
試着の体験が、検索結果の段階で始まる点に注目です。商品を見つけた場所と試着する場所が同じなので、客はサイトを行き来せずに、着た印象を確かめられます。購入は販売店のサイトで行うため、ECの運営側から見ると、Google上の試着は、購入の前に販売店のサイトへ客を送る入口にもなりえます。
Impress Watchは、この機能がサイズ情報を使わず、サイズを勧めるものでもないと伝えています。見た目の確認を助ける機能なので、サイズ選びの不安は別の仕組みで補う必要があります。
アップロードした写真の保存や利用の条件は、確認した記事には書かれていませんでした。Googleの公式の案内で確認しておきたい点です(Google公式ブログ、Impress Watch)。
BEAMS|バーチャサイズで手持ちの服とサイズ感を比べる
- 時期:2021年6月16日に、BEAMS公式オンラインショップで導入
- AIの役割:Virtusizeの「バーチャサイズ」で、性別、身長、体重、年齢の4項目を入力すると、からだに合わせたシルエットで試着画面が表示される。購入履歴やからだのデータがある客には、手持ちの服のシルエットに近いサイズを提案する。似た体型の人が選ぶサイズも表示する
- 公表された数字:成果の数字はなし。新デザインは「約400万件」のデータ分析をもとに開発したと、提供元が説明
2021年の発表で、現在の運用状況は確認できていません。それでも載せたのは、サイズの不安を「手持ちの服との比較」で解く考え方が、わかりやすい形で示されているからです。
400万件は学習やデータ分析の規模を示す数字で、サイズ選びの精度や返品の減少を示すものではありません。成果と混同しないよう、数字の意味を区別しておく必要があります(AIsmiley)。
AIモデル・撮影のファッションAI事例(5件)
撮影の手間と時間を減らし、制作の速さを上げたい企業の事例です。同時に、AIで作ったことの表示や、実在のモデルとの関係といった論点が、最も強く出る領域でもあります。
D2Cのアパレルブランドが、商品企画や撮影をどう組み立てているかは、D2Cアパレルブランド10選で紹介しています。
しまむら|AIモデル「瑠菜(るな)」を販促に起用
- 時期:2024年5月に公式Instagramで公開し、下高井戸店でデビュー。6月に、タキヒヨー、AI modelとのプロモーションプロジェクトとして報道
- AIの役割:20歳の服飾専門学生という設定のAIモデルが、ポスターやチラシに登場し、SNSで情報を発信する
- ねらい:移り変わりの早いトレンドへの対応と、10〜20代の若い女性の取り込み
- 範囲:開始時点は、下高井戸店(東京都杉並区)のポスターとチラシ。SNS運用を基盤に、広告などへ広げる計画
- 公表された数字:なし
報道では、人のモデルに比べて、スケジュール調整や撮影に時間がかからない点も挙げられています。一方で、売上や反響の数字は示されていません。開始時点の対象が1店舗のポスターとチラシだったことは、AIモデルを小さな範囲から試した例として読めます(ネットショップ担当者フォーラム、AIsmiley)。
三越伊勢丹・伊勢丹スタジオ|AIモデルで着用画像と動画を生成
- 時期:2025年8月14日に、WWDJAPANが報道
- AIの役割:AI modelの「AIささげ動画生成サービス」で、AIモデルが商品を着用した画像や、さまざまなポーズの動画を生成する。「ささげ」は、撮影、採寸、原稿作成の頭文字を取った業界用語
- 範囲:三越伊勢丹オンラインストアの撮影を担う伊勢丹スタジオと組み、「ジュンヤワタナベマン」のEC販売向けから開始
- 公表された数字:なし(コンバージョンの改善率や料金も非公表)
同社の説明として、動画はコンバージョンの向上につながるとされ、TikTokやInstagramなど、SNSを基盤にしたECサイトとも連携できると報じられています。この点は提供企業の見立てで、報道に実績の数字は載っていません。
三越伊勢丹側のコメントも掲載されておらず、他のブランドへの展開の計画も書かれていません(WWDJAPAN)。
アダストリア|AI共創ブランド「ELMIRA」
- 時期:2026年9月30日に先行公開し、10月8日に公式Webストア「and ST」で販売を開始。同日、AI modelが立ち上げ支援を発表
- AIの役割:ブランドの画像に使うAIモデル(「AI SHIHO」を含む複数)、ECの商品画像、販促の動画やSNS用のコンテンツをAIで制作する。AI modelの基盤「A/CLOUD」を利用
- ブランド:40〜60代の女性向け。コンセプトは「いまの私に、似合うをもう一度。」。平均価格は3,000円前後で、2,000〜4,000円台が中心
- 今後:AIによるマーケットデータの分析や商品企画は、今後本格的に取り組む予定
- 公表された数字:なし
「AI SHIHO」は、実在モデルのSHIHOさんの撮影データをもとに生成した、ブランド専属のAIモデルです。完全な自動化ではなく、クリエイターとAIの「共創」を掲げています。
AI modelは、ロケーションや撮影の日程がなくても商品画像と動画を作れるため、新商品を統一感のある見た目で素早く出せると説明しています。売上や制作期間の数字は示されていません。
実在モデルのデータを使う場合の本人の同意や権利の扱いは、確認した記事では触れられていませんでした(AI modelのリリース、AdverTimes)。
アダストリア|Google Cloudの生成AIで商品画像を作り、検索と店舗の声も改善
- 時期:2024年12月18日に、Google Cloudの公式ブログが顧客事例として掲載
- 商品画像:Imagenで、ロケや機材、スタジオを使う撮影の代わりに、EC用の画像を生成する。EC担当者が参加するワークショップを開き、法務部門と連携してガイドラインを作成したうえで、約2週間後にECサイトで運用を始めた
- 検索・レコメンド:Vertex AI Search for retailとRecommendations AIで、「赤いワンピース」のような表記のゆれに対応する検索と、パーソナライズした推薦を、公式WEBストアと「&ST」に導入
- 店舗の声:店舗スタッフが、購入に至らなかった商品の客の反応を30秒ほどの音声で記録し、Geminiで分析する「STAFF VOICE」。BigQueryとLooker Studioで見える化する
- 公表された数字:次のとおり
- 検索からの商品詳細への遷移率が+15%、CVRが+20%。行動データの蓄積後に、遷移率がさらに+5%
- 推薦では、商品への遷移率が+9%、CVRが+16%
- 画像生成を導入したブランドで、撮影コストを50%以上削減
- STAFF VOICEで課題が見つかった商品は、改良後に初動の売上が数%増
数字はすべてGoogle Cloudの顧客事例記事に載ったもので、第三者による検証ではありません。比較の期間や基準も書かれていない点には注意が必要です。導入にあたってA/Bテストで効果を検証したとは書かれていますが、上の数字がそのテストの結果かどうかは読み取れません。
撮影コストの削減も、画像生成を導入したブランドでの数字で、全社の数字ではありません。
それでも参考になるのは、運用開始までの進め方です。ワークショップで現場の担当者を巻き込み、法務とガイドラインを作ってから、約2週間で運用に入っています(Google Cloud公式ブログ)。
H&M|実在モデルのデジタルツインをAIで生成
- 時期:2025年3月28日に、FashionUnitedが報道
- AIの役割:実在モデルの「デジタルツイン」をAIで作り、ソーシャルメディアの投稿やマーケティングキャンペーンに使う
- 範囲:30人のモデルが使用を許可
- 条件:モデルの同意が前提。モデルは複製の使用について管理する権利を持ち、報酬は写真撮影の場合と同じ方法で受け取る、とH&Mは説明
- 表示:最初のAIモデルの画像は、AI生成であることを示す透かしをつけて、ソーシャルメディアに公開
- 公表された数字:なし
H&Mのクリエイティブ責任者は、生成AIを「新しい領域」と位置づけ、代理店やモデル本人など業界の関係者と協力して、責任ある形で進めていると説明しています。
一方で、業界の雇用やモデルの権利への懸念を示す声も報じられています。AIモデルの活用は、同意、報酬、表示の3点を先に決めておく必要があることを示す事例です(FashionUnited)。
トレンド・需要予測のファッションAI事例(3件)
売れ筋を読み違えると、欠品も売れ残りも生まれます。この領域は客の目に触れにくく、今回確認できた公開事例は少なめでした。確認できた3件は、2021年の2件と、2026年10月に発表されたばかりの1件でした。成熟した大型の導入事例というより、考え方と進め方を知る材料として読むのが現実的です。
ニューロープ|画像1,000万点以上からトレンドを読む「#CBK forecast」
- 時期:2021年7月に正式リリース。2026年6月29日に、カイタックグループの子会社になったと発表
- AIの役割:ファッションコレクション、Instagram、ECサイトの画像を、約600種類のタグと、顔認識による性別・年齢の推定情報で分類し、トレンドを時系列で分析する。BIツールで確認でき、毎月のレポートとCSVにも対応
- 例示された数字:ワイドパンツの出現量が、2018年1月と比べて、2021年5月時点で約2.7倍
- 人の役割:コンセプトの策定やディテールのデザインなど、センスが必要な領域は人が担うと、同社は位置づけている
- 公表された数字:導入企業の成果はなし
AIを提供する側の事例で、導入した企業の名前や成果は、確認した資料にありません。2.7倍はトレンドの出現量の変化を示す例で、売上や在庫の改善ではない点に注意が必要です(FashionSnap、ニューロープの発表(カイタックグループ参画))。
TSIホールディングス|EC出荷量の予測を手作業からAIへ
- 時期:2021年10月に、ナノ・ユニバースなどを展開するTSIホールディングスと、aiforce solutionsが発表
- AIの役割:物流管理部門で、EC出荷量を予測するAIモデルを構築。新型コロナでEC需要が急に増え、手作業の予測がずれて、倉庫の人員配置に過不足が出ていた
- 進め方:AIの経験がないスタッフが基礎を学び、現場の課題を1つ選んで、データサイエンティストの支援を受けながら、約3か月でモデルを作った
- 公表された数字:予測の誤差率は、手作業の42.0%に対してAIが16.8%。手作業の予測にかかる工数の80%削減は見込み
数字がそろっている例ですが、発表元は提供企業です。測定の期間は書かれておらず、工数の80%削減は実績ではなく見込みです。それでも、現場のスタッフが主体になり、課題を1つに絞って約3か月で形にした進め方は、自社に置き換えやすい部分でしょう(AIsmiley、LOGI-TODAY)。
両備システムズ×SENSY|アパレルの基幹システムに需要予測を追加
- 時期:2026年10月1日に発表。2027年3月から段階的に提供
- AIの役割:アパレル基幹システム「Sunny-Side for Retail」に、SENSYの技術によるAI需要予測を追加する。新商品は、商品の属性と消費者の嗜好データから初期の投入数量を予測する。発売後は、販売と在庫のデータから追加発注や在庫調整を支える
- 使う場面:発注計画、店舗への配分、店舗間の移動、値下げの判断
- 公表された数字:なし(精度や削減額の記載なし)
発表は提供前の段階で、実績はまだありません。目的として、欠品や過剰在庫による機会損失を減らすことと、担当者個人の判断への依存を下げることが挙げられています。需要予測を単体のツールで終わらせず、基幹システムの中に組み込む動きとして押さえておきたい事例です(LOGI-TODAY)。
ファッションAIの事例にある数字の読み方
15件のうち、成果の数字が出ていたのは3件でした。その数字を、同じ観点で見直します。
| 数字 | 事例 | 出どころ | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| 検索からの遷移率+15%、CVR+20% | アダストリア | Google Cloudの顧客事例記事 | 比較の期間と基準は記載なし。第三者による検証ではない |
| 撮影コスト50%以上削減 | アダストリア | 同上 | 画像生成を導入したブランドでの数字。全社のコストではない |
| 誤差率16.8%(手作業は42.0%) | TSIホールディングス | 提供企業(aiforce solutions)のリリース | 予測の対象はEC出荷量。測定期間は記載なし。工数80%削減は見込み |
| 翌月再訪問率1.1倍 | ZOZO | 中期経営計画の報道 | 初期成果。比較の対象と期間は記載なし。送客効果は限定的とも報じられている |
出どころは、いずれも事業者か提供企業です。第三者が測った数字ではなく、比較の条件を読み取れないものが大半でした。
社内で共有するときは「アダストリアでは、Google Cloudの事例記事上、検索経由のCVRが20%改善したとされている(条件は非公表)」のように、出どころと条件の有無を添えて伝えると、あとで突っ込まれにくくなります。
見直すときの観点は3つです。何と比べた数字か(比較対象)、いつからいつまでの数字か(期間)、全体の数字か一部の数字か(範囲)。この3点が書かれていない数字は、自社の期待値にそのまま使わないのが安全です。
15事例に共通していた5つの設計
事例の中身は領域ごとに違っても、設計の考え方には重なる部分がありました。
1. AIに任せる範囲を狭く決めている
エアークローゼットは、AIの役割をコーディネートを組む前の対話に絞り、組む作業はスタイリストに残しています。アルペンのAIは、ブランドから提供された情報を優先して答える設計です。ELMIRAでも、AIの活用は現時点でブランドの画像などの制作が中心で、商品企画への活用は今後の予定とされています。
2. 自社に蓄積したデータを土台にしている
ZOZOはWEARの投稿1,400万件超、ニューロープは画像1,000万点以上が土台です。アダストリアの検索は、行動データが蓄積されたあとに遷移率がさらに5%上がったと説明されています。
AIの性能に加えて、何のデータを渡せるかが、できることの幅を決めている。事例を並べると、そう読めます。
3. 人の役割を残している
エアークローゼットのスタイリスト、ニューロープが「センス」の領域として人に残したコンセプトの策定やデザイン、ELMIRAの「クリエイターとAIの共創」。
アダストリアのSTAFF VOICEでは、客の反応を記録するのは店舗のスタッフです。AIが代わるのではなく、人が判断する材料を増やす使い方が目立ちました。
4. 表示と権利を先に決めている
H&Mはモデルの同意、報酬、透かしによる表示を示し、アダストリアは画像生成の運用前に、法務と連携してガイドラインを作成しています。運用を始めてから決めるより、始める前に決めておくほうが、社内外への説明がしやすくなります。
5. 小さな範囲から始めている
しまむらは1店舗のポスターとチラシから、アルペンはアディダスのランニング用品とサッカー用品から始めました。TSIホールディングスは課題を1つに絞って約3か月、アダストリアの画像生成はワークショップから約2週間で運用に入っています。
自社ECでファッションAIを始める手順
事例を自社に置き換えるときの手順を整理します。アパレルEC全体の戦略や課題は、アパレルECとは?市場規模・成功戦略・課題で扱っています。
課題から領域を選ぶ
最初に決めるのは、どの課題をAIで解きたいかです。課題と領域、参考になる事例、最初に測る数字を、次の表に対応させました。
| 課題 | 向く領域 | 参考にした事例 | 最初に測る数字 |
|---|---|---|---|
| 撮影の手間と時間が負担になっている | AIモデル・撮影 | アダストリア、三越伊勢丹 | 1商品あたりの制作日数、撮影の費用 |
| 何を選べばよいか迷って離脱している | 提案・接客 | ZOZO、アルペン、エアークローゼット | 商品ページから先への遷移率、問い合わせ件数 |
| サイズや着た印象の不安で購入をためらう | 試着・サイズ | Google、BEAMS | 返品率、サイズに関する問い合わせ件数 |
| 売れ残りや欠品が出ている | トレンド・需要予測 | TSIホールディングス、両備システムズ | 予測の誤差、欠品率、在庫の回転 |
| サイトで商品が見つけにくい | 検索・レコメンド | アダストリア(Google Cloudの事例) | サイト内検索からの遷移率、検索結果が0件の割合 |
検索・レコメンドは4領域のどれにも収まりにくいため、アダストリアの事例で確認できた範囲で入れています。表の右端の数字は、導入前に必ず測っておきたい指標です。導入後の数字だけでは、何が変わったのかを説明できません。
進め方の5ステップ
- 解決したい課題を1つに絞る:表の中から1行を選びます。複数の課題を同時に解こうとすると、効果の測り方が定まりません
- AIに任せる範囲と、人が担う範囲を書き出す:エアークローゼットのように「組む前の対話はAI、組むのは人」と線を引きます。AIが答えない内容も決めておきます
- 根拠にするデータを整える:商品の素材、サイズ、着用感、在庫、購入履歴など、AIが参照するデータを用意します。アルペンのように、ブランドの提供情報を根拠にする方法もあります
- 小さな範囲で試す:特定のブランド、特定のカテゴリー、1つのページから始めます。しまむらやアルペンも、小さな範囲から広げています
- 導入前の数字を測り、同じ条件で比べる:期間と対象を決め、導入前後を同じ条件で比べます
ファッションAIを使うときの注意点
AIモデルと実在モデルの権利
実在のモデルのデータをもとにAIモデルを作る場合、本人の同意、報酬、複製の管理が論点になります。H&Mは、同意を前提とし、報酬を撮影と同じ方法で支払うと説明しました。ELMIRAの「AI SHIHO」のように、実在モデルをもとにしたAIモデルでも、権利の扱いが記事に出ていない例があります。
契約や社内の方針は、公開される情報だけで判断せず、自社の法務で確認してください。
生成画像のルール
商品画像に生成AIを使うときは、実物との見え方の差が問題になります。色、素材感、サイズ感が実物と違って見えないかを、公開前に確認する運用が必要です。アダストリアは、画像生成を始める前に法務と連携してガイドラインを作っています。
ガイドラインの中身は公開されていませんが、運用の前に決める項目があることを示す例です。
写真や体型など、個人に近いデータ
バーチャル試着は全身写真、サイズの提案は身長や体重といったデータを扱います。Googleの試着機能は全身写真のアップロードが前提ですが、確認した記事には、保存や利用の条件が書かれていませんでした。
自社のECでこうした機能を取り入れる場合は、取得する項目、利用目的、保存期間を、客に事前に知らせる設計にしておきます。
AIの誤った回答
AIが商品について誤った説明をすると、購入後のトラブルにつながります。アルペンのAIが、ブランドから提供された情報を優先して答える設計にしているのは、誤った情報の生成を抑えるためです。AIに答えさせる範囲と、答えられないときに人へ引き継ぐ出口を、先に決めておきます。
ファッションAIの費用と補助金の見方
15事例のうち、導入費用を公表した例は確認できませんでした。ELMIRAの平均価格3,000円前後は商品の価格で、AIの費用ではありません。費用は領域と構成で大きく変わるため、見積もりを取るときは、次の項目をそろえて聞くと比べやすくなります。
| 聞く項目 | 確認する内容 | 関わる領域 |
|---|---|---|
| 初期費用と月額 | 導入時の費用、月額の固定費、契約期間 | 全領域 |
| 従量の条件 | 会話の数、生成する画像や動画の本数、予測の対象数に応じた課金の有無 | 提案・接客、AIモデル・撮影、需要予測 |
| データ連携 | 商品、在庫、購入履歴の受け渡し方式と、連携にかかる開発費 | 全領域 |
| 権利と表示 | 生成物の権利の帰属、実在モデルの同意の取り方、AI生成の表示方法 | AIモデル・撮影 |
| 運用体制 | 回答や画像の確認、データの更新を誰が担うか | 提案・接客、AIモデル・撮影 |
| 写真・体型データの扱い | 保存期間、利用目的、削除の方法 | 試着・サイズ |
12か月の総額で比べると、初期費用が安くても、従量課金やデータ連携の開発費で総額が逆転していないかを確かめられます。
補助金が使える場合もあります。IT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わり、通常枠の補助率は1/2以内(賃上げ等の条件を満たすと2/3以内)です。
対象になるのは、事務局に登録されたITツールを、登録された支援事業者を通じて導入する場合に限られます。導入を検討するサービスが登録されているかは、公募の時期ごとにIT導入補助金のサイトで確認してください(J-Net21)。
ECでファッションAIを活用するための基盤の選び方
事例を見ると、AIの機能そのものは、外部のサービスで足せる場合があります。アルペンのAIショッピングエージェントは、Fireworkのサービスです。一方で、そのAIに何を渡せるか、後から別のAIサービスをつなげるかは、ECの基盤側で決まります。
| 確認項目 | 見る理由 | 根拠にした事例 |
|---|---|---|
| 商品属性、在庫、購入履歴などを、AIのサービスに渡せるか | 提案や相談の根拠になる。在庫に基づく案内もできる | ZOZO、アルペン |
| 外部のAIサービスとAPIでつなげるか | 検索、接客、画像生成などのAIを、あとから足せる | アルペン、アダストリア |
| 店舗とECの在庫・会員データを同期できるか | 店舗在庫を見せた案内や、店舗とECをまたぐ提案ができる | アルペン |
| 売場やコンテンツを、自社で素早く変えられるか | AIの機能を試して、直す作業を回せる | アルペン、アダストリア |
| 定期やサブスクで、診断結果から商品を出し分けられるか | 客ごとの提案を、継続して届けられる | エアークローゼット |
どの項目も、AIのツール単体ではなく、ECの基盤が担う部分を含みます。データの受け渡しの方式はAPI連携とは、ECサイト全体でのAI活用の進め方はECサイトのAI活用完全ガイドで整理しています。
W2 Commerceで揃える場合
選択肢のひとつとして、W2 Commerceの構成を挙げます。W2 Commerceは、BtoCから定期通販、BtoB、海外ECまで対応するECプラットフォームで、AIを組み込んだ1,000以上の機能を標準で備えています(W2の発表)。
BtoC向けのW2 Commerce Unifiedは、集客、CRM、サイト統合、OMOの機能を標準で提供します。
店舗とECの在庫・顧客情報のリアルタイム連携、複数ブランドサイトの一元管理(会員やポイントの共通化)、基幹システムや在庫管理システムとのAPI連携に対応し、商品だけでなく「情報」をAIがレコメンドする機能もあります。
上の表では、1〜4行目の確認項目に関わる部分です。
サブスクや定期通販には、W2 Commerce Repeatがあります。
客の設問への回答から診断結果や最適な商品を示すパーソナライズ販売機能と、客の属性や行動履歴をAIが解析してコンテンツを提案するAIレコメンド機能を備えています。服のレンタルや定期便のように、客ごとに提案を変えるサービスでは、表の5行目を確認する手がかりです。
アルペンは、W2 Commerce Unifiedで、約400店舗と連携するOMOの基盤を約10か月で刷新しました。店舗の端末でEC在庫を手配し、自宅配送や店頭決済まで行える「インストア注文」や、約4,000本の記事と購入導線を結ぶメディアコマースを実現しています。
詳しくは、アルペンの導入事例をご覧ください。ファッション分野のほかの事例は、導入企業一覧のファッションの項目に掲載しています。
2026年9月15日には、EC・店舗・基幹・メディアのデータとAIをつなぐAIエージェント基盤「W2 SmartHub」を正式リリースしました。個別の要件に合わせたAI機能の開発は、AIカスタマイズ開発 AI buddyで案内しています。拡張プラグインは一覧からご覧いただけます。
ファッションAIに関するよくある質問
Q. ファッションAIとは何ですか?
コーディネートの提案、試着、サイズの目安、モデル画像の生成、トレンドや需要の予測など、ファッションの場面でAIを使う技術やサービスの総称です。個人が使う服選びのアプリやチャットと、アパレル企業が業務で使うAIの2つの意味で使われます。
Q. 個人が使えるファッションAIには、どんなものがありますか?
この記事の事例では、ChatGPTから呼び出せるZOZOのアプリ連携、LINEのZOZO「ラボくん」、Google検索から使えるバーチャル試着があります。
ZOZOのChatGPT連携は、WEARやZOZOTOWNの会員登録が不要と案内されています。ラボくんはLINEのアカウントが必要で、15歳以上が対象です。
Q. アパレルで、AIはどんな業務に使われていますか?
事例では、コーディネートの提案や商品の相談への対応、バーチャル試着とサイズの提案、AIモデルや商品画像、動画の生成、検索とレコメンド、店舗スタッフが集めた客の声の分析、トレンドの予測、EC出荷量や需要の予測が確認できました。
Q. 中小規模のアパレルECでも導入できますか?
15事例は大手が中心で、中小規模のECの事例は確認できていません。ただし、範囲を絞った事例はあります。アダストリアの画像生成は、ワークショップとガイドライン作成から約2週間で運用に入りました。TSIホールディングスは、課題を1つに絞って約3か月でモデルを作っています。
まずは1つの課題、1つのブランドから試すのが現実的です。
Q. AIモデルは、実在のモデルの仕事をなくしますか?
事例からは判断できません。H&Mは、モデルの同意と報酬を前提に進めると説明していますが、雇用やモデルの権利への懸念を示す声も報じられています。企業によって方針が異なるため、自社で使う場合は、同意、報酬、表示のルールを先に決めておく必要があります。
Q. 生成AIで作った商品画像は、そのまま使ってよいですか?
そのまま使うのは避けたほうがよいでしょう。色、素材感、サイズ感が実物と違って見えないか、確認する工程が必要です。アダストリアは、画像生成を始める前に、法務と連携してガイドラインを作成しています。
Q. ファッションAIの導入には、どのくらいの費用がかかりますか?
15事例で導入費用を公表した例は確認できませんでした。領域と構成によって大きく変わるため、初期費用と月額、従量課金の条件、データ連携の開発費を12か月の総額でそろえて見積もりを取るのが確実です。補助金の対象になる場合もあるため、サービスが登録されているかを確認してください。
Q. 効果が出るまで、どのくらいの期間がかかりますか?
事例では、効果が出るまでの期間を公表した例は確認できませんでした。公表されていたのは、運用開始までの期間です。アダストリアの画像生成は約2週間、TSIホールディングスのEC出荷量の予測モデルは約3か月でした。効果の測定期間は、導入前の数字を測ったうえで、自社で決める必要があります。
まとめ|ファッションAIは「範囲」「データ」「測り方」から決める
ファッションAIは、コーディネートの提案、試着、モデル画像の生成、需要予測など、ファッションの場面でAIを使う技術です。15事例では、提案・接客、試着・サイズ、AIモデル・撮影、トレンド・需要予測の4領域で、AIが担う範囲はさまざまでした。
共通していたのは、AIに任せる範囲を絞り、自社のデータを土台にし、人の役割を残し、表示と権利を先に決めて、小さな範囲から始める設計でした。
成果の数字を公表していたのは3件で、比較の期間や基準まで示した例はありません。数字は出どころと条件を確かめたうえで読み、自社では導入前の数字から測り始めるのが確実でしょう。
次にとる行動は、次の3つです。
- 解決したい課題を1つ選び、導入前の数字を測り始める:制作日数、返品率、欠品率、検索からの遷移率などを2〜3つ記録する
- AIに任せる範囲と、人が担う範囲を1枚にまとめる:AIが答えない内容と、人へ引き継ぐ出口まで書く
- AIモデルや生成画像を使うなら、同意、報酬、表示のルールを運用の前に決める:法務と、画像の確認手順を決めておく
AI活用の全体像はAIコマースとは?、顧客側のAIに備える準備はエージェンティックコマースとは?で整理しています。アパレルの成功事例はアパレルネットショップ成功事例10選、ブランドの立ち上げはD2Cアパレルブランド10選もあわせてご覧ください。
ECでファッションAIを始めるなら、商品・在庫・会員のデータをAIに渡せる基盤かどうかで、できることが決まります。W2 Commerce Unified、W2 Commerce Repeat、拡張プラグインについては、拡張プラグインの一覧からご覧いただけます。
この記事の監修者
神戸大学在学中にEC事業を立ち上げ、自社ECサイトの構築から販売戦略の立案・実行、広告運用、物流手配に至るまで、EC運営の全工程をハンズオンで経験。売上を大きく伸ばしたのち、事業譲渡を実現。
大学卒業後はW2株式会社に新卒入社し、現在は、ECプラットフォーム事業とインテグレーション事業のマーケティング戦略の統括・推進を担う。一貫してEC領域に携わり、スタートアップから大手企業まで、あらゆるフェーズのEC支援に精通している。





























