近年、BtoB取引におけるDX化やデジタルシフトが加速する中、注目を集めているのが「卸売EC」です。これまで電話やFAXで行われていた受発注業務をオンライン化することで、業務効率の向上や販路拡大が期待されています。
本記事では、卸売ECの概要から導入メリット、市場の現状や課題、システム選定のポイント、さらに実際の導入事例までを詳しく解説します。
これから卸売ECを検討する企業にとって、有益な情報を網羅的にお届けします。
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この記事の監修者
神戸大学在学中にEC事業を立ち上げ、自社ECサイトの構築から販売戦略の立案・実行、広告運用、物流手配に至るまで、EC運営の全工程をハンズオンで経験。売上を大きく伸ばしたのち、事業譲渡を実現。
大学卒業後はW2株式会社に新卒入社し、現在は、ECプラットフォーム事業とインテグレーション事業のマーケティング戦略の統括・推進を担う。一貫してEC領域に携わり、スタートアップから大手企業まで、あらゆるフェーズのEC支援に精通している。
この記事でわかること
卸売業者やメーカーが、小売店や飲食店などの法人顧客に対して、オンライン上で商品を販売する仕組みのことです。従来、電話やFAX、訪問営業で行われていた受注業務をデジタル化し、ウェブサイトを通じて24時間いつでも発注を受け付けられるようにした「BtoB(企業間取引)専用のECサイト」を指します。
業務の効率化によるコスト削減と、販路の拡大が期待できます。受注データの入力や在庫確認の工数が削減され、事務ミスを大幅に防げるほか、カタログ送付などの販促費も抑えられます。また、営業担当者が訪問できなかった遠方の顧客や小規模な取引先に対しても、サイトを通じて効率的に販売が可能になります。
既存の取引先への周知と、BtoB特有の複雑な商習慣への対応が課題となります。長年のアナログな発注に慣れた顧客にシステム利用を促すためのサポートが必要なほか、取引先ごとの個別単価や掛け率、支払い条件などの複雑な設定をシステム上で正確に再現できる柔軟な設計が求められます。
卸売ECとは
卸売ECとは、企業間取引(BtoB)における商品やサービスの受発注を、インターネット上で行う仕組みやビジネスモデルのことです。
主にメーカーや卸売業者が、法人向けに自社商品をECサイトや専用プラットフォームで販売し、小売店や事業者がそれをオンラインで仕入れる形態を指します。
従来のBtoB取引では、電話・FAX・訪問営業によるアナログな手法が主流でしたが、卸売ECの導入により、24時間注文が可能・在庫確認がリアルタイム・人的ミスの削減・業務効率化など多くのメリットが得られます。
最近では、BtoC向けECサイトのノウハウを応用しつつ、BtoB特有の掛け売り、会員価格、法人承認フローなどに対応した専門的な卸売ECサイトが多く登場しており、幅広い業界で導入が進んでいます。
卸売企業がECを活用して商品を販売する方法
卸売ECサイトには「自社オリジナル卸売ECサイト」と「BtoBマーケットプレイス」の2種類があります。
自社オリジナル卸売ECサイト
自社で構築するオリジナルの卸売ECサイトは、システムの自由度が高く、デザインや機能を自在にカスタマイズできるため、ブランディングを強化し、競争の激しいEC市場で自社の独自性を効果的にアピールすることが可能です。
BtoBマーケットプレイス
BtoBマーケットプレイスとは、企業間で商品やサービスの取引ができるオンラインプラットフォームです。既存のマーケットプレイスに出店し、商品を登録するだけで、簡単に販売を始めることができます。
代表的なBtoBマーケットプレイスには、幅広い法人顧客にアプローチできる「Amazonビジネス」、中国発の巨大BtoB EC「アリババ」などがあります。
卸売市場における現状と課題
卸売業務をデジタル化(EC化)することで解決できる部分が多く、業務効率化や新規販路の開拓、顧客満足度の向上に貢献します。
電話やメールなど、アナログ受注の対応が業務負担になる
多くの卸売企業では、依然として電話やメール、FAXで受注を受け付けており、これらはすべて手動で管理する必要があります。
これにより、受注内容の確認や入力作業、伝票の発行などが手間となり、業務の効率化が難しく、人的ミスのリスクも増大します。
また、特に受注が多くなると、対応が追いつかなくなる可能性もあります。
営業時間外の対応ができず、受注機会を逃している
多くの卸売企業では、営業時間内にしか受注対応ができないため、営業時間外に依頼が来ると対応できません。これにより、夜間や週末などにも受注を受け付けられるECサイトを持っていない場合、競合に顧客を取られる可能性があります。
商品や取引先の情報管理が複雑化している
卸売企業では、商品情報や取引先の情報が異なるシステムやフォーマットで管理されていることが多いため、情報の一元管理が難しくなっています。
複数のデータベースに散らばった情報を手動で照合しながら管理するのは非常に手間がかかり、データの正確性や一貫性が損なわれるリスクもあります。
見積やアカウントの発行に手間がかかっている
BtoB取引では、顧客に対して見積書を発行したり、特定のアカウントを作成したりする必要があり、そのプロセスが手動で行われている場合、時間と労力がかかります。
さらに、見積やアカウントの発行の遅れが取引機会を失わせる可能性もあります。
取引先ごとに価格や商品を変えられず、不便が生じている
BtoB取引においては、取引先ごとに異なる価格設定や商品のバリエーションが求められることが多いですが、これを手動で管理するのは非常に手間がかかり、取引先ごとに異なる条件を適用するのが難しいという課題があります。
卸売EC化を始めるメリット
卸売EC化は、単なる販売チャネルの追加ではなく、「売れる仕組み」や「業務そのもの」の改革にもつながります。新しい顧客と出会い、業務をスマートにし、企業としての競争力を高めるための重要な取り組みと言えるでしょう。
新規取引先の開拓
従来の営業スタイルでは、紹介や展示会、訪問営業などが主流で、どうしても接点のある企業との取引に限られてしまいがちでした。
しかし、ECサイトを通じて商品情報をオンライン上に公開することで、これまで接点のなかった企業や全国各地の見込み顧客にもリーチ可能となります。
検索経由での流入や、マーケットプレイス経由での露出によって、販路の拡大と新規顧客獲得のチャンスが広がります。
業務効率化(デジタルシフト)
電話・FAX・カタログなどのアナログな受注方法から、ECサイトを利用したデジタル受注に切り替えることで、注文対応・在庫確認・請求処理などの業務を大幅に効率化できます。
ヒューマンエラーの削減、対応時間の短縮、営業・バックオフィスの負担軽減など、人手不足対策やコスト削減にも直結する効果が期待できます。
DX化
EC化は単なる業務の効率化にとどまらず、データを活用した経営・サービス改善=DXへの第一歩でもあります。
例えば、受注データや購買履歴を分析することで、売れ筋商品の可視化・発注予測・顧客ごとの提案最適化などが可能になります。
さらに、営業戦略の見直しや新規サービスの開発など、企業の価値そのものを高める変革につなげることができます。
卸売ECを始める際のシステム選定ポイント
卸売ECサイトを構築する際には、必要な機能をしっかりと確認し、自社のビジネスに合わせてカスタマイズできるシステムを選ぶことが非常に重要です。
卸売ECサイトに必要な機能があるか
卸売ECサイトを構築する際には、卸売特有の取引に対応できる機能が必要です。
例えば、BtoB取引では、通常のBtoCとは異なり、取引先ごとの価格設定や、法人向けの会員機能、見積書の作成機能、注文数の調整など、多様な取引形態に対応できる機能が求められます。
また、注文管理、在庫管理、配送手配などの物流機能や、複数の決済方法に対応することも重要です。
カスタマイズの自由度が高いか
卸売ECサイトの要件は、業種や企業の規模によって異なるため、カスタマイズの自由度が高いシステムを選ぶことが重要です。
例えば、価格設定や商品管理、注文フローのカスタマイズ、取引先ごとの専用ページの作成など、ビジネスの進化に合わせて柔軟に変更できるシステムを選ぶことで、長期的に運営をスムーズに行うことができます。
「既存のテンプレートで十分か、それとも専用の機能が必要か?」を見極め、必要な変更が簡単にできるかどうかを確認しましょう。
サポート体制が充実しているか
ECサイト運営を始める際、トラブルや問題に迅速に対応できるサポート体制が整っていることは、非常に重要です。
システム障害や不具合が発生した際にすぐに対応できるサポートがあるか、また、導入後のサポートが充実しているかも選定時に確認すべきポイントです。
例えば、電話サポートやチャットサポート、マニュアルやFAQなど、どのような形でサポートを受けられるか、サポート体制が24時間対応かなどをしっかりチェックしておくことが、スムーズな運営に繋がります。
卸売ECサイトの導入事例
ここでは、W2の導入事例を紹介します。
モール型ECサイト構築で約3,500社の商品登録を効率化。業務工数75%削減。
大東建託株式会社
以前のECモール運営では、約3,500社のメーカーや顧客による直接的な商品・会員登録が不可能で、全ての作業を社内で対応していました。
W2システムの導入により、メーカーによる商品登録・発送管理、顧客による会員登録が可能となり、真のモール型運営を実現。これにより業務工数を約75%削減することに成功しました。
関連記事:「多機能ECプラットフォーム×柔軟なカスタマイズ」が決め手!大東建託がW2を選定で理想のモール型自社ECサイトを実現/新規出店数4倍を達成!
商品数50万点の更新を一括アップロードで解決。業務工数80%削減。
旭商工株式会社
以前は50万点を超える自社ECの商品ページの編集作業に膨大な工数を要していました。
W2のシステム導入により、商品情報の一括アップロードや修正が可能となり、業務工数を80%削減することに成功。強固なセキュリティ基盤の構築に加えて、ブランド毎のTOPページを作ることで、サイトのUI/UXを改善を実現しました。
関連記事:旭商工株式会社がW2 Unifiedに移行し強固なセキュリティ基盤と業務効率化を実現。ブランド毎のTOPページ出し分け機能でサイトUI/UX改善、EC売上1億円を目指す。
まとめ
卸売ECは、企業間取引(BtoB)をデジタル化するための強力なツールです。
オンラインでの受注・販売が可能となり、業務の効率化や新規顧客の開拓に大きく貢献します。システム選定では、必要な機能の有無や、カスタマイズの自由度、サポート体制が重要なポイントとなります。
さらに、営業時間外でも受注が可能となり、受注機会の損失を防ぐことができます。
これらのメリットを活かし、卸売業者は競争力を高め、より効率的で利益を上げるための新たな手段としてEC化を進めています。
卸売ECに関するよくある質問
Q: 卸売ECを導入すると、既存の営業担当者の役割はどう変わりますか?
A: 単純な「注文取り」の作業から解放され、より付加価値の高い提案営業に集中できるようになります。ルーチンワークである受発注業務をECシステムに任せることで、担当者は顧客の課題解決や新商品の提案、新規開拓といった、売上に直結する戦略的な活動にリソースを割くことが可能になります。
Q: クローズドな取引が多い卸売業で、ECサイトのセキュリティはどのように確保されますか?
A: ID・パスワードによるログイン制限や、承認された顧客のみに価格を表示するクローズドサイト機能によって管理されます。不特定多数に情報を公開せず、取引実績のある企業のみがマイページから契約条件に基づいた購入ができる仕組みを構築することで、機密性の高い卸価格や在庫情報を安全に保護できます。
Q: 卸売ECサイトを構築する際、自社サイト型とモール型のどちらが良いですか?
A: 構築の目的によって異なります。自社ならではのブランディングや、既存の基幹システム(ERP)との高度な連携、独自の取引ルールを反映させたい場合は、自由度の高い「自社サイト型(パッケージやクラウドEC)」が適しています。一方で、まずは認知度を高めて新規顧客を幅広く探したい場合は、集客力のある「卸売り専門のモール」への出店が有効です。




























