テックメディア:AI・テクノロジー

AIに「買い物相談」する生活者が4割に急増——タイパ実感は75%、50代に広がる「検索からAIへ」の地殻変動
2026.08.31

AIに「買い物相談」する生活者が4割に急増——タイパ実感は75%、50代に広がる「検索からAIへ」の地殻変動

買い物は「探す」から「提案を仰ぐ」へ。4割が選ぶストレスから解放

共通ポイント「Ponta(ポンタ)」を提供するロイヤリティマーケティングと日経クロストレンドは、共同で実施した生活者の買い物におけるAI活用の実態調査を発表した。

調査によると、「生成AIに買い物に関する相談をしたことがある」と回答した生活者は約4割に上った。これまで、ネットショッピングは「自ら検索窓にキーワードを入力し、無数の候補から比較・検討する」のが当たり前だったが、買い物のあり方はAIというパーソナルアシスタントに「お勧めを提案してもらう」形へと急速に変化しつつある。

この「4割」という数字は、決して一過性の傾向ではないようだ。SEOを中心にデジタルマーケティング支援を行うPLAN-Bマーケティングパートナーズが実施した別の調査でも、生成AIを日常的に利用するユーザーのうち42.7%が「商品の購入」を、43.3%が「行き先(旅行先やレストランなど)の決定」を、生成AIとの対話をきっかけに行った経験があると回答している。

円グラフ:購入42.7%/行き先決定43.3%
参照:PLAN-B│【調査】生成AI利用者の4割が「AIきっかけ」で購買を経験。

調査主体や設問設計が異なるにもかかわらず、ほぼ同水準の数値が独立して観測されている点は、「AI起点の消費行動」がすでに一部の先進的なユーザーだけの現象ではなく、生活者全体に広がりつつある構造的な変化であることを示している。

編集部コメント

AIへの買い物相談が4割に達したという事実は、消費者の購買プロセスが「プル型(自ら情報を探しにいく)」から「プッシュ型(パーソナライズされた提案を受ける)」へ本格的に移行し始めていることを示しています。これは、EC事業者にとって「検索対策(SEO)」だけでなく、「AIエージェントに自社商品をいかに推奨してもらうか(AIO:人工知能最適化)」という新たなマーケティング指標への対応が必要不可欠になることを示唆しています。

相談ユーザーの75%が「タイパ」を実感。選択肢過多の時代における特効薬に

AIに買い物の相談をしたことがあると回答したユーザーのうち、実に75%が「タイパ(タイムパフォーマンス)」の向上を実感している。

購入した商品ランキング:化粧品40.6%、食品39.1%など
参照:PLAN-B│【調査】生成AI利用者の4割が「AIきっかけ」で購買を経験。

現代の消費者は、溢れかえるWeb上の口コミや類似商品の中から「どれがベストか」を見極めることに疲弊している。AIに予算や目的、好みを伝えるだけで、候補を瞬時に数択に絞り込んでくれる体験が、比較・検討にかかる時間と脳の認知的負荷(選択のストレス)を劇的に削減している。

実際にPLAN-Bの調査でも、生成AIをきっかけに購入した商品としては「化粧品・スキンケア・ヘアケア」(40.6%)や「食品・飲料」(39.1%)、「本・雑誌・電子書籍」(35.9%)が上位を占めており、いずれも選択肢が非常に多く、口コミやレビューをもとに比較検討する手間がかかりやすいカテゴリーだ。行き先の決定においても「飲食店」(56.9%)や「旅行・宿泊先」(55.4%)が突出して高く、条件が多岐にわたるジャンルほどAIによる情報整理・要約の恩恵を強く受けていることがうかがえる。

編集部コメント

「タイパ実感75%」という数字は、AIが単なる遊びのチャットツールではなく、実用的な「意思決定のショートカットツール」として機能している証拠と言えます。情報が多すぎて「選べないから結局買わない」という離脱(決定回避)を防ぐ意味でも、ECサイトにおける高性能なAIコンシェルジュの導入は、今後の購入転換率(CVR)を大きく左右する分水嶺になるはずです。

50代が牽引する「検索よりAI重視」の意外な逆転現象

今回の調査における最大のサプライズは、50代のアクティブなAI活用姿勢だ。デジタルネイティブである若年層以上に、50代において「従来の検索エンジンによる情報収集よりも、AIへの相談を重視する」という逆転の傾向がみられた。

50代以上のミドル・シニア層にとって、複雑なキーワードを組み合わせて検索を繰り返し、偏った広告や大量のリンクから正しい情報を見分ける作業は、若年層が考える以上にハードルが高い。自然な話し言葉(会話)で質問すれば、客観的で要約された回答がピンポイントで返ってくるAIのインターフェースこそが、彼らの情報探索のストレスを最も解消する手段となっている。

編集部コメント

「シニアやプレシニアはデジタル移行が遅い」という先入観は、AIの登場によって完全に覆されました。検索スキル(ググる技術)の有無に関わらず、誰もが話し言葉で高度な情報探索ができる「検索の民主化」が、実は50代以上の層に最も強い恩恵をもたらしています。今後、購買力のある大人世代をターゲットにする高価格帯のサービスやブランドほど、SNSや検索対策以上に、AIにスムーズに推奨されるための「対話型データの整備」を急ぐべきでしょう。

AIを鵜呑みにしない、慎重な生活者像も浮き彫りに

一方で、生活者が生成AIの提案を無条件に信頼しているわけではない点にも注目したい。PLAN-Bの調査では、AIをきっかけに購買・行き先決定の経験があるユーザーのうち86.8%が、実際の購入前に「Googleなどの検索エンジン」で情報を検証したと回答している。さらに「Amazonなどのモール型EC」(39.5%)や「Instagramなどのソーシャルメディア」(31.6%)で口コミや評判を確認する動きも一般的で、「生成AIを完全に信頼しているため検証しない」という回答者はわずか2.6%にとどまった。

同調査が公開したユーザーの実際のチャット履歴(ヘアケア用品の購入事例)を見ると、AIから提案を受けた後にユーザーが追加で条件を絞り込み、最終的にモール型ECサイトで口コミを確認してから商品を選んでいる様子が読み取れる。AIはあくまで比較検討の「たたき台」を作る役割を担い、最終的な意思決定の裏付けは従来からの情報源が支えているという、二段構えの購買行動が定着しつつあるようだ。

生活者はAIを「万能の答え」ではなく「優秀な第一次スクリーニング係」として使いこなしています。企業にとっては、AIに商品を推奨してもらう「AIO」対策と同時に、AIからの流入を受け止める検索エンジンやECサイト、SNS上でのレビュー・評判管理を並行して強化する、いわば「二段構えのマーケティング設計」が今後ますます重要になるでしょう。AIに引用されるだけでは不十分で、その先の検証フェーズで選ばれる体制まで整えて初めて、購買に繋がる導線が完成すると言えそうです。


EC・リテール向けメディア「Commerce Hack」とは?

Commerce Hackのロゴとメディア紹介バナー

「Commerce Hack」は、commerce の常識を hack し、未来体験を創造することを目指す EC・リテール業界向けメディアです。メーカーや小売業、EC 支援企業のキーパーソンをお招きし、企業戦略や成功体験を“裏話”とともに共有します。開始から約1年でリアルタイム参加1,000名を超え、多くの視聴者から高い評価をいただいています。

「Commerce Hack」アーカイブ動画配信中

Commerce Hackのアーカイブ動画一覧

Commerce Hackでこれまで公開してきたセッションを、アーカイブで順次ご覧いただけるようになりました。

EC・リテールの最前線で挑戦を続ける企業のリアルな戦略や、成長を生み出す仕組みづくりを、いつでも好きなタイミングでインプットできます。

▶過去のアーカイブ動画はこちら

=======================================

Commerce Hackメディア編集部

お問い合わせはこちら

フォームから問い合わせる