「楽天市場、Amazon、自社サイト、それぞれの管理画面を行き来しているだけで一日が終わってしまう」——複数のチャネルでEC事業を展開している担当者であれば、一度はこうした状況に心当たりがあるのではないでしょうか。
EC一元管理とは、複数のECモールや自社サイトで発生する受注・在庫・商品・顧客といった情報を、一つの管理画面でまとめて扱えるようにする取り組みです。販路が増えるほど便利になる一方、チャネルごとに管理が分散していると、転記ミスや在庫の把握違いといったトラブルが起こりやすくなります。
本記事では、EC一元管理で何が一元化できるのか、OMSとの関係、一元管理を実現する方法の選び方、そして導入によって得られる効果までを解説します。
なお、在庫情報に絞った一元管理について詳しく知りたい方は「ECサイトの在庫管理システムとは?利用メリットやおすすめ10社を徹底解説!」を、一元管理を実現する代表的なシステムである「OMS」の詳しい機能について知りたい方は「OMS(注文管理システム)とは?機能や導入のメリット・デメリットについて解説」をあわせてご覧ください。
この記事でわかること
複数のECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなど)や自社サイトで発生する受注・在庫・商品・顧客といった情報を、一つの管理画面でまとめて扱えるようにする取り組みです。チャネルごとに管理画面を行き来する手間をなくし、転記ミスや在庫の把握違いといったトラブルを防ぐことを目的とします。
大きく4つの情報を一元化できます。各チャネルの注文情報をまとめる「受注」、売れた分を全チャネルで自動反映する「在庫」、商品情報の変更を一括反映する「商品」、購入履歴を統合してサポートの質を高める「顧客」です。すべてを一度に一元化する必要はなく、自社の課題に応じて優先順位をつけて進められます。
代表的な方法は3つあります。受注・在庫・商品・顧客をまとめて扱える「EC一元管理システム(OMS)」の導入、在庫管理に絞ったシステムの導入、そして基幹システム(ERP)との連携です。自社が抱える課題の範囲や、将来的な事業規模に応じて、適した方法を選ぶことが重要です。
EC一元管理とは
EC一元管理とは、複数のECモールや自社サイトで発生する受注・在庫・商品・顧客といった情報を、一つの管理画面でまとめて扱えるようにする取り組みです。
EC事業者は、販路を広げるために自社サイトに加えて、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングといった複数のECモールへ出店したり、実店舗やSNSでの販売を組み合わせたりするケースが少なくありません。販路が増えること自体は事業拡大のチャンスですが、その一方で、チャネルごとに商品登録・受注確認・在庫更新・出荷指示といった作業がバラバラに発生し、管理が煩雑になりやすいという課題が生まれます。
例えば、ECサイトごとに商品情報を個別に更新していると、「発送する商品を間違えた」「在庫切れに気づかず注文を受けてしまった」「注文確認が遅れて納期遅延につながった」といったミスが起こりやすくなります。EC一元管理は、こうした課題を解消し、複数チャネルにまたがる情報を一箇所で正確に把握できる状態をつくるための考え方です。
EC一元管理で一元化できる4つの情報
EC一元管理と一口にいっても、実際に一元化できる情報は複数あります。代表的な4つを整理します。
| 情報 | 一元化する内容 | 一元化しないと起こりやすい問題 |
|---|---|---|
| 受注 | 各チャネルの注文情報・ステータスをまとめて管理 | 対応漏れ、確認作業の重複、出荷遅延 |
| 在庫 | 商品が売れた分を全チャネルの在庫数へ自動反映 | 売り越し(在庫切れなのに受注してしまう)、機会損失 |
| 商品 | 商品名・価格・説明文などの登録・変更を一括反映 | チャネルごとの表記ゆれ、価格改定の反映漏れ |
| 顧客 | 購入履歴・問い合わせ履歴をチャネル横断で統合 | 顧客対応の質のばらつき、リピート施策の機会損失 |
受注の一元化
複数のチャネルで受けた注文を、まとめて一つの画面で確認・管理できるようにします。注文ステータス(入金待ち、出荷準備中など)を横断的に把握できるため、対応漏れや二重対応といったミスを防ぎやすくなります。
在庫の一元化
いずれかのチャネルで商品が売れた際、他のチャネルの在庫数にも自動で反映させる仕組みです。在庫が自動で最新の状態に更新されることで、「注文を受けたのに在庫がなかった」という売り越しのリスクを大きく減らせます。
商品情報の一元化
商品名・価格・説明文・画像といった商品データを一箇所で登録・変更し、すべてのチャネルへ一括反映できるようにします。チャネルごとに個別更新していた作業がまとめられることで、更新漏れや表記の不一致を防げます。
顧客情報の一元化
チャネルをまたいだ購入履歴や問い合わせ履歴を統合し、顧客一人ひとりの状況を正確に把握できるようにします。カスタマーサポートの質を高められるだけでなく、チャネル横断でのリピート施策・CRM施策の土台にもなります。
これらの情報は、必ずしもすべてを同時に一元化する必要はありません。自社が最も課題を感じている情報(在庫の把握違いが多いのか、受注対応が追いつかないのか)から優先順位をつけて取り組むことが、現実的な進め方です。
EC一元管理とOMSの関係
EC一元管理について調べていると、「OMS(Order Management System:注文管理システム)」という言葉もあわせて目にすることが多いはずです。両者は、実務上ほぼ同じ対象を指す言葉として使われています。
OMSは、複数のECモールや自社サイトの受注・商品・在庫データを統合して管理するシステムであり、「ECサイト一元管理システム」と呼ばれることもあります。つまり、EC一元管理という「取り組み・考え方」を実現するための代表的な「システムの種類」がOMSである、という関係で捉えると整理しやすくなります。
一般的な整理では、EC一元管理(OMS)は主にWeb上の店舗運営、つまり複数のECモール・自社サイトの効率化に特化したシステムを指すことが多く、実店舗のPOSデータや仕入れ、会計まで含めた企業全体の情報を一元管理する「基幹システム(ERP)」とは、扱う範囲の広さが異なります。EC一元管理はあくまで「EC運営」というスコープに閉じた取り組みであり、企業全体の情報を統合したい場合は、ERPとの連携という、より大きな枠組みで検討する必要があります。
OMSが具体的にどのような機能を持ち、導入することでどのようなメリット・デメリットがあるのかについては「OMS(注文管理システム)とは?機能や導入のメリット・デメリットについて解説」で詳しく解説しています。
EC一元管理を実現する3つのアプローチ
EC一元管理を実現する方法は一つではありません。自社が抱える課題の範囲や、事業規模に応じて、以下の3つのアプローチから選ぶことになります。
| アプローチ | 対象範囲 | 向いている事業者 |
|---|---|---|
| EC一元管理システム(OMS)の導入 | 受注・在庫・商品・(顧客) | 複数モール・複数チャネルで販売しており、包括的に効率化したい事業者 |
| 在庫管理システム単体の導入 | 在庫のみ | まずは在庫の把握違いという課題にピンポイントで対応したい事業者 |
| 基幹システム(ERP)との連携 | EC+実店舗+仕入れ+会計など全社 | 実店舗や卸売など、EC以外の業務も含めて全社的に統合管理したい事業者 |
EC一元管理システム(OMS)の導入
受注・在庫・商品情報を包括的に一元化したい場合は、OMSと呼ばれるEC一元管理システムの導入が代表的な選択肢です。複数のモール・自社サイトを運営しており、幅広い業務をまとめて効率化したい事業者に向いています。
在庫管理システム単体の導入
抱えている課題が「在庫の把握違い」に集中している場合は、在庫管理に特化したシステムをまず導入するというアプローチも現実的です。受注や商品情報の一元化までは必要とせず、スモールスタートしたい事業者に向いています。詳しくは「ECサイトの在庫管理システムとは」で解説しています。
基幹システム(ERP)との連携
実店舗のPOSデータや、卸売、仕入れ、会計まで含めた企業全体の情報を一元管理したい場合は、EC単体の一元管理システムではなく、基幹システム(ERP)との連携という、より大きな枠組みでの検討が必要になります。EC事業がまだ企業活動の一部門にとどまらず、経営全体の意思決定に直結する規模まで成長している事業者に向いたアプローチです。
EC一元管理がもたらす効果
EC一元管理を導入することで得られる代表的な効果を紹介します。
作業コストの削減
複数のチャネルで個別に行っていた確認・更新作業を一箇所に集約できるため、作業にかかる時間と、それに伴う人件費を削減できます。特に、取り扱いチャネル数が多い事業者ほど、この効果は大きくなります。
人的ミスの削減
チャネルごとに担当者が個別に情報を管理していると、情報伝達の行き違いや転記ミスが発生しやすくなります。一元管理システムを活用することで、こうした人的ミスを減らせます。
機会損失の防止
在庫情報がリアルタイムで全チャネルに反映されることで、「注文を受けたのに在庫がなかった」という売り越しによる機会損失を防げます。24時間365日、セールや繁忙期であっても在庫状況を正確に保てる点は、事業拡大を目指す事業者にとって大きな価値があります。
属人化の解消
特定の担当者しか各チャネルの状況を把握していない、という属人化した状態は、その担当者が不在の際に業務が滞るリスクを抱えています。情報を一元管理することで、誰が見ても同じ状況を把握できる体制を整えられます。
EC一元管理の進め方・選定ポイント
EC一元管理を進める際は、以下の流れとポイントを押さえておくとスムーズです。
- 現状の課題を洗い出す:受注対応の遅れ、在庫の把握違い、商品情報更新の手間など、どこに最も課題を感じているかを整理します。
- 一元化する範囲を決める:課題の内容に応じて、受注・在庫・商品・顧客のうち、まず何を一元化するかを決めます。
- アプローチを選ぶ:前章で紹介した3つのアプローチ(OMS導入・在庫管理システム単体・基幹システム連携)のうち、自社の課題範囲と事業規模に合ったものを選びます。
- 利用中のモール・カートとの連携可否を確認する:既に運営している楽天市場・Amazon・自社サイトなどと、検討中のシステムが連携できるかを必ず確認します。
- 将来の拡張性を確認する:事業拡大に伴い、扱うチャネル数や取引量が増えても対応できるかどうかも、選定時の重要なポイントです。
いきなりすべての情報を一元化しようとすると、導入の負荷が大きくなりがちです。まずは最も課題を感じている領域から着手し、段階的に範囲を広げていくことをおすすめします。
まとめ
EC一元管理とは、複数のECモールや自社サイトで発生する受注・在庫・商品・顧客といった情報を、一つの管理画面でまとめて扱えるようにする取り組みです。チャネルが増えるほど管理は煩雑になりやすく、作業コストの増大や人的ミス、機会損失につながりかねません。
一元化できる情報は受注・在庫・商品・顧客の4つに整理でき、実現する方法にはOMS(EC一元管理システム)の導入、在庫管理システム単体の導入、基幹システムとの連携という3つのアプローチがあります。自社が抱える課題の範囲と、将来の事業規模を踏まえて、適した方法を選ぶことが重要です。
在庫情報に絞った一元管理を詳しく知りたい方は「ECサイトの在庫管理システムとは」を、EC一元管理を実現する代表的なシステムであるOMSの詳しい機能を知りたい方は「OMS(注文管理システム)とは」をあわせてご覧ください。
EC一元管理に関するよくある質問
Q. EC一元管理とOMSは、同じものと考えてよいですか?
A. 実務上はほぼ同じ対象を指す言葉として使われています。EC一元管理は「複数チャネルの情報をまとめて扱う」という取り組み・考え方そのものを指し、OMSはそれを実現する代表的なシステムの種類を指す、という関係で捉えると分かりやすくなります。
Q. 一元管理は、複数のECモールに出店していない事業者でも必要ですか?
A. 自社サイトのみの運営であっても、実店舗との併用や、将来的なモール出店を見据えている場合は、早めに一元管理の仕組みを検討しておく価値があります。特に在庫の把握違いは、チャネル数にかかわらず起こりうる課題です。
Q. EC一元管理システムとERP(基幹システム)は、どちらを導入すべきですか?
A. EC運営の効率化が主な目的であれば、EC一元管理システム(OMS)で十分なケースが多くあります。一方、実店舗の販売データや仕入れ、会計まで含めて企業全体を統合管理したい場合は、ERPとの連携を検討する必要があります。自社の課題がEC運営の範囲に閉じているか、全社的な範囲に及ぶかで判断しましょう。
この記事の監修者
神戸大学在学中にEC事業を立ち上げ、自社ECサイトの構築から販売戦略の立案・実行、広告運用、物流手配に至るまで、EC運営の全工程をハンズオンで経験。売上を大きく伸ばしたのち、事業譲渡を実現。
大学卒業後はW2株式会社に新卒入社し、現在は、ECプラットフォーム事業とインテグレーション事業のマーケティング戦略の統括・推進を担う。一貫してEC領域に携わり、スタートアップから大手企業まで、あらゆるフェーズのEC支援に精通している。




























