「取引先からEDIでのやり取りをお願いされたが、そもそも何のことか分からない」——BtoBの現場で働いていると、一度はこうした場面に出くわすのではないでしょうか。
EDIとは、注文書や請求書、納品書といった取引に関する書類データを、あらかじめ決めたルールに沿って企業間で電子的にやり取りする仕組みです。長年、電話・FAX・メールでのやり取りに頼ってきた企業間取引の現場で、業務効率化とミス削減を実現する手段として活用されてきました。
本記事では、EDIの意味と仕組みから、個別EDI・標準EDI・業界VAN・Web EDIという4つの種類、代表的な標準規格、導入のメリットと注意点までを解説します。
なお、インターネットとWebブラウザだけで完結する「Web EDI」の詳しい仕組みや導入方法については「Web EDIとは?導入メリット・デメリット、BtoB ECサイトの違いを徹底解説」で、企業間取引全体のEC化・BtoB ECの基礎知識については「BtoB ECとは?基礎知識からメリット・構築方法・成功事例を解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
この記事でわかること
「Electronic Data Interchange(電子データ交換)」の略で、注文書・発注書・請求書・納品書といった企業間取引の書類データを、あらかじめ定めたルールに沿って電子的にやり取りする仕組みです。専用回線やインターネットを通じて、企業のシステム同士が直接データを送受信することで、紙やFAX、メールでのやり取りにかかっていた手間とミスを削減できます。
大きく4つに分けられます。取引先ごとにルールを個別に設定する「個別EDI」、業界団体などが定めた共通ルールを使う「標準EDI」、特定業界向けに整備された通信網を利用する「業界VAN」、そしてインターネットとWebブラウザだけで利用できる「Web EDI」です。取引先の数や業界慣行に応じて、適した種類を選びます。
紙・FAX・メールでのやり取りに比べて、転記ミスや確認漏れといった人的ミスを削減でき、受発注から請求までの処理スピードが向上します。あわせて、紙の印刷・郵送にかかるコストを削減できるペーパーレス化の効果も見込めます。
EDIとは
EDIとは、「Electronic Data Interchange」の略称で、日本語では「電子データ交換」と訳されます。企業間取引で発生する注文書・発注書・請求書・納品書といったビジネス文書のデータを、あらかじめ合意したルール(プロトコル)に基づいて電子化し、専用回線やインターネットを通じてやり取りする仕組みです。
対象となる取引データには、次のようなものがあります。
- 注文書・発注書(受発注データ)
- 納品書・出荷案内(物流関連データ)
- 請求書・支払通知(決済関連データ)
- 見積書(商談関連データ)
これらの書類を、電話・FAX・メール・郵送といった人手を介した方法ではなく、企業のシステム同士が直接データとしてやり取りすることで、入力の手間や転記ミスを減らし、取引全体のスピードと正確性を高められます。EDIは、こうした仕組みそのものを指す言葉であると同時に、その仕組みを実現するシステムを指す言葉としても使われます。
EDIの仕組み
EDIは、送信側と受信側それぞれのシステムが、決められた形式にデータを変換しながらやり取りする仕組みで成り立っています。
まず送信側のシステムが、自社の業務データ(受注情報や在庫数など)を、あらかじめ取引先と合意したフォーマットに変換します。次に、通信プロトコルを介してそのデータを相手先に送信し、受信側では受け取ったデータを、自社システムが理解できる形式に再び変換して取り込みます。この一連の変換と送受信のプロセスによって、両社が異なるシステムを使っていても、人の手を介さずにスムーズな情報連携が実現します。
この仕組みを支えているのが、主に次の3つの取り決めです。
通信プロトコル:データを送受信する際の通信方式です。全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順)やJX手順、ebXML MSなど、インターネット経由の通信方式が現在の主流になっています。
文字コード:やり取りするデータに使う文字の規格です。シフトJISやUnicodeなどがあり、企業によって扱える文字コードが異なるため、受け取ったデータを自社で取り込める形式に変換する必要があります。
データ形式・標準:取引データの構造やレイアウトのルールです。業界ごとに定められた標準規格(流通BMSなど)を採用することで、追加の開発コストを抑えながら、多数の取引先と同じプロセスでデータ交換ができます。
これらの取り決めを事前に取引先とすり合わせておくことが、EDI導入における最初の重要なステップになります。
EDIの4つの種類
EDIは、ルールの決め方や利用する通信手段によって、主に4つの種類に分けられます。
| 種類 | ルールの決め方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 個別EDI | 取引先ごとに個別設定 | 柔軟に対応できる一方、取引先が増えるほど管理負担が増す |
| 標準EDI | 業界団体等が定めた共通ルールを使用 | 同じ規格の取引先とはスムーズに連携でき、取引先を拡大しやすい |
| 業界VAN | 特定業界向けの通信網(Value Added Network)を利用 | フォーマット・識別コードまで業界内で統一されている |
| Web EDI | インターネットとWebブラウザを利用 | 専用回線・専用ソフトが不要で、導入のハードルが低い |
個別EDI
個別EDIは、通信形式やデータフォーマット、識別コードなどを、取引先ごとに個別に設定する方式です。取引内容にあわせて細かく設計できる柔軟性がある一方、取引先が増えるほど個別対応の数も増え、システム管理の負担が大きくなっていく傾向があります。特定の取引先との取引量が多い場合には適していますが、多数の企業と接続する場合は、後述する標準EDIとの併用を検討するとよいでしょう。
標準EDI
標準EDIは、業界団体や中立的な機関が定めた共通のルールやデータ形式を利用するEDIです。代表例として、流通業界向けの「流通BMS」や、業種を問わず利用できる「中小企業共通EDI」があります。同じ規格を採用する企業同士であれば、複数の取引先と共通のルールでやり取りできるため、個別EDIに比べて効率的に取引先を拡大しやすい点がメリットです。
業界VAN
業界VAN(Value Added Network:付加価値通信網)は、特定の業界向けに、フォーマットやデータ形式、商品・取引先コードまで統一された通信網です。代表例として、酒類・加工食品業界向けの「ファイネット」(約2,300社が導入)、日用品・化粧品業界向けの「プラネット」があります。業界に特化した規格を利用することで、データ交換の標準化と効率化を同時に実現できます。
Web EDI
Web EDIは、インターネットとWebブラウザを利用して、企業間でデータ交換を行う方式です。従来型のEDIが専用回線や専用ソフトウェアを必要としていたのに対し、Web EDIはインターネット環境さえあれば利用できるため、導入コストや運用コストを抑えやすいという特徴があります。
一方で、Web EDIは取引データの入力や確認を人が行う場面が多く残るため、処理の自動化という観点では、専用システム同士が自動的にデータを交換する厳密な意味でのEDIとは、やや性質が異なるという指摘もあります。また、取引先ごとに画面の仕様や操作方法が異なることが多く、標準化されていない点には注意が必要です。
Web EDIの詳しい仕組みや、従来型EDIとの違い、導入時に押さえておきたいポイントについては「Web EDIとは?導入メリット・デメリット、BtoB ECサイトの違いを徹底解説」で詳しく解説しています。
代表的な標準規格
EDIを支える標準規格には、業界単位のものと、国際的なものがあります。代表的なものを紹介します。
国内の業界標準
流通業界では「流通BMS」、電子機器業界では「ECALGA(JEITA-EDI)」、石油化学業界では「CEDI(JPCA-BP、Chem eStandards)」というように、業界ごとに独自の標準規格が発展してきました。通信手順一つを取っても、流通業界ではJX手順、金融分野では全銀TCP/IP(広域IP網)手順が主流というように、業界の歴史的経緯によって仕様が分かれているのが実情です。
国際標準「EDIFACT」
海外の取引先とEDIでやり取りする場合には、国連が策定した国際標準規格「EDIFACT(UN/EDIFACT)」が広く使われています。国や業界を問わず利用できる汎用的なメッセージ形式を定めており、グローバルに事業を展開する企業や、海外の取引先とデータ交換を行う企業にとっては、対応を検討すべき規格の一つです。国内特化の標準EDIとは異なり、国際的な取引を見据えた規格である点が特徴です。
自社がどの標準規格に対応すべきかは、取引先の業界慣行や、国内取引が中心か海外取引も含むかによって変わります。導入を検討する際は、主要な取引先がどの規格を採用しているかを事前に確認しておくことが欠かせません。
EDI導入のメリット
EDIを導入することで得られる代表的なメリットを紹介します。
人的ミスの削減と処理スピードの向上
紙やFAX、メールでのやり取りでは、転記ミスや確認漏れが起こりやすく、修正のための連絡や再送信に時間がかかります。EDIを導入すれば、システム間で直接データがやり取りされるため、こうした人的ミスを大幅に減らし、受発注から請求までの処理スピードを向上できます。
コスト削減
紙の印刷・郵送にかかるコストが不要になるペーパーレス化の効果に加え、電話やFAXでの確認作業にかかっていた人件費も削減できます。取引量が多い企業ほど、この効果は大きくなります。
取引先との情報共有の正確化
標準化されたデータ形式でやり取りすることで、取引先との間で発生しがちな「言った・言わない」の行き違いを防ぎやすくなります。特に発注数量や納期といった、間違いが許されない情報のやり取りにおいて、正確性の向上は大きな価値を持ちます。
EDI導入時の注意点と流れ
EDIの導入は、次のような流れで進めるのが一般的です。
- 取引先との調整:これから交換しようとしているデータの種類や、業務の運用ルールについて、取引先とすり合わせを行います。場合によっては、双方の業務フローの見直しが必要になることもあります。
- 通信環境の整備:取引先と確実にデータを送受信できるよう、双方の送受信環境(通信プロトコル、文字コードなど)を整備します。
- セキュリティ対策の実施:暗号化通信やVPN接続など、取引データを安全にやり取りするための保護手段を導入します。
- 試験運用と本稼働:実際のデータでテストを行い、問題がないことを確認したうえで本稼働に移行します。
導入時に特に注意したいのが、取引先ごとに異なる仕様への対応です。同じ「EDI」という言葉を使っていても、業界や取引先によって通信手順やデータ形式が異なることが多く、複数の取引先とEDIを行う場合は、それぞれの仕様差を吸収する仕組みづくりが必要になります。自社の基幹システムとの連携方法も含めて、導入前に十分な検討を行いましょう。
レガシーEDIからの移行と「EDI2024年問題」
従来型のEDIの多くは、NTTが提供するISDNサービス(INSネット、ディジタル通信モード)を利用した専用回線で運用されてきました。しかし、このISDNサービスは2024年初頭に終了しており、ISDN回線に依存していた「レガシーEDI」を利用していた企業は、インターネットEDIへの移行が急務となりました。この課題は「EDI2024年問題」と呼ばれ、多くの企業がシステムの見直しを迫られる契機となりました。
本記事の執筆時点では、この移行期限は既に過ぎていますが、依然としてレガシーな仕組みを使い続けている企業や、移行を先送りにしてきた企業にとっては、あらためてEDI環境を見直す必要があるテーマです。専用回線を前提としたシステムからの移行を検討する際は、初期投資を抑えやすいWeb EDIや、クラウド型のEDIサービスへの切り替えも、有力な選択肢の一つになります。
まとめ
EDIとは、注文書や請求書といった企業間取引の書類データを、あらかじめ定めたルールに沿って電子的にやり取りする仕組みです。個別EDI・標準EDI・業界VAN・Web EDIという4つの種類があり、取引先の数や業界慣行に応じて適した方式を選ぶことが重要です。
導入によって、人的ミスの削減、処理スピードの向上、コスト削減、取引先との情報共有の正確化といったメリットが期待できる一方、取引先ごとに異なる仕様への対応や、通信環境・セキュリティ対策の整備には相応の準備が必要です。かつてISDN回線からの移行が課題となった「EDI2024年問題」を経て、現在ではインターネットを活用したEDIへの移行が主流になっています。
導入コストを抑えて始めやすいWeb EDIについて詳しく知りたい方は「Web EDIとは?導入メリット・デメリット、BtoB ECサイトの違いを徹底解説」を、EDIだけでなくBtoB取引全体のEC化を検討したい方は「BtoB ECとは?基礎知識からメリット・構築方法・成功事例を解説」もあわせてご覧ください。
EDIに関するよくある質問
Q. EDIとWeb EDIは、どちらを導入すべきですか?
A. 取引先の数や予算によって異なります。専用回線や専用ソフトウェアへの投資が可能で、多くの取引先と自動化されたデータ交換を行いたい場合は従来型のEDIが、初期コストを抑えて手早く導入したい場合はWeb EDIが向いています。詳しい選び方は「Web EDIとは」で解説しています。
Q. EDIとBtoB ECサイトは、何が違うのですか?
A. EDIは、あらかじめ決まった取引先との間で、定型的な受発注データを効率的にやり取りする仕組みです。一方BtoB ECサイトは、新規取引先の開拓や、Webサイト上での商品カタログの閲覧・注文など、より広い販売活動を目的としたシステムです。両者は目的が異なるため、既存取引先との効率化にはEDI、新規開拓や顧客体験の向上にはBtoB ECサイトというように、組み合わせて活用する企業も増えています。詳しくは「BtoB ECとは」をご覧ください。
Q. 中小企業でもEDIを導入できますか?
A. 導入できます。近年は「中小企業共通EDI」のように、中小企業でも扱いやすいことを念頭に整備された標準規格や、専用回線を必要としないWeb EDI、クラウド型のEDIサービスも増えており、以前より低コストで導入しやすい環境が整いつつあります。
この記事の監修者
神戸大学在学中にEC事業を立ち上げ、自社ECサイトの構築から販売戦略の立案・実行、広告運用、物流手配に至るまで、EC運営の全工程をハンズオンで経験。売上を大きく伸ばしたのち、事業譲渡を実現。
大学卒業後はW2株式会社に新卒入社し、現在は、ECプラットフォーム事業とインテグレーション事業のマーケティング戦略の統括・推進を担う。一貫してEC領域に携わり、スタートアップから大手企業まで、あらゆるフェーズのEC支援に精通している。




























