「中国 EC」で調べると、「市場規模は世界一」「天猫・京東・拼多多が三強」という説明はすぐに見つかります。けれども、日本の会社が知りたいのはその先ではないでしょうか。自社の商品はどのモールなら出せるのか、費用はいくらか、売れたとして利益は残るのか、そして、モールに頼って大丈夫なのか。
中国のEC事業者は、アリババ、京東、拼多多のいずれも、取引総額(GMV)を決算で示していません。ランキングの数字は、売上高、第三者の推計、報道のどれなのかで中身が変わります。順位だけを見て出店先を決めると、費用や条件の読み違いにつながります。
この記事は、中国のECモール7つを、公式決算・第三者の推計・日本企業の入口という3つの視点で並べたものです。天猫国際と京東国際の費用の目安、越境ECの上限と税、モールに頼るリスク、そして自社の越境ECサイトまでを、順番にたどれる構成にしました。
数字には、公式の決算、第三者の推計、報道という種類の違いがあるため、種類を書き添えています。越境ECの定義や始め方の基本は越境ECとは?で、この記事は中国のモールと市場に絞っています。
この記事でわかること
淘宝・天猫を持つアリババが首位で、京東、拼多多、抖音電商が続きます。ただし、アリババ・京東・拼多多は直近の決算でGMV(取引総額)を示しておらず、7つのモールを同じ指標で並べた公式データはありません。公式決算、第三者の推計、報道の3つを区別して、規模の目安で7モールを並べています。快手と唯品会はGMVを公表しており、2025年通期は快手が1兆5,981億元、唯品会が2,135億元です。
海外の法人のまま出せる越境モール(天猫国際、京東国際)、中国法人で出す国内向けモール、運営代行、自社の越境ECサイト、転送・代理購入サービス、卸の6通りがあります。ジェトロ北京事務所の2021年3月時点の調査では、天猫国際は保証金が5万〜30万元、年間サービス料が3万元または6万元、販売手数料が0.5〜5%でした。
あります。個人向けの越境EC小売輸入は、1回5,000元、1人あたり年間26,000元が上限で、対象は商品リスト(ポジティブリスト)にある品目に限られます。上限内なら関税は0%、増値税・消費税は法定の70%です。月に1回3,000元を買う定期購入だと、9回目から年間の枠を超えます。
モールは出店者が払う広告費と手数料で成り立っています。拼多多の2025年の売上4,318億元は、広告などが50.4%、取引手数料が49.6%でした。手数料、顧客データ、ブランド管理の3点でモールに頼りすぎると、利益も顧客も手元に残りにくくなります。確認項目は「モール依存のリスク」の章で、自社の越境ECサイトの考え方は「W2 Commerce Asia」の章で取り上げます。
中国EC市場の規模:国内の販売額、日本からの越境EC、大型セール
中国のEC(インターネット通販)は、国の統計で見ても別格の規模です。国家統計局の発表によると、2025年の全国のネット小売額は15兆9,722億元(約16兆元)で、前年より8.6%増えました。このうち、衣類や家電などの実物商品は13兆923億元(前年比5.2%増)で、社会消費品小売総額の26.1%を占めます。小売全体に対するネット販売の割合で、いわゆるEC化率にあたる数字です。
見落としやすいのは、伸び率の差です。ネット小売額全体は8.6%増、実物商品は5.2%増。実物の商品を売る会社が自社の見通しに使う数字は、5.2%のほうです。
日本の会社にとって身近なのは、日本から中国の消費者への越境ECです。経済産業省の調査では、2024年に中国の消費者が日本と米国の事業者から買った額は、合わせて5兆7,769億円でした。
| 指標 | 数値 | 時点 | 種類・出典 |
|---|---|---|---|
| 全国のネット小売額 | 15兆9,722億元(前年比+8.6%) | 2025年 | 公式統計・国家統計局 |
| うち実物商品 | 13兆923億元(前年比+5.2%)、社会消費品小売総額の26.1% | 2025年 | 同上 |
| 中国の消費者の越境EC購入額(日本・米国から) | 5兆7,769億円 | 2024年 | 公式統計・経済産業省 |
| うち日本から | 2兆6,372億円(約46%) | 2024年 | 同上 |
| うち米国から | 3兆1,397億円(約54%) | 2024年 | 同上 |
表の上の2行は、中国国内の事業者を含むネット小売の全体で、元建てです。下の3行は、中国の消費者が海外の事業者から買った額で、円建てです。対象も通貨も違うので、割り算や足し算はできません。日本の会社がどちらの市場に入るかは、出店の方式で決まります。海外から送る越境の方式では下の3行の市場、中国法人を置いて国内向けモールに出す方式では上の2行の市場です。出店方式の違いは、「日本企業の出店方法」の章で比べています。
日本から中国への購入額は、2023年の約2.43兆円(経済産業省の調査としてW2の越境EC事例の記事に掲載)から、2024年は2兆6,372億円へ、約8.5%増えました。購入先としては、米国に次ぐ位置です。
大型セールの規模:6月18日の「618」と、11月11日の「双11」
中国のECには、年に2回の大型セールがあります。6月18日の「618」と、11月11日の「双11(独身の日)」です。星図数据の集計では、2024年の双11(2024年10月14日〜11月11日)の販売額は、ECプラットフォームとライブコマースの合計で1兆4,418億元でした。前年の同時期より26.6%増で、内訳はECプラットフォームが1兆1,093億元(20.1%増)、ライブコマースが3,325億元(54.6%増)です(36Kr Japan)。
伸び率の読み方には注意が必要です。2024年の集計期間は10月14日からで、比較した前年の期間(10月24日〜11月11日)より10日長く、同じ条件の比較ではありません。ライブコマースの伸びが大きい点は、「中国ECモールランキング」の章で紹介する抖音電商や快手が成長している流れとも重なります。出店して最初の大型セールをいつに設定するかは、「中国EC参入の進め方」の章で扱います。
中国ECモールランキング:主要7モールの比較
順位のつけ方:公式データがない部分は、種類を分けて並べる
7つのモールを、同じ指標で比べた公式データは存在しません。アリババ、京東、拼多多は、直近の決算で売上高は開示していますがGMVは示しておらず、抖音電商を運営するバイトダンスは売上もGMVも開示していません。快手と唯品会はGMVを公表しています。
そこで、次の3種類の数字を分けて並べ、規模の目安で順位をつけました。
- 公式決算:各社が決算資料で公表した数字
- 第三者推計:調査会社の数字。ここでは、中国の調査会社「星図数据」の2023年の推計(36Kr Japan経由)を使っています
- 報道:メディアが関係者から得た数字。公式発表ではありません
京東、拼多多、抖音電商は、指標によって順位が入れ替わるため、「2〜4位」にまとめています。
主要7モールの早見表
| 順位 | モール(運営) | 規模の目安(種類) | 特徴 | 日本企業の入口 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 天猫・淘宝(アリババ) | 中国EC事業の2026年3月期売上5,542億元【公式決算】/総合EC内シェア46.0%(2023年)【第三者推計】 | 企業向けの天猫と、個人や小規模店も出店する淘宝。有料会員88VIPは6,200万人超 | 越境は天猫国際。国内向けは中国法人で出店 |
| 2〜4位 | 京東(JD.com) | 2025年通期の純収益1兆3,091億元、商品販売が78.2%【公式決算】/総合EC内シェア27.2%(2023年)【第三者推計】 | 自社で仕入れて売る直販が中心。家電と自前の物流 | 越境は京東国際 |
| 2〜4位 | 拼多多 | 2025年通期の総収入4,318億元【公式決算】/総合EC内シェア26.8%(2023年)【第三者推計】 | 売上の中身は出店者が払う広告費と手数料 | 公開されている窓口情報は限られる |
| 2〜4位 | 抖音電商 | 2024年のGMV約3.5兆元(前年比+30%)【報道・非公式】/ライブコマースの約5割(2023年)【第三者推計】 | 動画とライブ配信から買う型 | 抖音電商全球購(Douyin EC Global) |
| 5位 | 快手 | 2025年通期のEC GMV 1兆5,981億元(+15.0%)【公式決算】 | 動画とライブ配信。アプリの月間利用者7億2,460万人(平均) | 公開されている窓口情報は限られる |
| 6位 | 唯品会 | 2025年通期のGMV 2,135億元(+2.0%)【公式決算】 | ブランド品のセール型。アクティブ顧客8,480万人 | 公開されている窓口情報は限られる |
| 順位なし | 小紅書(RED) | 月間利用者 約3億人【報道】。GMVは非公表 | 投稿を見て商品を知るSNS型 | 公開されている窓口情報は限られる |
表のとおり、1位の天猫・淘宝と、5位の快手、6位の唯品会は、数字の裏づけから順位をつけられます。一方、京東・拼多多・抖音電商の3社は、持っている数字の種類が違うため、順位をつけられません。たとえば、2023年の星図数据の推計では、総合ECの内訳で京東が27.2%、拼多多が26.8%と、差は0.4ポイントです。抖音電商は、ライブコマースの区分に入るため、この内訳には含まれていません。
日本企業にとって大切なのは、順位より「入口があるか」です。窓口が公開されているのは、天猫国際、京東国際、抖音電商全球購の3つです。条件がわかるのは天猫国際と京東国際で、数字は「日本企業の出店方法」の章に載せています。小紅書や快手などは、条件の公開情報が限られるため、運営代行会社への相談から始めるのが現実的です。
1位 天猫(Tmall)・淘宝(Taobao):アリババ
アリババの中国EC事業(淘宝・天猫のほか、即時配達なども含む)の2026年3月期の売上は5,542億元で、前年より9%増えました。内訳は、ECの部分(顧客管理収入と直販など)が4,494億元(4%増)、即時配達が785億元(47%増)、卸売が263億元(8%増)です(アリババの決算発表)。増えた分の458億元のうち、半分以上にあたる249億元は即時配達で、ECの本体の伸びは4%にとどまります。
出店者が払う広告費や手数料にあたる「顧客管理収入」は3,439億元(5%増)で、ECの部分の約77%を占めます。アリババは、淘宝・天猫を2025年6月期から単独では開示しなくなり、GMVも示していません。順位を支える数字は、星図数据の2023年の推計で、総合ECの内訳で天猫が46.0%と首位ですが、成長は鈍化したと報じられています(36Kr Japan)。有料会員の88VIPは6,200万人を超えました。
日本企業の入口は2つあります。国内向けの「天猫」は中国法人で出店し、海外の法人のまま出せるのが越境の「天猫国際」です。2023年には、Tmallジャパンとジェトロが、天猫国際が運営する「天猫国際進口超市」への委託販売の出品機会を、日本企業(個人事業主を除く)向けに提供しました(申込は2023年6月15日〜7月28日、ECのミカタ)。委託販売で、商品ページの作成や広告運用の代行も含まれていました。費用や条件は、「日本企業の出店方法」の章で整理します。
2〜4位 京東(JD.com)
京東の2025年通期の純収益は1兆3,091億元(13.0%増)でした。内訳は、商品販売収入が1兆238億元(10.3%増)で全体の78.2%、サービス収入が2,853億元(23.6%増)です。商品別では、電子機器・家電が6,051億元(7.1%増)、日用品などが4,187億元(15.3%増)、マーケットプレイスと広告が1,071億元(18.9%増)、物流などが1,782億元(26.6%増)でした(京東の決算発表)。
京東は、商品を仕入れて自社で売る直販の比重が大きく、売上高に商品の販売額がそのまま入ります。そのため、売上高の大きさは、出店者の取引の大きさや、出店者の負担とは一致しません。この違いは、「ランキングの数字の読み方」の章で詳しく見ます。GMVと年間のアクティブ顧客数は、この決算発表には記載がありません。
日本企業の入口は、越境の「京東国際(JD Worldwide)」です。ジェトロ北京事務所の2021年3月時点の調査では、保証金が1万〜4万米ドル、販売手数料が0.5〜6%、年間サービス料が1,000米ドル、広告費が売上の0〜5%でした。中国の連帯保証会社と、米ドルで決済できる法人口座も必要とされています(天猫国際との比較は「日本企業の出店方法」の章にあります)。ジェトロの2023年の資料には、京東の中に日本産酒類の売り場「日本酒館」が設けられた例(JAPAN MALL事業)も載っています。
2〜4位 拼多多(Pinduoduo)
拼多多の2025年通期の総収入は4,318億元(10%増)でした。内訳は、オンラインマーケティングなどの収入が2,178億元(10%増)で50.4%、取引サービス収入が2,141億元(9%増)で49.6%です(拼多多の決算発表)。決算発表には、GMVも利用者数も記載がありません。星図数据の2023年の推計では、総合ECの内訳で26.8%でした。
売上の全体が、広告と取引手数料の2種類の収入でできている点は、「モール依存のリスク」の章で取り上げます。出店者が払う費用の総額に近い数字だからです。
日本企業向けの越境出店窓口は、公開されている情報が限られます。拼多多への出店を考える場合は、運営代行会社などを通じて、現行の条件を個別に確認してください。
2〜4位 抖音電商(Douyin EC)
抖音電商は、動画やライブ配信を見て、そのまま買う型のECです。バイトダンスは売上もGMVも開示していません。星図数据の2023年の推計では、ライブコマースは中国EC全体のGMVの23.1%を占め、そのうち約5割が抖音電商でした。
2024年の数字は報道ベースです。36Kr Japanは2025年2月、抖音電商の2024年のGMVを約3.5兆元(前年比30%増)と報じました(36Kr Japan)。36Krが入手した情報で、抖音側に確認を求めたものの、記事の時点で回答はありませんでした。内訳は、棚型EC(商品を一覧から探して買う、従来の型)が4割、ブランドのライブコマースが3割、インフルエンサーのライブコマースが3割とされています。同じ記事は、抖音電商の幹部が社内会議で「2024年に業界3位になった」と述べたとも伝えています。
日本企業の入口は「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」です。36Kr Japanの2023年の記事では、電通グループが日本のビジネスパートナーとされ、日本ブランドの店舗数は2021年11月から2022年11月で3.3倍になったと、事業の日本責任者が説明しています。2025年2月の記事で、同じ責任者は、日本ブランドが中国向けの越境ECで最大のシェアを持つと述べました。いずれも事業者側の発言で、第三者による検証ではありません。
動画やライブ配信で商品を見せる運用が前提です。配信する人の手配や、中国語での対応を、日本側でどう用意するかが検討の中心になります。
5位 快手(Kuaishou)
快手は、決算でECのGMVを公表している点が特徴です。2025年通期のEC GMVは1兆5,981億元で、前年より15.0%増えました。快手アプリの平均月間利用者は7億2,460万人(2.1%増)、平均日間利用者は4億1,020万人です(快手の決算発表)。星図数据の2023年の推計では、ライブコマースの区分で抖音電商に次ぐ2位でした。
GMVの公表値があるため、順位の根拠は明確です。報道ベースの抖音電商(2024年、約3.5兆元)と比べると、快手の1兆5,981億元は半分以下で、5位に置きました。年が異なる数字の比較なので、おおまかな目安です。日本企業向けの出店窓口は、公開されている情報が限られるため、運営代行会社に現行の条件を確認してください。
6位 唯品会(Vipshop)
唯品会は、ブランド品のセールを主力とするモールです。2025年通期のGMVは2,135億元(2.0%増)、アクティブ顧客は8,480万人(前年は8,470万人)でした。売上は1,059億元で、前年の1,084億元を下回っています(唯品会の決算発表)。
GMVは小幅に増え、顧客数はほぼ横ばいで、売上は前年を下回りました。GMVの規模は、快手の1兆5,981億元の約13%です。日本企業向けの出店窓口は、公開されている情報が限られます。
順位なし 小紅書(RED/Xiaohongshu)
小紅書は、商品の使用感などの投稿を見て、商品を知るSNS型のサービスです。36Kr Japanが2025年9月に報じた数字では、月間利用者は約3億人で、2025年の純利益の予測は30億ドルでした。いずれもブルームバーグの報道を引いたもので、出所は示されておらず、会社の公式発表ではありません。ECのGMVは公表されていないため、規模の順位はつけていません。
利用者の規模が大きいため、順位とは別に早見表へ載せました。日本企業向けの出店窓口は、公開されている情報が限られます。
ランキングの数字の読み方:売上高・GMV・シェアの違い
売上高は、取引の大きさではない
アリババ、京東、拼多多の決算で示されている「売上」は、中身が大きく異なります。
| 運営会社 | 売上の中身(直近の通期) | GMVの開示 |
|---|---|---|
| アリババ(中国EC事業) | ECの部分4,494億元のうち、顧客管理収入(出店者が払う広告費・手数料など)が3,439億元(76.5%) | なし |
| 京東 | 純収益1兆3,091億元のうち、商品販売収入が1兆238億元(78.2%) | 決算発表に記載なし |
| 拼多多 | 総収入4,318億元のうち、広告などが50.4%、取引サービス(手数料)が49.6% | なし |
| 快手 | 全社の売上1,428億元 | EC GMV 1兆5,981億元 |
| 唯品会 | 売上1,059億元 | GMV 2,135億元 |
京東の売上1兆3,091億元は、拼多多の4,318億元の約3倍です。ところが、京東の売上の約8割は、自社が仕入れて売った商品の代金。拼多多の売上は広告などの収入と取引手数料の2本で、いずれも出店者が払う費用にあたります。売上の大きさを比べても、どちらのモールで多く売れているかはわかりません。
出店者にとっては、反対の見方ができます。拼多多の売上4,318億元は、出店者が1年間に払った広告費と手数料の総額に近い数字です。アリババの顧客管理収入3,439億元も同じ性質で、モールは売上が伸びても、出店者が払い続ける費用が収入源になっています。「モール依存のリスク」の章で、この構造が出店者の利益にどう響くかを整理します。
第三者の推計は、定義がそろっていない
星図数据の2023年の推計は、中国EC全体のGMVを4つの型(総合EC 73.3%、ライブコマース 23.1%、即時配達 2.2%、共同購入 1.4%)に分けています。天猫46.0%、京東27.2%、拼多多26.8%という数字は、このうち総合ECに属する3社の内訳です。合計が100%になるので、抖音電商など、ほかのモールを含めた市場全体のシェアではありません。
36Krの2024年の報道(抖音電商の約3.5兆元)は、別の出所の数字です。返品を含むかどうかなどの定義も示されていません。2023年の内訳と2024年の金額は、同じ表に並べて割合を計算できません。
数字をそろえるなら、見るべきこと
日本企業が出店先を選ぶうえで、モールの規模そのものより、次の3点のほうが判断に直結します。
- 自社の商品カテゴリーで、そのモールに売り場があるか:京東は家電と日用品が中心、唯品会はブランド品のセールが中心、というように、売り場の得意分野が異なります
- 入口の条件:出店者の資格、保証金、手数料。「日本企業の出店方法」の章に天猫国際と京東国際の数字を載せました
- 出店後に払い続ける費用の割合:広告費と手数料。「日本企業の出店方法」の章の試算と、「モール依存のリスク」の章の確認項目で扱います
日本企業の出店方法:6つの方式と、天猫国際(Tmall Global)の費用
出店方式の比較:6通り
日本企業が中国のECに入る方法は、大きく6つに分かれます。
| 方式 | 中国法人 | 主な費用 | 顧客データ | 向くケース |
|---|---|---|---|---|
| ① 越境モール(天猫国際・京東国際など) | 不要(海外法人で出店可。資格はモールごと) | 保証金、年間サービス料、販売手数料、広告費 | モール側に蓄積 | 中国での知名度がなく、まず販路を試す |
| ② 国内向けモール(天猫・京東など) | 必要 | 法人設立、現地の人件費、国内物流 | モール側に蓄積 | 中国に拠点を置いて本格的に展開する |
| ③ 運営代行・販売代行に委託 | 不要(代行会社が窓口) | 月額費用や売上に応じた手数料(会社で異なる) | 契約で決まる | 社内に中国語の運営担当がいない |
| ④ 自社の越境ECサイト | 不要 | サイト構築、決済、物流・通関の手配 | 自社に蓄積 | ブランドを育てる、リピート購入を増やす |
| ⑤ 転送・代理購入サービスを自社サイトに導入 | 不要 | サービスの利用料 | 自社サイトの購入データは残る | 低い負担で需要を試す |
| ⑥ 卸・代理店 | 不要 | 卸価格での利益の縮小 | 取得しにくい | 運営の人員が確保できない |
①越境モールと②国内向けモールの違いは、中国に法人を置くかどうかです。天猫国際はジェトロ北京事務所の調査で「海外、または香港・マカオ・台湾で登記された会社」が出店資格とされており、中国法人は必要ありません。天猫と京東の国内向けの売り場に出す場合は中国法人が前提になり、現地の人員や、国内の物流・返品の対応も自社で整える必要があります。
③の運営代行・販売代行には、①の越境モールへの出店を代行する形があり、商品ページの作成、中国語での顧客対応、広告の運用を任せられます。契約の前には、費用の内訳(月額と売上連動の割合)、運営の範囲、顧客データの帰属、解約の条件を確認してください。
⑤の転送・代理購入サービスは、日本の自社サイトに、海外の購入者向けの転送・代理購入サービスを導入する方法です。中国の購入者は日本国内の転送先に商品を送り、国際配送はサービス側が行います。自社サイトに追加する形で始められ、中国での反応を試す最初の一歩として検討できます。
天猫国際(Tmall Global):天猫との違いと費用の目安
天猫国際は、海外の事業者が中国本土に法人を置かずに出店できる、アリババの越境モールです。商品は、日本から直送するか、中国国内の保税倉庫に置いて出荷します。ジェトロ北京事務所の調査(2021年3月時点)には、天猫国際と京東国際の費用が次のように載っています。
| 項目 | 天猫国際 | 京東国際 |
|---|---|---|
| 保証金 | 5万〜30万元 | 1万〜4万米ドル |
| 販売手数料 | 売上の0.5〜5% | 売上の0.5〜6% |
| 年間サービス料 | 3万元または6万元 | 1,000米ドル |
| 広告費 | 記載なし | 売上の0〜5%(四半期ごとに精算) |
| その他 | 海外または香港・マカオ・台湾で登記された会社。代理店はブランドの授権が必要 | ブランド旗艦店特別保証金が5,000〜3万米ドル。中国の連帯保証会社と、米ドル決済のできる法人口座が必要 |
金額に幅があるのは、商品カテゴリーや店舗の種類で変わるためです。化粧品、医療機器、サプリメント、ベビー用品などは、許可や書類が必要になる場合があります。商標については、天猫国際は商標の登録証、京東国際は日本の商標登録証が必要とされています。出店前に、中国での商標の出願状況の確認と、自社の商標が第三者に勝手に出願されていないかの確認が欠かせません。
この表の金額は2021年3月時点のものです。保証金、年間サービス料、手数料は、カテゴリーや時期で変わりうるため、見積もりの前提にせず、出店の相談先(モールの窓口、Tmallジャパン、運営代行会社)で現行の数字を確認してください。
試算:売上が小さいほど、固定費の割合は大きくなる
ジェトロ調査の天猫国際の数字(2021年3月時点)で、年間売上が120万元(月10万元)の店を試算します。広告費、物流費、決済手数料、運営代行の費用は含みません。
| 項目 | 低い場合 | 高い場合 |
|---|---|---|
| 販売手数料(0.5〜5%) | 6,000元 | 6万元 |
| 年間サービス料 | 3万元 | 6万元 |
| 合計 | 3.6万元(売上の3.0%) | 12万元(売上の10.0%) |
| 保証金(別枠で預ける) | 5万元 | 30万元 |
年間売上が1,200万元(月100万元)になると、同じ年間サービス料は、売上の0.25〜0.5%に下がります。月10万元の段階では年間サービス料だけで売上の2.5〜5%になるため、小さく始めた店舗は、固定費の割合が高くなります。小さく始める期間は、この割合を前提に採算の計画を立ててください。
保証金は、預ける額なので損益に入る費用ではありませんが、資金が拘束されます。5万〜30万元の幅は、カテゴリーや店舗の種類で決まるため、最初の問い合わせで確認してください。
京東国際で同じ試算をする場合は、販売手数料(0.5〜6%)に広告費(0〜5%)が加わるため、変動費だけで売上の0.5〜11%の幅になります。年間サービス料は米ドル建て(1,000米ドル)なので、為替レートで元や円に換算して比べてください。
中国向けに売るときのルール:上限・税・商品リスト・物流・自社サイトの注意点
越境EC小売輸入の枠:1回5,000元、年間26,000元
中国の消費者が、海外の事業者から越境ECで買う場合の枠は、財政部・海関総署・税務総局の通知(財関税〔2018〕49号、2018年11月29日付、2019年1月1日施行)で定められています。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1回の取引の上限 | 5,000元 | 財関税〔2018〕49号 |
| 年間の上限 | 1人あたり26,000元 | 同上 |
| 関税 | 上限内は0% | 財関税〔2016〕18号(報道、ジェトロ資料) |
| 増値税・消費税 | 法定税額の70% | 同上 |
| 対象の商品 | 商品リスト(ポジティブリスト)にある品目のみ。2018年の改定で63税目が加わり、計1,321税目 | 報道 |
| 再販売 | 個人使用の商品で、中国国内での再販売は禁止 | 財関税〔2018〕49号 |
| 1回の上限を超える場合 | 1回5,000元を超えても、年間の枠内で、注文が商品1点のみなら越境ECで輸入できる。関税・増値税・消費税は全額かかり、取引額は年間の枠に加算される | 同上 |
| 年間の上限を超えた場合 | 一般貿易として管理される | 同上 |
商品リストは、その後も調整されます。2018年の改定時点の数字は載せていますが、販売する商品が現行のリストに載っているかは、出品前に必ず最新の版で確認してください。
年間の枠は、定期購入やリピートに影響する
1人あたり年間26,000元という上限は、買う側の枠です。売る側にとっては、同じ顧客に何回売れるかの上限になります。1回の購入額ごとに、年間で買える回数の上限を計算すると次のとおりです。
| 1回の購入額 | 年間で買える回数の上限 | 月1回で12か月続けられるか |
|---|---|---|
| 1,000元 | 26回 | 続けられる(年12,000元) |
| 2,000元 | 13回 | 続けられる(年24,000元) |
| 3,000元 | 8回 | 9回目から枠を超える(12回で36,000元) |
| 5,000元 | 5回 | 6回目から枠を超える(12回で60,000元) |
月に1回3,000元の商品を定期的に届ける設計だと、9回目の購入から、越境ECの枠を使えなくなります。化粧品やサプリメントのように、継続して買ってもらうことで利益が出る商材は、1回あたりの単価と、年間の合計額を先に設計してください。年間の枠は、買い手が1年間に越境ECで買った額の累計で管理されます。他のモールで買った分を含めて数えるかどうかは、通関・物流の窓口で確認してください。
商品ごとの規制と、商標
化粧品、医療機器、サプリメント、ベビー用品は、許可や書類が必要になる場合があります(ジェトロ北京事務所、2021年3月)。化粧品の成分表示の誤りで、商品の回収と返金に追い込まれた失敗の例が、越境ECの事例の記事にあります。
商標は、出店の前に確認しておきたい項目です。ジェトロの同じ調査は、日本の会社の商標を中国の第三者が先に出願する「冒認出願」の被害を挙げ、中国での登録を勧めています。模倣品の削除申請の仕組みも、モールごとに用意されています。登録に使う画面は、中国語版だと中国の携帯電話番号が必須。英語版なら、メールアドレスで認証できます。
物流:保税区モデルと直送モデル
中国向けの越境ECには、商品の置き場所の違いで、2つのモデルがあります(ジェトロの2023年の資料)。
| 項目 | 保税区モデル | 直送モデル |
|---|---|---|
| 在庫の置き場所 | 注文の前に、中国国内の保税倉庫へ送っておく | 日本など海外に置き、注文ごとに送る |
| 注文後の流れ | 保税倉庫から、中国国内の配送で届ける | 国際配送で届ける |
| 費用の傾向 | 事前の輸送費と保管費がかかる | 注文ごとの国際配送料がかかる |
| 在庫のリスク | 売れ残りを中国側で抱える | 日本側の在庫で調整できる |
| 向くケース | 売れ筋が決まり、注文数が見込める | 注文数が読めない、テスト販売の段階 |
届くまでの日数や費用は、物流会社と商品によって変わります。この表は一般的な違いで、実際の数字は物流会社の見積もりで確認してください。注文数が読めない段階では直送モデル、注文が安定してから保税区モデルを検討する、という順序は、在庫リスクの面で無理がありません。
自社サイトを中国向けに公開するとき
モールに出店する場合は不要ですが、自社サイトを中国向けに運営する場合は、次の2点が論点になります。
ICP登録:中国国内にサイトを開設する場合は、ICP登録(サイトの管理者を国に届け出る制度)が必要です。決済機能のあるECサイトは、審査のある「商用ICPライセンス」が必要で、外資系企業は取得が難しいとされています。モールへの出店ではどちらも不要です。以上はソフトバンクの2019年の解説に基づくため、制度が変わっている可能性があります。実際に手続きをする場合は、管轄の窓口で最新の条件を確認してください。
決済:中国の購入者は、Alipay(支付宝)かWeChat Payで払うのが一般的です。日本の決済代行のSBペイメントサービスは、中国向けの越境ECに向けたWeChat Payを提供しており、売上の入金は日本円です。言語や翻訳の注意は、越境ECサイトの言語対応の記事に整理しています。
自社サイトから個人宛てに送る場合の税の扱いは、送り方(国際郵便、国際宅配、保税倉庫)によって変わります。この章で紹介した枠と優遇がそのまま使えるかは、通関業者・物流会社に、商品と送り方を伝えて確認してください。
モール依存のリスク:手数料・顧客データ・ブランド管理
手数料:売上が伸びても、払い続ける費用が収入源
「ランキングの数字の読み方」の章で見たように、拼多多の売上は広告費と取引手数料だけでできており、アリババの顧客管理収入はECの部分の約77%を占めます。京東のマーケットプレイスと広告の収入も、2025年に18.9%増えました。モールの収入が伸びている背景には、出店者が払う費用が含まれています。
出店者が払う費用は、販売手数料、広告費、年間サービス料に分かれます。京東国際は、2021年3月時点のジェトロ調査で、手数料に広告費が加わるため、変動費だけで売上の最大11%(手数料6%と広告費5%)でした。販売額が増えても、費用の割合は下がるとは限りません。広告費を増やして売上を維持する運営になると、利益が残りにくくなります。
確認する項目は、次のとおりです。
- 販売手数料の率と、カテゴリーごとの違い
- 広告費として売上の何%を見込むか
- 大型セール(6月18日の「618」、11月11日の「双11」)への参加費用と、値引きの条件
- 返品の送料と、返品された在庫の扱い
顧客データ:買い手は、モールの会員
モールで買った人は、モールの会員です。出店者が連絡先などの顧客情報をどこまで使えるかは、各モールの規約で決まります。再購入のお知らせや、新商品の案内を自社から届けられない場合、広告費を払ってモール内で再びお客様に届くことになります。
リピートが利益の源泉になる商材(化粧品、サプリメント、食品など)では、顧客データを自社に持てるかどうかが、長期の収益に直結します。モールで商品を知ってもらい、自社サイトで2回目以降を買ってもらう設計にするなら、規約で許されているお客様への案内の範囲を、出店前に確認してください。
ブランド管理:価格、見せ方、模倣品
ブランドの世界観を伝えたい場合は、商品ページの構成の自由度、セールの値引き条件、価格の設定が、モールの規約にしばられます。確認する項目は次のとおりです。
- セール参加の条件(値引き率、在庫の事前確保)はあるか
- 商品ページやブランドの紹介の見せ方は、どこまで自由か
- 模倣品や無断出品の削除申請の窓口はあるか。天猫国際と京東国際には、権利者が直接、または代理人を通じて使える仕組みがあります
- 規約や手数料が変更されたとき、事前の通知と猶予期間はあるか
モール側のルールは、規制や競争の環境で変わります。2021年4月、国家市場監督管理総局は、アリババが出店者に他のモールとの取引を禁じる「二者択一」を強いたとして、独占的行為の処分を出しました。アリババは3年連続の是正報告書の提出を命じられ、2024年に同局から「良好な成果」と評価されています(36Kr Japan)。モールの規約は、出店者の判断だけでは動かせない外部の要因でも変わるため、1つのモールだけに売上を預けない設計が必要です。
モールと自社、どちらを選ぶか
| 状況 | 向く方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 中国での知名度がなく、反応を試したい | 越境モール、または転送・代理購入サービス | モールには集客の土台があり、自社サイトを立ち上げる前に反応を見られる |
| 売れる商品が見え、リピートしてもらいたい | 自社の越境ECサイトを追加 | 顧客データを自社に蓄積できる |
| 月商が小さく、固定費の割合が気になる | 転送・代理購入サービスから | モールの保証金や年間サービス料がかからない |
| 年間26,000元の枠を超えやすい(高単価・定期購入) | 単価設計の見直し、または国内向けモールや現地法人での販売 | 枠の外の売り方も含めて設計が必要 |
| 社内に中国語の運営担当がいない | 運営代行に委託 | 顧客対応と広告運用を任せられる |
モールと自社は、どちらかを選ぶ関係ではありません。モールで認知を広げ、売れ筋とお客様の声を確かめたうえで、自社サイトでリピートを受ける組み合わせが、費用とデータの両方を管理しやすい形です。
自社の越境ECサイトという選択肢:W2 Commerce Asia
自社の越境ECサイトは、顧客データ、価格、ブランドの見せ方を自社で決められる代わりに、集客、決済、物流・通関の手配を自分で組む必要があります。中国向けは、「中国向けに売るときのルール」の章で見たとおり、サイトの公開方法(ICP)、決済、通関・物流の条件を、国ごとに設計する作業が加わります。
W2は、コマースプラットフォーム「W2 Commerce」で、BtoC、定期販売、BtoB、海外ECに対応しています。このうち海外ECの製品が「W2 Commerce Asia」。アジア・オセアニアへの進出に向けて、越境ECや現地ECの立ち上げと、段階的な海外展開を支えます。国内の通販には、BtoC向けのW2 Commerce Unifiedと、サブスク・定期通販向けのW2 Commerce Repeatがあります。
W2 Commerce Asiaが支援する内容
W2 Commerce Asiaの紹介ページには、次の支援内容が載っています。
- 現地決済への対応、現地の物流拠点の運用と物流の手配
- 現地ECモールでのテスト販売、共同ポップアップストア
- 現地法人の設立、現地でのカスタマーサポート
- OMO、SNS・広告、CRM
テスト運用の期間は、商品の登録や翻訳をW2が担当します。現地のECは、W2のECカートシステムで構築。モールのテスト販売で反応を見てから自社のECサイトに移る、という段階的な進め方も選べます。
導入事例:コーセー台湾、ジンズ、TSI
紹介ページに載っている導入事例は次の3社です(ジンズ様は掲載のリンク先が台湾向けのサイトです)。
| 企業 | 取り組み(ページの記載) |
|---|---|
| 株式会社コーセー台湾 様 | 「Maison KOSÉ 南港店」(アジア初出店)を起点に、現地と連携したブランド体験を展開 |
| 株式会社ジンズ 様 | 現地市場向けのオリジナルコンテンツ、アップセルを促すクーポンの設計、キャラクターIPの活用、眼鏡とファッションを組み合わせた提案 |
| 株式会社TSI 様 | 「mix.tokyo」の台湾版ECを構築。現地の顧客ニーズや商習慣に合わせたコンテンツ、決済、CRMの基盤を整え、分散していたブランドサイトを集約 |
3社に共通するのは、現地向けにコンテンツや販促を設計し、自社のECとして運営している点です。TSI様は、決済とCRMの基盤まで整えています。モールに出店した場合は、モール側に残るデータや規約の制約を受けますが、自社のECであれば、その部分を自社で設計できます。なお、これらの事例は台湾での取り組みで、成果の数字は紹介ページに載っていません。
中国本土は、サイトの公開方法、決済、通関・物流の条件が台湾と異なります。W2 Commerce Asiaを中国本土向けに使えるか、どこまで対応できるかは、W2に個別にご確認ください。越境ECの成功事例は越境ECの市場規模と成功事例9選にまとめています。
中国EC参入の進め方と、始めたあとの確認方法
手順1:売る商品が、中国向けに売れるか確認する
商品がポジティブリストに載っているか、許可や書類の必要なカテゴリー(化粧品、サプリメントなど)かを確認します。中国での商標の出願状況も、この段階で確認します。
手順2:入口を1〜2つに絞る
「日本企業の出店方法」の章で紹介した6方式から、自社の状況に合うものを選びます。中国法人を置かず、小さく試すなら、①越境モール、③運営代行、⑤転送・代理購入サービスが候補です。
大型セールの双11(11月11日)や618(6月18日)に間に合わせたい場合は、審査と商品登録に必要な日数を、最初の問い合わせで確認してください。
手順3:採算を試算する
試算の式は次のとおりです。条件がそろっていない見積もりは、並べて比べられません。
| 項目 | 計算のしかた |
|---|---|
| 売上 | 月の販売数 × 販売価格 |
| 変動費 | 売上 × (販売手数料率 + 広告費率 + 決済手数料率)+ 物流費 + 返品費用 |
| 固定費 | 年間サービス料 ÷ 12 + 運営代行の月額費用 |
| 預ける資金 | 保証金 |
| 月の利益 | 売上 − 変動費 − 固定費 |
見積もりを複数の会社から取る場合は、同じ月間販売数と、同じ商品価格で試算してもらうと、比べやすくなります。
手順4:小さく始める
最初の半年は、1つのモールで、売れ筋の数商品に絞って始めます。この間の目的は、利益を出すことより、売れる商品、広告費の水準、返品の理由を知ることです。
手順5:始めたあとに確認する
| 確認する項目 | 見る場所 | 見る理由 |
|---|---|---|
| 売上に対する広告費の割合 | モールの管理画面、運営代行の月次報告 | 試算で置いた広告費率と合っているか |
| 返品率と返品の理由 | モールの管理画面 | 商品説明や中国語表記の問題を見つける |
| 同じお客様の再購入の有無 | モールの管理画面で見られる範囲 | 自社サイトへの誘導を始める時期を判断する |
| お客様1人あたりの年間の購入額 | 販売データ | 年間26,000元の枠に近づいていないか |
| モールの規約や手数料の変更 | モールの通知 | 試算を更新する |
確認の結果をもとに、「モールで続ける」「自社サイトを追加する」「撤退する」のいずれかを、数字で決めます。
中国ECに関するよくある質問
Q. 天猫と天猫国際は、何が違いますか?
天猫は、中国国内向けのモールで、中国法人での出店が前提です。天猫国際は、海外の事業者が中国本土に法人を置かずに出店できる越境モールです。ジェトロ北京事務所の2021年3月時点の調査では、天猫国際の出店資格は「海外、または香港・マカオ・台湾で登記された会社」で、代理店はブランドの授権が必要でした。商品は、日本から直送するか、保税倉庫から出荷します。費用の目安は、「日本企業の出店方法」の章の表をご覧ください。
Q. 中国法人がなくても、中国のECで売れますか?
売れます。天猫国際や京東国際のような越境モール、運営代行、自社の越境ECサイト、転送・代理購入サービス、卸は、中国法人なしで始められます。中国法人が必要になるのは、天猫や京東の国内向けの売り場に出す場合です。ただし、自社サイトを中国国内で開設する場合はICP登録が必要になります(「中国向けに売るときのルール」の章で説明しています)。
Q. 中国では、日本の商品は売れていますか?
経済産業省の調査では、2024年に中国の消費者が日本の事業者から越境ECで買った額は2兆6,372億円で、2023年の約2.43兆円から約8.5%増えました。米国からの3兆1,397億円に次ぐ規模です。自社の商品カテゴリーの売れ行きは、出店後にモールの管理画面のデータで確認するのが確実です。
Q. 中国語のサイトは必要ですか?
中国向けに売る場合、商品ページは中国語(簡体字)が基本です。モールに出店する場合も、顧客対応は中国語で行います。翻訳の方法と注意点は、越境ECサイトの言語対応の記事で整理しています。
Q. 越境ECの基本や、成功事例を知りたいのですが。
越境ECの定義、メリット・デメリット、始め方は越境ECとは?で、成功事例は越境ECの市場規模と成功事例9選で扱っています。
Q. 双11や618には、いつから準備すればよいですか?
審査、商品登録、物流の手配には期間が必要です。最初の問い合わせで、審査から出店までの日数と、大型セールへの参加条件を確認し、セール日から逆算して申込の時期を決めてください。直前の申込では間に合わないこともあるため、次の大型セールを目標にする判断もあります。
Q. 運営代行会社は、どう選べばよいですか?
「日本企業の出店方法」の章の③(運営代行・販売代行)で触れたとおり、費用の内訳(月額と売上連動の割合)、運営の範囲、顧客データの帰属、解約の条件を確認します。見積もりは、同じ月間販売数と商品価格で試算してもらうと比べられます。
まとめ:次にとる行動
中国のECは、2025年のネット小売額が15兆9,722億元で、日本から中国への越境EC購入額も2兆6,372億円(2024年)と、大きな市場です。主要7モールは、天猫・淘宝(アリババ)が首位、京東・拼多多・抖音電商が続き、快手、唯品会、小紅書が並びます。ただし、アリババ・京東・拼多多はGMVを決算で示しておらず、ランキングの数字は、公式決算、第三者の推計、報道のどれなのかで読み方が変わります。
日本企業の入口は、越境モール(天猫国際、京東国際)、国内向けモール、運営代行、自社の越境ECサイト、転送・代理購入サービス、卸の6通りです。越境ECには、1回5,000元・年間26,000元の枠があり、月に1回3,000元を買う定期購入は9回目から枠を超えます。モールの収入は、出店者が払う広告費と手数料で成り立っているため、手数料、顧客データ、ブランド管理の3点は、出店前に確認してください。
次にとる行動は、次の3つです。
- 売る商品が、ポジティブリストと許可の対象になるか確認する:中国での商標の出願状況も、同時に確認する
- 6つの出店方式から、入口を1〜2つに絞って、同じ条件で見積もりを取る:同じ月間販売数と商品価格で、手数料・広告費・年間サービス料を試算してもらう
- 自社の越境ECサイトを持つ場合は、W2に相談する:中国本土への対応範囲は個別の確認が必要
W2 Commerce Asiaの紹介ページでは、導入事例と支援内容をご覧いただけます。越境ECの基本は越境ECとは?、言語対応は越境ECサイトの言語対応の記事、事例は越境ECの市場規模と成功事例9選をご覧ください。
この記事の監修者
神戸大学在学中にEC事業を立ち上げ、自社ECサイトの構築から販売戦略の立案・実行、広告運用、物流手配に至るまで、EC運営の全工程をハンズオンで経験。売上を大きく伸ばしたのち、事業譲渡を実現。
大学卒業後はW2株式会社に新卒入社し、現在は、ECプラットフォーム事業とインテグレーション事業のマーケティング戦略の統括・推進を担う。一貫してEC領域に携わり、スタートアップから大手企業まで、あらゆるフェーズのEC支援に精通している。





























