「PO」という言葉を耳にしたものの、具体的な意味や役割がいまいち掴めずにお困りではないでしょうか。POとは「Purchase Order」の略称で、ビジネスにおける「発注書」を指す重要な用語です。特に外資系企業や海外取引が盛んな現場では頻繁に使用されます。
しかし、単に日本語訳を知っているだけでは実務には不十分です。「請求書(Invoice)と何が違うのか」「発行のタイミングはいつか」といった基礎知識に加え、誤った運用が招くトラブルや、アナログ管理による業務負荷も理解しておく必要があります。
本記事では、POの基本的な定義から具体的な記載項目、実務での業務フローまでを網羅的に解説します。さらに、煩雑になりがちなPO管理をシステム化し、劇的に効率化するための手法についてもご紹介します。
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この記事の監修者
神戸大学在学中にEC事業を立ち上げ、自社ECサイトの構築から販売戦略の立案・実行、広告運用、物流手配に至るまで、EC運営の全工程をハンズオンで経験。売上を大きく伸ばしたのち、事業譲渡を実現。
大学卒業後はW2株式会社に新卒入社し、現在は、ECプラットフォーム事業とインテグレーション事業のマーケティング戦略の統括・推進を担う。一貫してEC領域に携わり、スタートアップから大手企業まで、あらゆるフェーズのEC支援に精通している。
PO(Purchase Order)とは?
POとは「Purchase Order(パーチェスオーダー)」の頭文字を取った略語であり、日本語では「注文書」や「発注書」を意味します。
買い手(発注側)が売り手(受注側)に対して、「この商品を、この価格で、この数量、この納期で買います」という意思を正式に伝えるための書類です。口頭での発注は「言った言わない」のトラブルになりがちですが、POを発行することで取引内容が書面として残り、契約としての拘束力を持つようになります。
昨今では、外資系企業だけでなく、グローバル展開している日本企業や、SAPなどの外資系ERP(基幹システム)を導入している企業でも、日常的に「発注書」のことを「PO」と呼ぶケースが増えています。
POと似ている用語との違い
ここでは特に混同しやすい以下の用語との違いを解説します。
- POと請求書との違い
- POと見積書との違い
- POと納品書との違い
- POと検収書との違い
POと請求書との違い
POと最も混同されやすい書類が「請求書(Invoice)」です。両者の決定的な違いは、「発行するタイミング」と「誰が発行するか」にあります。
PO(Purchase Order)は、取引の「開始時」に発行されます。発行するのは「買い手(発注者)」です。「この商品を注文します」という意思表示のために作成します。
一方、請求書(Invoice)は、取引の「完了時(または納品時)」に発行されます。発行するのは「売り手(受注者)」です。「注文通りに商品を納めたので、代金を支払ってください」という請求のために作成します。
つまり、取引の流れとしては「POが先、Invoiceが後」となります。POの内容に基づいて納品が行われ、その結果に基づいてInvoiceが作成されるという関係性を理解しておきましょう。
POと見積書との違い
見積書(Quotation)は、発注の前段階で、売り手から提示される条件を記した書類です。POはこの見積書の内容に基づいて作成されます。見積書はあくまで「この条件なら売れます」という提案ですが、POは「その条件で買います」という契約の申し込みにあたる点が異なります。
POと納品書との違い
納品書(Delivery Note / Packing List)は、商品と一緒に届く書類です。POで注文した内容と、実際に届いたものが一致しているかを確認するために使用します。POは「注文した内容」を示し、納品書は「届けた内容」を示すため、両者を突き合わせることで納品ミスがないかを確認できます。
また、納品書の正しい書き方については、こちらの記事で詳しく解説しています。是非合わせてご一読ください。
関連記事: ECサイトの納品書に記載すべき5つの項目とは?今さら聞けない基礎知識
POと検収書との違い
検収書(Inspection Report / Acceptance Certificate)は、届いた商品に問題がないことを買い手が確認した証明です。検収が完了して初めて、売上が確定し、支払いの義務が発生します。経理や監査の視点では、これら「発注」「納品」「請求」の3つの書類の内容が一致しているかを確認する作業を「3 way matching(3点照合)」と呼び、内部統制上の重要なプロセスとしています。
PO作成時の記載項目
POを作成・発行する際には、記載漏れによるトラブルを防ぐための「必須項目」を押さえておく必要があります。ここでは実務担当者が知っておくべき作成のポイントを解説します。
PO番号、日付、取引条件などの基本項目
POには、取引を特定し、スムーズに履行するために以下の情報を必ず記載します。
- PO番号(Purchase Order Number) :個別の発注を識別するための管理番号です。後述する請求書との照合や、問い合わせ時の照会キーとして非常に重要になります。重複しない個別の番号を付与します。
- 発行日 :POを作成・発行した日付です。
- 発注者と受注者の情報 :会社名、住所、担当者名、連絡先など、誰から誰への注文かを明記します。
- 商品明細情報 :品名、型番(SKU)、数量、単価、小計など、注文内容の核心部分です。
- 希望納期日 :いつまでに納品してほしいかを記載します。
- 納品先 :商品を送ってほしい場所(倉庫や店舗など)の住所を記載します。請求先と異なる場合は特に重要です。
- 支払条件 :「月末締め翌月末払い」など、代金の支払いルールを記載します。
通貨や貿易条件など「海外取引ならではの項目」
海外のサプライヤーへ発行するPOでは、国内取引とは異なる配慮が必要です。
まず、通貨の指定が必須です。単に「100」と書くだけでは、日本円なのか米ドルなのか判別できません。「JPY」「USD」といった通貨コードを必ず明記します。
次に、貿易条件(Incoterms)の記載も重要です。Incoterms(インコタームズ)とは、輸送にかかる費用やリスク負担の範囲をどこで区切るかを定めた国際ルールのことです。代表的なものとして以下の条件があります。
- FOB(Free On Board / 本船渡し) 輸出地の港で貨物を船に積み込んだ時点で、責任(リスク)が売り手から買い手へ移る条件です。その後の運賃や保険料は買い手(自社)が負担します。
- CIF(Cost, Insurance and Freight / 運賃・保険料込み) 売り手(相手)が日本の港までの運賃と保険料を負担する条件です。ただし、貨物のリスク自体は、船に積み込んだ時点で買い手へ移転している点に注意が必要です。
これらの条件を明確にしておかないと、輸送中の破損や遅延が発生した際に「どちらが費用を払うのか」で大きなトラブルに発展する可能性があります。
また、品名の記載も相手が誤解しないよう、具体的かつ正確な英語表現を用いる必要があります。曖昧な表現は、思わぬトラブルの原因となります。
POを用いた一般的な購買業務フロー
POの意味と書き方を理解したところで、実際の業務フローの中でPOがどのように扱われるかを見ていきましょう。ここでは発注側だけでなく、POを受け取る「受注側」の視点も含めて解説します。
1. サプライヤーから見積もりを取得する
発注に先立ち、サプライヤーに対して見積依頼(RFQ)を行います。価格、納期、取引条件などを提示してもらい、内容を精査します。条件が合意に至れば、その内容をもとにPO作成の準備に入ります。
2. POを発行し、送付する
社内の承認プロセス(稟議など)を経て、正式にPOを発行します。作成したPOは、PDF化してメール添付で送る、FAXで送信する、あるいは専用のWeb受発注システムに入力するなどしてサプライヤーへ届けます。
3. 受注請書を受領する
ここが重要なポイントですが、POを送っただけでは契約は成立していません。サプライヤー側がPOの内容を確認し、「この内容で注文を受けました」という承諾の意思を示す「受注請書(Order Confirmation / Acknowledgment)」を発行・返送して初めて、契約が成立します。実務ではメールの返信で済ませることもありますが、トラブル防止のためには正式な請書の受領が推奨されます。
4. 商品の納品を受け検収を行う
サプライヤーから商品が発送され、手元に届きます。発注担当者は、届いた商品と納品書、そして手元のPOを照らし合わせ、注文通りのモノが届いているかを検収します。数量不足や破損がある場合は、この段階でサプライヤーへ連絡します。
5. 請求書を受領し、支払いを行う
納品・検収が完了すると、サプライヤーから請求書(Invoice)が届きます。経理担当者は、請求書の内容がPO(発注時の条件)および検収結果(実際に届いたもの)と一致しているかを確認し、支払い処理を行います。
POの発行・管理業務で発生しがちな課題
多くの企業では、Excelで作成したPOをPDF化し、メールで送付するという運用が行われています。しかし、取引量が増えたり、リモートワークが進んだりする中で、アナログな管理手法は限界を迎えつつあります。
電話やメールでのやり取りにより「言った言わない」のトラブルが発生する
電話や口頭での追加注文や変更依頼は、記録に残りにくくトラブルの温床となります。「あの時電話で数量を変更したはずだ」「聞いていない」といった水掛け論は、ビジネスにおける信頼関係を損ないます。
また、Excel管理では「手入力」によるヒューマンエラーが避けられません。型番の打ち間違いや、数量の桁間違いといった些細なミスが、誤発注による過剰在庫や欠品といった重大な損失につながるリスクがあります。特に海外取引では、言語の壁もあり、些細な記載ミスが大きな認識齟齬を生む可能性があります。
メール・PDFでの管理により過去の履歴が検索しにくい
POをメールでやり取りしていると、「最新のPOはどれか」「あの注文のステータスはどうなっているか」を追跡するのが困難になります。
過去の取引履歴を確認しようとしても、担当者のメールボックスの中にしかデータが残っておらず、検索に膨大な時間がかかることも珍しくありません。担当者が不在の場合や退職した後に、経緯が分からなくなる「属人化」の問題も深刻です。情報が分散している状態では、適正な購買分析やコスト管理を行うことも難しくなります。
承認フローが停滞し、発注までのリードタイムが長引く
紙やハンコ文化が残る承認フローでは、承認者が不在だと発注業務が止まってしまいます。これはリードタイムの遅延に直結し、急ぎの調達が必要な場面で機会損失を生む原因となります。
また、メールベースの承認では「いつ誰が承認したか」の履歴(監査証跡)が曖昧になりがちです。内部統制(コンプライアンス)の観点からは、承認プロセスが正しく経由されたことを証明できる環境を整えることが求められます。
POの受発注業務を効率化する「BtoB EC(Web受発注システム)」のメリット
アナログ管理の課題を解決する最も効果的な手段が、PO業務のシステム化、具体的には「BtoB EC(Web受発注システム)」への移行です。
ここからは、法人間取引をweb化にした際のメリットについて解説します。
下記の記事では、BtoB EC(受注管理システム)主要16サービスを比較した記事をご用意しています。自社に合った「BtoB EC(受注管理システム)」の選定にぜひ参考にしてください。
関連記事: 受注管理システムとは?おすすめの受注管理システム16選を徹底比較
ECサイト感覚でミスなく業務が完結できる
BtoB ECシステムを導入すると、発注者は普段利用しているECサイト(Amazonや楽天など)と同じように直感的に業務を行うことができます。
カタログから商品を選んでカートに入れ、注文ボタンを押すだけで発注手続きが完了します。システム内で自動的にPOが生成・送信されるため、わざわざExcelで書類を作成したり、メールで送付したりする手間は一切かかりません。
発注側・受注側がリアルタイムにステータス情報を共有できる
Webシステムを介することで、発注側と受注側がクラウド上で同じデータを参照できるようになります。
POを発行した瞬間に相手に通知が届き、受注側が「出荷準備中」「出荷完了」といったステータスを更新すれば、発注側もリアルタイムで状況を把握できます。電話やメールでの「あの注文どうなっていますか?」という問い合わせ業務が激減し、双方の業務効率が向上します。
システム連携による経理・倉庫業務を自動化できる
Web上で生成されたPOデータは、デジタルデータとして活用可能です。
WMS(倉庫管理システム)と連携すれば出荷指示が自動化され、ERP(基幹システム)や会計ソフトと連携すれば、請求・支払処理の入力作業も不要になります。手作業による転記をなくすことで、業務全体のスピードアップと正確性を同時に実現する「全体最適」が可能になります。
電子化されたPOデータは、経営分析の宝庫です。下記の記事では蓄積された購買データを活用し、売上アップやコスト削減につなげる具体的な分析手法を紹介しています。是非合わせてご覧ください。
POの電子化・システム化を実現する「W2」
PO業務の効率化には、単なるツールではなく、企業の成長に合わせて拡張できる堅牢なプラットフォームが必要です。W2株式会社は、国内取引からグローバル調達まで、あらゆるBtoB取引を最適化するソリューションを提供しています。
法人特有の複雑な商習慣に対応する「W2 BtoB」
日本国内のBtoB取引には、企業ごとの「掛け率(顧客別単価)」や、複雑な「承認フロー」、「見積もりからの注文」など、独自の商習慣が存在します。
「W2 BtoB」は、こうしたBtoB特有の要件に対応する豊富な機能を標準搭載しています。SaaSの手軽さと、エンタープライズシステムの柔軟なカスタマイズ性を兼ね備えており、貴社独自の承認ルールや帳票フォーマットにも適応可能です。アナログな受発注業務をWebへ移行し、業務コストを大幅に削減します。
【海外取引向け】グローバル調達のPOを一元管理する「W2 Asia」
海外サプライヤーとのPO管理にお悩みなら、「W2 Asia」などのグローバルソリューションが最適です。
多言語・多通貨への対応はもちろん、海外拠点からのアクセスも想定したシステム設計により、国境を越えたリアルタイムな情報共有を実現します。メールやExcelで行き交っていたPOをクラウド上で一元管理することで、誤送信リスクやバージョンの先祖返りを防ぎ、グローバルサプライチェーンの透明性を高めます。現地事情に精通したサポート体制も強みです。
また、POには仕入れ価格や取引先情報といった極めて機密性の高い情報が含まれますが、W2は「マイクロソフト ゴールドパートナー」の認定を受けており、世界最高水準のセキュリティを誇ります。ISMS(ISO27001)認証の取得はもちろん、第三者機関による脆弱性診断もクリアしており、海外取引におけるサイバーリスクや情報漏洩の不安を解消します。
まとめ:PO(発注書)業務をアップデートし、業務効率を大幅に向上!
PO(Purchase Order)は、単なる事務的な書類ではありません。企業の資金とモノの流れをコントロールし、取引先との信頼関係を担保する重要な契約プロセスです。
アナログな管理を続けていると、ミスやトラブルのリスクが高まるだけでなく、企業の成長スピードを鈍らせる要因にもなりかねません。POの受発注業務をシステム化・Web化することは、コスト削減や業務効率化だけでなく、ガバナンス強化やグローバル展開への足がかりとなります。
まずは自社の業務における課題を見直し、W2のソリューションでどのように変革できるか、資料請求で具体的なイメージを掴んでみてはいかがでしょうか。
POに関するよくある質問
Q. 収入印紙は必要ですか?
紙で発行される注文書(PO)は、契約内容によっては課税文書に該当し、印紙の貼付が必要になるケースがあります。しかし、電子メールやWebシステム上で発行される「電子データのPO」であれば、収入印紙は不要です。印紙税法はあくまで「紙の文書」を対象としているためです。この点からも、PO業務を電子化することは、コスト削減の面で大きなメリットがあります。
Q. POはメールで送っても法的に有効ですか?
A.はい、有効です。日本の法律では、契約は双方の意思表示の合致によって成立するため、書面の形式(紙かメールか)は問われません。ただし、改ざん防止や紛失リスクを避けるため、PDF形式での送付や、電子署名の付与、あるいはWebシステム経由での発行が推奨されます。
Q. 海外からのPOを受け取った場合、消費税はどうなりますか?
A.海外からの注文(輸出取引)の場合、消費税は原則として免税となります。ただし、輸出免税の適用を受けるためには、輸出許可証などの証明書類を保存しておく必要があります。詳細は税理士や専門家に相談することをお勧めします。
































