アパレルECや食品ECなど、実店舗を伴うことが多い事業者の間で「OMO」や「O2O」、「オムニチャネル」という用語が注目され、それぞれの導入が進んでいます。
これらの用語やそれぞれの違いについて、明確に理解されていない方もいるのではないでしょうか?
本記事では、OMOの定義と他の概念との違いを図解を交えて整理したうえで、具体的な施策・国内外の成功事例・導入時の注意点まで一通り解説します。
この記事でわかること:
- OMOとO2O、オムニチャネルの違い
- OMO導入で得られるメリットと注意すべきデメリット
- 今すぐ実践できる8つの施策
- 国内外の成功事例7選
- OMOを実現するためのシステム選定のポイント
OMOとは
OMOとは「Online Merges with Offline」の略称で、「オンラインとオフラインを融合する」という意味です。
提供側が「オンライン」と「オフライン」を区別して管理するのではなく、顧客が両者の境界を意識せず購買・体験できる状態を作ることを目的としています。近年では小売業界で注目を集めており、デジタル化を推進する販売施策となっております。
もともとGoogleチャイナ元社長の李 開復(リ カイフ)氏が2017年に提唱した概念で、中国で先行して普及しました。その後、スマートフォンの普及とキャッシュレス決済の浸透を背景に、日本でもリテール・EC・飲食・不動産など幅広い業界で導入事例が増えています。
経済産業省の調査によれば、2024年の日本のBtoC EC市場規模は26.1兆円に達しており、オンラインと実店舗をまたいだ購買行動はすでに消費者の日常となっている。こうした環境変化の中で、OMOは売上最大化と顧客体験向上を両立する手段として注目を集めています。
つまり、OMOは顧客体験(UX)の向上を目的としたマーケティング戦略になります。
OMOと、O2O・オムニチャネルの違い
OMOとO2O、オムニチャネルの違いを一覧にすると下記のようになります。
| 比較軸 | O2O | オムニチャネル | OMO |
|---|---|---|---|
| 起点 | オンライン | 企業のチャネル設計 | 顧客体験 |
| 目的 | オフラインへの送客 | 全チャネルの販売連携 | オンとオフの境界を消す |
| オンラインの役割 | 送客の手段 | 販売チャネルの一つ | オフラインと対等に統合 |
| データ活用 | 限定的 | チャネル間で連携 | 全チャネルを一元統合 |
| 代表施策 | LINEクーポン→来店 | ECと店舗でポイント共通化 | アプリ注文→店舗受取→データ活用 |
O2Oやオムニチャネルは、オンラインとオフラインが明確に区別されているのに対し、OMOはオンラインとオフラインを融合するため、区別されていません。
さらに、O2Oやオムニチャネルはサービスや商品を提供する企業側が、オンライン・オフラインのチャネルをどう連携させて販売するかを検討する「企業視点の戦略」になります。
対してOMOは商品の購入からアフターフォローまで、オンラインとオフラインを区別することなく、より良い顧客体験をしてもらうためにはどうしたらいいかを検討する「顧客視点の戦略」といえます。それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
1.O2Oとの違い
O2Oとは「Online to Offline」の略語で、「オンラインからオフラインでの行動を促進する」という意味です。
オンラインを積極的に活用する点はOMOと共通しています。ただし、O2Oのメインはあくまでもオフラインで、オンラインは送客の手段に過ぎません。
たとえば、LINEでクーポンを発行し、実店舗に来店してもらう方法は、典型的なO2Oといえます。このようにインターネット上で得た情報を店舗来店へと消費者を誘導し、購買行動を促進させるためのマーケティング施策がO2Oです。
2.オムニチャネルとの違い
オムニチャネルとは、オンラインとオフライン分け隔てなく、すべてのチャネルを連携させて顧客と接点を持つ仕組みを指します。
オンラインが普及した今、実店舗以外にも自社ECサイトやカタログ通販、SNSなど、さまざまな顧客との接点があります。
それらのチャネルを連携させ、顧客がどこからでも購入できるようにする販売戦略がオムニチャネルです。
なお自社のオムニチャネルを成功させるためには、以下の6つが重要です。
- インフラ整備
- データ連携・システム統合
- 店舗用ハードウェアの導入・刷新
- 全社で協力してサービスを強化
- 部署間の連携強化
- マーケティング見直し
以下の記事で詳しく解説していますので、オムニチャネルの詳細を知りたい方はあわせてご一読ください。
OMOが注目されている理由
OMOは近年、多くの企業や小売業界で注目を集めています。
背景には、消費者の購買行動の変化やデジタル技術の発展などがあります。オンラインとオフラインを行き来する購買行動が一般的になったことで、企業側にも新しい販売戦略が求められるようになりました。
ここでは、OMOが注目されている主な理由を紹介します。
【理由1】購買行動がオンラインとオフラインを行き来するようになった
近年の消費者は、店舗とECサイトを行き来しながら商品を検討・購入するようになっています。
たとえば、店舗で商品を確認したあとにECサイトで購入したり、オンラインで商品を調べてから店舗で購入したりするケースも珍しくありません。
こうした購買行動の変化に対応するため、オンラインとオフラインを一体として捉えるOMOの考え方が注目されています。
【理由2】スマートフォンの普及で購買行動が変化した
スマートフォンの普及により、消費者はいつでもどこでも商品情報を調べたり購入したりできるようになりました。店舗にいながら口コミを確認したり、価格比較を行ったりすることも一般的になっています。
このような環境では、オンラインとオフラインを分けた施策では十分な顧客体験を提供できません。OMOはこうした購買環境の変化に対応する戦略として注目されています。
【理由3】顧客体験(CX)の重要性が高まっている
近年は商品の価格や機能だけでなく、購買プロセス全体の体験価値が重視されるようになっています。オンラインとオフラインを連携させることで、在庫確認や受け取り方法の選択などをスムーズに行えるようになり、顧客体験の向上につながります。
OMOはこうした顧客体験を高めるマーケティング戦略として、多くの企業で導入が検討されています。
OMOのメリット
OMOのメリットは、下記のとおりです。
- 顧客体験の価値が向上する
- 顧客データを統合・活用できる
- LTVを最大化できる
- 機会損失を低減できる
- ブランドイメージの向上につながる
OMOが実現すると、オンラインとオフラインの垣根を意識させない購買体験を提供しやすくなります。これにより顧客は、日常的に利用しているツールの延長線でスムーズに商品を購入できるようになります。
また、顧客データを統合して活用できるようになることで、顧客理解の精度を高めたマーケティング施策も実施しやすくなります。さらに、チャネルを横断した柔軟な対応が可能になることで販売機会の最大化にもつながり、ブランドへの信頼感の向上も期待できます。
このようにOMOは、顧客体験の向上だけでなく、売上機会の拡大や中長期的な関係構築にも寄与する取り組みといえるでしょう。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
1.顧客体験の価値が向上する
OMOの大きなメリットの一つは、顧客体験をよりスムーズにできる点です。
現在の消費者は、「店舗で商品を確認する」「ECで比較する」「アプリで購入する」といったように、オンラインとオフラインを自然に行き来しています。しかし、企業側の接点が分断されていると、在庫情報が確認できない、会員情報が引き継がれないなどの不便が生じることがあります。
OMOを前提に設計することで、オンラインとオフラインを横断したスムーズな購買体験を提供しやすくなり、顧客満足度の向上や競合との差別化につながるでしょう。
2.顧客データを統合・活用できる
OMOを進めることで、オンラインとオフラインに分散していた顧客データを統合しやすくなります。
会員ID、購買履歴、閲覧履歴、来店履歴、問い合わせ履歴などの情報が連携されることで、顧客理解の精度を高めることが可能になります。
こうしたデータを活用することで、顧客の行動や興味関心に合わせた施策を実施しやすくなります。
3.LTVを最大化できる
OMOの価値は、新規顧客の獲得だけではありません。オンラインとオフラインの接点をつなぐことで、顧客との関係を継続的に築きやすくなり、LTVやリピート率の向上も期待できます。
たとえば、店舗で初回購入した顧客にEC限定情報を届けたり、ECで購入した顧客に店舗イベントを案内したりすることで、複数の接点から再購買のきっかけをつくることができます。こうした取り組みによって顧客との関係を長期的に育てやすくなり、中長期的な収益性の向上にもつながるでしょう。
4.機会損失を低減できる
OMOを実現すると、顧客が購入を検討したタイミングを逃しにくくなり、機会損失の低減につながります。
たとえば、実店舗に在庫がない場合でもECでの購入を案内したり、ECでの閲覧履歴をもとに店舗スタッフが接客したりすることで、チャネルをまたいだ顧客フォローが可能になります。
従来は、実店舗で購入できなければそのまま離脱していたケースでも、別チャネルで購買につなげやすくなります。顧客の状況に応じて接点を柔軟に切り替えられるため、販売機会を逃しにくくなるでしょう。
5.ブランドイメージの向上につながる
OMOを進めることで、オンラインとオフラインを通じて一貫したサービスを提供しやすくなり、ブランドイメージの向上も期待できます。
顧客は、ECサイトやアプリ、SNS、実店舗など、複数の接点を通じてブランドに触れています。そのため、どのチャネルを利用しても統一感のある体験を提供できれば、「この会社はどこで買っても安心できる」という信頼感を持ってもらいやすくなります。
こうした評価の積み重ねが、長期的なファンの獲得やブランド価値の向上にもつながるでしょう。
OMOのデメリット・導入時の注意点
OMOは顧客体験の向上やデータ活用の高度化など多くのメリットがありますが、導入を進める際にはいくつかの課題もあります。特に、システム統合や組織体制の整備などは短期間で実現できるものではありません。
十分な準備を行わないまま導入を進めると、期待した効果を得られない可能性もあります。OMO導入を進める際には、以下のようなポイントに注意することが重要です。
- 初期費用と運用コストがかかる
- データ連携とシステム統合が難しい
- 部門横断の社内調整が必要になる
- 効果測定が難しい
それぞれのポイントについて解説します。
初期費用と運用コストがかかる
OMOを実現するためには、ECサイトや店舗システム、顧客データ基盤など複数の仕組みを連携させる必要があります。そのため、システム開発やツール導入などの初期費用が発生するケースが少なくありません。
また、導入後もデータ管理や施策運用、システム保守などの継続的なコストが必要になります。こうしたコストを踏まえたうえで、段階的な導入計画を検討することが重要です。
データ連携とシステム統合が難しい
OMOを実現するうえで大きな課題となるのが、オンラインとオフラインのデータ連携です。EC、店舗POS、会員管理システム、マーケティングツールなど、複数のシステムが個別に運用されているケースは少なくありません。
それぞれのシステムの仕様が異なる場合、データの統合や連携には一定の技術的対応が必要になります。そのため、既存システムの構成を整理したうえで、どのように連携基盤を構築するかを検討することが重要です。
部門横断の社内調整が必要になる
OMOは、EC部門だけで完結する取り組みではありません。店舗運営、マーケティング、システム部門など、複数の部署が関わるプロジェクトになるケースが一般的です。
しかし、部門ごとにKPIや業務プロセスが異なる場合、施策の進め方やデータ活用の方針について調整が必要になることもあります。OMOを推進するためには、部門を横断した体制づくりや共通の目標設定が重要になります。
効果測定が難しい
OMO施策では、オンラインとオフラインを横断した購買行動が増えるため、効果測定が難しくなる場合があります。たとえば、店舗で商品を確認し、その後ECで購入するケースでは、どの接点が購買に影響したのかを正確に把握することが簡単ではありません。
そのため、顧客IDを軸にしたデータ管理や、チャネルを横断した分析環境を整備することが重要になります。
OMOの具体的な8つの施策
OMOを実現するためには、オンラインとオフラインを連携させたさまざまな施策を組み合わせることが重要です。顧客データの活用や購買体験の利便性向上などを目的に、多くの企業がOMO施策の導入を進めています。
ここでは、OMOを実現するための代表的な施策を8つ紹介します。それぞれの特徴や活用方法を確認していきましょう。
- データを活用したパーソナライズ施策
- 店頭受取(クリック&コレクト)
- モバイルペイメント
- 自宅配送
- チャットボット
- サイネージ
- 店舗在庫のEC表示
- ライブコマース
【施策1】データを活用したコミュニケーション
OMOでは複数のチャネルで顧客データを取得できるため、上手に活用できれば顧客満足度向上につながります。たとえば、オンラインでよく利用するSNSがわかれば、より効果の高いチャネルに広告の出向が可能です。
このように顧客のデータに応じて、パーソナライズ化された戦略が取れるのが大きな特徴です。
【施策2】店頭受取
店頭受取とは、ECサイトやモバイルで注文した商品を、店頭で受け取れるサービスです。店頭にない商品でも購入できるうえ、店頭で待ち時間を必要としません。
また、店頭在庫の確認ができる場合も多く、無駄足になる可能性もなくなります。日本でもアパレルショップやテイクアウトのできる飲食店でよく見かけるようになりました。
店頭受取は、ストレスフリーな顧客体験を提供しています。
店舗とECを掛け合わせた施策については下記の記事でより詳しく解説しています。
関連記事:ECサイトと実店舗の連携完全ガイド|7つの成功ポイントと注意点をプロが解説
【施策3】モバイルペイメント
モバイルペイメントとは、スマートフォンのアプリを活用した決済サービスです。ECサイトやモバイル注文に使用できれば、商品の選択から決済までワンストップで完了できます。
通常の買い物においてはセルフレジを導入すると、アプリの利便性が高まり再来店のきっかけになります。
【施策4】自宅配送
自宅配送は、ネットスーパーや食品のデリバリーでよく見られる手法です。
ECサイトでは自宅配送が当然ですが、モバイルで注文を受け付け、近隣店舗から消費者の自宅へ配送する施策もあります。
物流網の整備は必要ですが、消費者はわざわざ来店しなくても商品が手に入るので高い顧客体験を提供できます。
【施策5】チャットボット
チャットボットとは、AIがユーザーの質問に応答するシステムでECサイトやWebサイトのヘルプページに多く利用されています。AIにデータが蓄積されるほど精度が上がるため、一次窓口として設置されるケースが多いです。
たとえば、消費者の質問を受け付け回答できるものは回答し、回答できないものは有人のヘルプデスクを案内します。わざわざ電話やメールで問い合わせたくない消費者にとっては、うれしい方法といえます。
ただし、電話で問い合わせたいと考える消費者も多いため、チャットボットのほかに連絡先を明記することも重要です。
【施策6】サイネージ
OMOの施策に、デジタルサイネージを利用する方法もあります。
デジタルサイネージとはデジタル技術を用いた広告媒体のことで、電子ディスプレイやプロジェクターを使って動画広告や画像広告、テキスト広告などを表示可能です。
さらに、デジタルサイネージの前に立った顧客の属性や購買履歴などを分析し、ターゲットに合わせた商品をおすすめしてくれます。
デジタルサイネージは、効果的なOMOの手法の一つとして、ショッピングセンターや駅などさまざまな業界で利用されています。
【施策7】店舗在庫のEC表示
店舗在庫のEC表示とは、ECサイト上で実店舗の在庫状況を確認できるようにする仕組みです。顧客は商品ページから近隣店舗の在庫状況を確認できるため、来店前に商品があるかどうかを把握できます。
店舗在庫が可視化されることで、顧客は無駄足を防ぎながら安心して来店できるようになります。また、企業側にとってもECサイトを通じて店舗来店を促進できるため、オンラインとオフラインを連携させた購買体験の向上につながります。
OMO施策の一つとして、多くの小売企業で導入が進んでいます。
【施策8】ライブコマース
ライブコマースとは、SNSや自社アプリのライブ配信を通じて商品を紹介・販売する手法です。視聴者がリアルタイムでコメントや質問を行い、その場で購入できる点が特徴で、実店舗の接客体験とECの利便性を組み合わせたOMO施策の一つとして注目されています。
アパレルや化粧品、食品などの分野で導入が進んでおり、特にD2Cブランドでの活用が広がっています。また、視聴時間やコメント、クリック、購買といった配信中のデータを活用することで、次回以降の施策改善にもつなげやすい点も特徴です。
OMOの導入事例7選
OMOの導入によって、オンラインとオフラインを連携させた新しい購買体験を提供する企業は増えています。実際にOMOを取り入れることで、顧客体験の向上や利便性の強化、売上拡大につなげている企業も少なくありません。
ここでは、OMOを導入して成功した企業の事例を、日本と海外から7つ紹介します。自社でOMO施策を検討する際の参考として、ぜひご覧ください。
- 日本マクドナルド
- サントリー
- Beams(ビームス)
- Zoff(ゾフ)
- フーマーフレッシュ
- ピックアップタワー
- Nike(ナイキ)
【日本国内のOMO導入成功事例1】日本マクドナルド
日本国内でのOMO事例として、日本マクドナルドの事例を紹介します。
モバイルアプリを活用した「モバイルオーダー」により、来店前の注文・決済と店舗受取を連携させた購買体験を実現しています。
来店前にアプリ上でメニュー選択から決済、受取方法(カウンター・ドライブスルー)まで完了できるため、店頭での待ち時間を短縮できます。
また、注文履歴やクーポン利用履歴、来店頻度などのデータを活用し、顧客ごとに最適化されたクーポン配信を行っています。オフラインの来店体験をオンラインデータで補完することで再来店を促進し、大規模なユーザー基盤を活かしたOMOの代表的な事例といえるでしょう。
【日本国内のOMO導入成功事例2】サントリー
続いて紹介するのは、サントリーが手掛ける「TOUCH-AND-GO COFFEE」の事例です。マクドナルドのような効率化に加え、「TOUCH-AND-GO COFFEE」を通じて、事前注文と店舗受取を組み合わせた新しい購買体験を提供しています。
TOUCH-AND-GO COFFEEは東京の日本橋にあるコーヒーショップで、LINEで好みのコーヒーを事前注文し、指定した時間に店舗で受け取ることができる便利なサービスです。
受取時間は予定や行動にあわせて5分単位で選べるため、余分な待ち時間を作らずにコーヒーを受け取れます。完成したボトルコーヒーは店舗のロッカーに一本ずつ格納され、ベースドリンクや甘さ、フレーバーの種類など、自分好みにカスタマイズできるのも魅力です。
店舗で注文する場合、レジ前で長時間悩むことはできません。好きなだけ迷ったり悩んだりできるのも、オンライン注文のメリットだといえるでしょう。
また、名前が入るおしゃれなボトルやオンラインで注文してオフラインで受け取るスタイルがFacebookやInstagram、Xなどでトレンドとなり、朝9時に完売する日もあったそうです。
【日本国内のOMO導入成功事例3】Beams(ビームス)
続いて紹介するのは、セレクトショップ「BEAMS(ビームス)」の事例です。購買導線の最適化だけでなく、実店舗とECの顧客データを統合することで、オンラインとオフラインを横断した顧客体験を実現しています。ファッション小売業においては、実店舗とECサイトの両方を運営するケースが多いでしょう。ビームスも同様で、当初は実店舗の顧客データとECサイトの会員データが別々に管理されていました。
ビームスは、2016年に二つのデータベースを統合し、顧客情報を一元管理できるようにしています。顧客情報を一元管理することで、購入場所を問わず一人ひとりの購入履歴を把握できるので、顧客はよりきめ細やかなサービスを受けられます。また、「実店舗で商品を確かめ、オンラインで購入する」というフレキシブルな買いものも可能になります。
正に、OMOによって、より良い顧客体験が実現できた成功事例だといえるでしょう。また、ビームスでは店舗スタッフをメディア化するオムニチャネルを活用しています。ビームス公式webサイトでは、店舗スタッフが、スタイリングやフォトログ、ブログ、動画などのコンテンツで自由な情報発信を行い、顧客購買意欲向上の支援を行っています。
オフラインで一対一の接客を行っていた店舗スタッフがオンラインで発信することで、顧客との接点が増え、ビームスのファン増加が期待できます。
OMO導入においては、顧客だけではなくスタッフもオフラインとオンラインの区別なく動ける仕組み設計が重要です。
【日本国内のOMO導入成功事例4】Zoff(ゾフ)
続いて紹介するのはメガネ専門店「Zoff(ゾフ)」の事例です。BEAMSのようなデータ活用に加え、購入時に必要な度数情報などを一元管理することで、実店舗とECのどちらでもスムーズにメガネを購入できる環境を整えています。実店舗であれば、スタッフが目の状態を確認して見え方を調整してくれます。しかし、ECサイトでメガネを購入しようと思うと、度数以外にもさまざまな数値が必要です。
そのため、ECサイトでのメガネ購入はハードルが高く、購入時は実店舗に行く人が多かったのではないでしょうか。
Zoffでは、顧客が購入したメガネの情報をデータ化しており、実店舗でもECサイトでもその情報を確認できます。ECサイトでは度数などのデータが自動入力されるため、好みのフレームを選ぶだけで自分に合ったメガネの購入が可能です。自分の度数をメガネ屋に確認したり控えたりすることなくメガネが購入できるのも、OMOの導入でデータを一元管理しているからです。メガネ購入時に手間だと感じる部分の負担を軽減できるのは、顧客にとっても有益な顧客体験となるでしょう。
日本におけるOMOを導入した成功事例を3点お伝えしました。
それでは、海外ではどういったOMOが導入されているのでしょうか? 続いては、海外でのOMO導入成功事例を紹介します。
【海外のOMO導入成功事例1】フーマーフレッシュ
OMOの考え方は、Googleチャイナの元社長である李 開復(リ カイフ)氏が提唱して広まりました。OMOという言葉が生まれただけあって、中国はOMO先進国です。実際に、さまざまなシーンでOMOが取り入れられています。
そのなかの一つとして、アリババグループが手掛けるスーパーマーケット「フーマーフレッシュ(盒馬鮮生)」を紹介します。フーマーフレッシュは200店舗以上を展開する生鮮スーパーで、オンラインでも購入可能です。
オンラインで購入した場合、店舗から3km圏内であれば無料で30分以内に配送してもらえます。実店舗での購入でも、アプリで購入商品を読み取れば指定時間の配送が可能です。オンライン注文した商品は、配送のためにピックアップされ、店内上部のベルトコンベアで運ばれていきます。
オンラインで購入するだけではなく、店舗での購入にスマートフォンを使うことで、もっと利便性の高い顧客体験ができます。
買いものかごに商品を入れてレジに並ぶという行動が必要なく、実際の商品を確認しながらオンライン購入できるのは顧客にとっても大きなメリットだといえるでしょう。そして、フーマーフレッシュの商品は、スマートフォンで読み取れるバーコードが値札に表示されています。アプリで読み込むと、商品の在庫数や産地、そして、調理方法やユーザーレビューなどの情報を購入前にその場で確認できます。
また、フーマーフレッシュは店内にいけすや飲食スペースがあり、購入した食材をその場で調理してもらって食べることも可能です。顧客は、その時々の状況に応じて、フーマーフレッシュをさまざまな形で利用できます。
OMO導入によって、フーマーフレッシュは生鮮スーパーに期待する以上の役割を果たしているといえるでしょう。
【海外のOMO導入成功事例2】ピックアップタワー
続いて紹介する海外の事例は、ウォルマートの「ピックアップタワー」と呼ばれる巨大な機械です。ウォルマートは、Amazonに対抗するためにOMO施策に多額の資金を費やしています。その一環として、ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取れるサービスを始めました。
ピックアップタワーは、実店舗で受け取る商品を保管する設備です。その大きさは、高さ約5メートル、幅約2メートル。60cm×40㎝×40㎝サイズまでの箱が最大300個入ります。利用方法はとても簡単です。購入時にピックアップタワーでの受け取りを選択すると、専用のバーコードが発行されます。そのバーコードをピックアップタワーにかざすと、注文品がピックアップされて出てきます。
日本にいると、ECサイトで購入した商品は届いて当たり前です。コロナの影響もあり、受け取りのサインやはんこを必要としない置き配も増えてきました。
しかし、アメリカの場合は、置き配された商品の盗難が相次いでいます。ほかにも配送に時間がかかったりあまり丁寧な配送ではないこともあり、店舗で受け取れるサービスの需要が高まっています。
ウォルマートは24時間営業しているため、ピックアップタワーも24時間使えます。時間の制限なく荷物を受け取れるのは、顧客にとってのメリットも大きいでしょう。
また、オムニチャネル戦略で成功した企業は、下記の記事でより詳しく解説しています。
【海外のOMO導入成功事例3】Nike(ナイキ)
海外のOMO成功事例として、スポーツブランドのNike(ナイキ)も代表的な企業の一つです。顧客一人ひとりに合った体験を提供することに注力しています。
具体的な取り組みとしては、公式アプリを通じて、オンラインとオフラインを連携させた顧客体験を提供しています。
たとえば、アプリから商品在庫を確認して店舗で受け取ることができるほか、アプリ会員向けに限定商品の販売やイベントの案内が行われることもあります。さらに、アプリで蓄積された購買履歴や行動データを活用し、顧客ごとにパーソナライズされた商品提案を行っています。
最近では、デジタルと店舗を融合させた「House of Innovation」を展開しています。
この店舗では、欲しい商品が見つかったら、アプリでバーコードやQRコードを読み取り、アプリ上で商品を選択して試着希望のボタンを押すと、スタッフが試着室までその服を持ってきてくれるサービスを展開しています。
このように、デジタルと店舗のデータを統合して顧客との接点を広げることで、顧客ロイヤルティの向上と継続的な購買促進を実現しています。
また、オムニチャネル戦略で成功した企業は、下記の記事でより詳しく解説しています。
関連記事:オムニチャネル事例16選 | 事例から学ぶ成功ポイント4選を解説
OMOを成功させるためのポイント5つ
OMOを成功させるためには、オンラインとオフラインのチャネルを単につなぐだけでは不十分です。顧客データの活用やシステム整備、組織体制の構築など、複数の要素をバランスよく整える必要があります。
ここでは、OMOを成功させるために押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
- データベースを構築・管理し、データを活用する
- マルチチャネル化し、顧客接点を増やす
- システムを整備する
- 高い顧客体験を提供する店舗をつくる
- 知識・スキルを持った人材を確保する
【ポイント1】データベースを構築・管理し、データを活用する
OMOで重要な要素は、顧客データや商品データなどのさまざまなデータです。できる限りのデータを取得し、データベース化してマーケティング戦略を立てなければなりません。
また、データを集約する際はオンラインとオフラインにこだわらず、すべてのデータを集約するように努めましょう。OMOはオンラインとオフラインを融合することなので、データが分離していては意味がありません。
一元管理できるようにデータベースを統合し、顧客の購買行動に高品質な体験を提供することが重要です。
【ポイント2】マルチチャネル化し、顧客接点を増やす
データを集めるためにも販売チャネルをマルチ化し、顧客接点を増やす必要があります。インターネットが普及する前は折り込み広告やテレビCMなど、顧客接点は限られていました。
しかし、インターネットが普及した現在はWeb広告やSNS、オウンドメディア、ECサイトなど、数多くの顧客接点があります。複数のチャネルを管理・運営するのは労力を要しますが、おろそかにはできません。
また、顧客接点の増加はデータ収集だけではなく、企業と顧客の信頼関係構築も期待できます。
【ポイント3】システムを整備する
OMOを実現するためには、システムの整備が欠かせません。
各チャネルの担当者が必要に応じて分析するためには、企業が所有するすべてのデータを一元管理し、すぐに取り出せるようにしなくてはならないからです。
たとえば、データを管理するシステムはもちろん、各店舗とリアルタイムでデータをやりとりするシステムなどが必要です。また、各チャネルから取得したデータを効率よくひも付ける必要があります。
素早くデータを取得し、関連するデータ同士で結びつけることでOMOの成功につながります。
【ポイント4】高い顧客体験を提供する店舗をつくる
OMOはオンラインとオフラインを融合して、良質な顧客体験を提供する戦略です。そのため、オンラインばかりに注力するのではなく、実店舗の改良も必須です。
むしろ、いかにオンラインの施策が改良されても、実店舗で得られる体験が今までと同じでは消費者は良質な体験を得られません。
実店舗を改良するための具体的な方法は、
- モバイルで決済を完了しておくことで店舗では商品の受け取りだけで済む
- 商品棚に併設したQRコードを読み込むことで、生産者情報やレシピなどの付加情報を提供する
などが考えられます。店舗を運営するスタッフの意見も参考にして、いかに顧客に良質な体験を提供できるかしっかりと検討しましょう。
【ポイント5】知識・スキルを持った人材を確保する
OMOを実現するためには、知識・スキルを持った人材が必要不可欠です。OMOの実現に必要な知識やスキルは多く、精通した人材がいなければ施策を効率的に進められません。
OMO担当者に求められるスキルは、
- 販売チャネルに必要なマーケティング
- ICT
- データの収集・分析・活用
などが挙げられます。したがって、ECサイトのオンライン販売チャネルや実店舗などのオフラインチャネルに精通している必要があります。また、顧客の体験を考えるために、顧客目線を持てる柔軟さも重要です。
OMOの現状と今後の課題
OMOは中国をはじめとした海外では広く浸透しており、キャッシュレス決済やモバイルアプリを前提とした購買体験が一般化しています。
一方、日本では徐々に導入が進んでいるものの、海外と比較するとまだ発展途上の段階といえるでしょう。
その背景には、日本のオフラインにおけるサービス水準の高さが挙げられます。対面での接客や店舗体験の質が高いため、あえてオンラインと統合しなくても一定の顧客満足が得られてきた側面があります。
一方で、日本のEC市場は拡大を続けており、経済産業省の調査では物販系BtoC ECの市場規模は14.8兆円(前年比9.3%増)に達しています。EC化率も11.5%まで上昇していますが、依然として購買の約9割はオフラインが占めており、オンラインとオフラインを統合するOMOの余地は大きいといえます。
こうした状況のなかで、顧客はオンラインとオフラインを区別しているわけではなく、その時々で最適な手段を選択しています。企業側には、チャネルの垣根をなくし、シームレスな購買体験を設計することが求められます。
また、コロナ禍をきっかけにECの重要性が高まったことで、オンラインとオフラインの連携はより不可欠なものとなりました。今後は顧客視点での体験設計を前提に、データ活用やシステム連携を進めながら、OMOの実装を段階的に推進していくことが重要です。
OMO実現に向けたシステム選定のポイント
実際にOMOを導入しようとしても、システム連携やデータ統合、運用体制の構築など検討すべき要素が多く、どこから進めればよいのか悩んでしまう企業も少なくありません。
そのため、OMO戦略の設計やシステム構築を支援する企業に相談したり、必要な機能がまとまったサービスを導入したりするケースも増えています。まずは、システム選定時には以下4つのポイントを確認・整理しましょう。
- データ統合の範囲:顧客情報・購買履歴・ポイント・在庫をリアルタイムで統合できるか
- チャネル対応の柔軟性:EC・実店舗・アプリ・SNSを一つのプラットフォームで管理できるか
- カスタマイズ対応:自社の業態・規模・将来の拡張計画に対応できるか
- 導入・運用サポート:システム導入後の保守体制とサポート範囲が明確か
また、W2株式会社が提供する「W2 Unified」は、ECと実店舗のデータを統合し、オンラインとオフラインを横断した顧客体験の提供を支援するプラットフォームです。
「W2 Unified」の場合、オフラインとオンラインの相互連携でより価値のある顧客体験を提供できます。
W2 Unifiedはデータ管理基盤とツールが一つになっており、それぞれが独立してしまいがちな実店舗とECサイトの情報をまとめて管理することが可能です。顧客情報や受注情報、ポイント情報をまとめて管理することで、オフライン・オンラインを合わせた購入履歴を基に、顧客に新たな提案ができるようになるでしょう。
W2 Unifiedで提供できる内容は以下のとおりです。
- 店舗との顧客情報、受注情報、ポイント情報の統合管理および連携
- 店舗受け取り対応
- オフラインからの注文登録、問い合わせ管理システム
- ネイティブアプリ
- SNS連携
- One To Oneコミュニケーションツール
クレジットカード決済または、AmazonPay、楽天pay、ID系などの豊富な決済連携オムニパックを導入することで、ECサイトで見た商品を店舗で受け取ることができるようになります。これまでは、ECサイトと実店舗を連携させようと思うと、スタッフのマンパワーに頼るしかありませんでした。しかし、人が行うことにはミスや勘違いが付き物です。
システムで管理できれば、作業時間を短縮でき、効率の良い運営ができるようになります。また、これまで別管理だったポイントをまとめて管理できるのも、顧客にとってはうれしいことでしょう。
W2 Unifiedがあれば、OMOだけではなく、これまで抱えていたECサイト運営の悩みも解決できます。
実際にW2 Unifiedを導入した場合の事例を紹介します。
- アプリプッシュ通知
- 顧客は通知を受け、オンラインショップで店舗受け取り申し込みをする
- 顧客は受取時に店舗にて購入
- 後日、店舗購入時にたまったポイントをオンラインショップで使用し、商品を購入
オフラインとオンラインが連携することで、顧客の行動の幅も広がることがわかります。
また、これまで別々に管理していた実店舗とECサイトのポイントをまとめて管理できるのも、顧客にとって大きなメリットとなるでしょう。
OMO導入について検討されている方や知りたいことがある方は、お気軽にW2株式会社にご相談ください。
まとめ:OMOによる良質な顧客体験からファン化を図ろう
OMOとは、顧客がオンラインとオフラインを意識せずに購買・体験できる状態を実現するマーケティング戦略です。
O2Oが送客手段、オムニチャネルがチャネル設計の考え方であるのに対し、OMOは顧客体験の設計を起点としている点が大きな違いです。
OMOを導入することで、顧客体験の向上やLTVの最大化、データ活用の精度向上といったメリットが期待できます。ただし、これらの成果を得るためには、データ統合基盤の構築や部門横断の運用体制の整備が前提となります。コストや体制が不十分なまま導入してしまうと、十分な効果が得られない可能性もあるため注意が必要です。
実際の導入においては、すべての施策を一度に実装するのではなく、アプリとモバイルオーダーの連携や店舗在庫の可視化など、自社の課題に直結する領域から段階的に取り組むことが重要です。
OMOの推進にあたり、システム選定やEC基盤の見直しを検討している場合は、統合型ECプラットフォームの活用も有効な選択肢の一つです。
自社の課題や目的に合わせて最適な手段を選定し、段階的にOMOの実現を進めていきましょう。
OMOの基本的な概念に関するよくある質問
Q: OMOと、よく聞く「O2O」や「オムニチャネル」とは何が違うのですか?
A: O2Oはオンラインからオフラインへ顧客を誘導する一方向の施策、オムニチャネルは複数の販売チャネルを連携させる考え方です。それに対しOMOは、オンラインとオフラインの垣根を完全に取り払い、顧客IDや購買データなどを一元化することで、顧客一人ひとりに対してオンライン・オフラインを意識させない一貫した最高の顧客体験を提供することを目的とする、より進んだ概念です。
Q: 企業がOMOを導入すると、どのようなメリットがあるのですか?
A: OMOを導入する最大のメリットは、顧客満足度の向上によるLTV(顧客生涯価値)の最大化です。オンラインとオフラインのデータを統合・分析することで、個々の顧客に最適化された情報提供やサービスが可能になります。これにより、顧客はより快適でパーソナライズされた購買体験を得られるため、ブランドへの信頼と愛着が深まり、長期的な優良顧客になってもらいやすくなります。
Q: 自社でOMOを実現したいのですが、何から始めれば良いのでしょうか?
A: OMOを実現するための第一歩は、実店舗とECサイトでバラバラに管理されている顧客情報、ポイント、購買履歴などのデータを一元管理する「データ統合基盤」を構築することです。まずは、店舗とECの会員情報を統合できるECプラットフォームを導入し、顧客データを集約することから始めるのが効果的です。その上で、どのような顧客体験を提供したいかを具体的に設計し、必要なシステム連携を進めていくのが良いでしょう。




























