
ECサイトへの集客には、インターネットならではのマーケティングが必要です。
しかし、まだ開店して間もないECサイト運営者にとっては、必ずしも簡単なことばかりではないかもしれません。
そこで、ECサイトのマーケティング方法について、基本からわかりやすく紹介していきます。
売れているECサイトの理由や、一般的な店舗集客のマーケティングとの違いについても理解できるようになるでしょう。
1.売れるECサイトと失敗するECサイトの違いとは?
決して大手ではなくとも、多くのユーザーから支持され売れ続けているECサイトがあります。
その一方で、魅力的な商品を取り揃えているにもかかわらず店舗の維持が困難な状況に陥り、人知れず消えていくECサイトも少なくありません。
両者の違いは、どこにあるのでしょうか。
すべてがそうだとは言い切れませんが、多くの場合は集客力の差が明暗を分けています。
そのカギとなるのが、マーケティングへの取り組み方です。
ECサイトのマーケティングは、オンラインでの店舗運営という特徴をよく理解して行うことが肝心です。
実店舗のマーケティングとは様相が異なるため、店舗運営経験があるからといって同じようにうまくいくとは限りません。
インターネットならではのマーケティング手法について日頃から情報を集め、自社に最適な方法を模索していく必要があるでしょう。
さまざまな経路からユーザーに働きかけて集客を試みながら、より効果を高めるために改善を繰り返すのです。
以降の段落では、数あるマーケティング手法のなかから、ECサイトの集客力アップに効果的なものを紹介していきます。
2.アクセス解析ツールとは?何が分かるの?
効果的なマーケティングのためには、現状を知ることが欠かせません。
まずは、自社ECサイトを訪れるユーザーの属性や行動を計測・分析できるようにする準備からはじめましょう。
そのためには、「アクセス解析ツール」を使うのが一般的です。
現状を反映した具体的なデータを得られるため、自社にとってどのような施策が有効なのかを考える際のヒントになります。
2-1.ECサイトのアクセス解析ツールでは何をすればいい?
ECサイトで利用可能なアクセス解析ツールは複数ありますが、なかでも広く使われているのは「Google アナリティクス(Google Analytics)」です。使いこなすほど詳細なデータが取得でき、基本無料で利用できます。
Googleアカウントを用意する必要がありますが、こちらも無料で取得することが可能です。
Google アナリティクスによる計測や分析は、ほぼリアルタイムで行われます。
どの地域からよくアクセスされているのかや、どのサイトからの流入が多いのかといった傾向を、最新のデータからつかむことができるでしょう。
また、どのようにサイト内のリンクがたどられているのかなどユーザーの行動パターンも明らかになります。
ECサイトでは、どのページが実際の購入や申し込みにつながっているのかを知ることが、今後の運営のヒントになるでしょう。
導入にはWebに関する多少の知識が求められますが、それほど難しい部分はありません。
まず、Googleアカウントでアナリティクスのサイトにログインし、表示される手順に従って「トラッキングコード」と呼ばれる計測用のHTMLタグを取得しましょう。
これを、計測対象にしたいすべてのページに貼り付ければ設定完了です。
なお、ECシステムによっては、簡単な設定のみでGoogle アナリティクスを利用開始できるようになっている場合もあります。
2-2.アクセス解析をどう活かせばいいの?
アクセス解析のデータは、活用のしかたが肝心です。
データからECサイトの現状を読み取り、想定と異なる部分がないかチェックしてみましょう。
例えば、一定のアクセス数があるにもかかわらず、思うように購入や申し込みにつながっていない商品ページがみつかるかもしれません。
その原因について考えれば、「もっと商品の魅力が伝わるページにしよう」などの課題を抽出することができます。
想定したよりもアクセスが少ないページや、滞在時間が短いページなどがみつかった場合は、「もっとユーザーにとって価値の高いページにしよう」などの課題が挙げられます。
反対に、購入や申し込みが多く利益につながっているページがあれば、さらに改善を加えてそのページにアクセスを集中させることも可能です。
このように、データにもとづいて課題を抽出すれば、改善のための具体的な施策を考えやすくなります。
そして、施策の成果もまた、アクセス解析によって計測可能です。
その結果、より効果的な改善方法を思いつくかもしれません。
課題の発見と改善を繰り返すうちに、これまで購入にいたることのなかったユーザーをどうすれば新規顧客に変えられるのかもわかってくるでしょう。
3.オンラインならではの集客方法「コンテンツマーケティング」
アクセス解析を積極的に活用すれば、「こういう人にもっと来てほしい」や「このページをもっと見てほしい」というような目標もみえてくるでしょう。
そのためには、ECサイトの訪問者を増やすためのマーケティングが必要です。
マーケティング手法にはさまざまなものがありますが、インターネットならではの特性を使って集客する「コンテンツマーケティング」は、なかでも多くのECサイトが実践している方法です。
3-1.コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングは、ユーザーに役立つ情報(コンテンツ)を発信することで検索サイトなどからの流入を狙う手法です。
価値の高い情報を提供することで、ユーザーを新規顧客に変えたり、既存顧客を自社ブランドのファンに変えたりする効果も期待できます。
例えば、化粧品を扱う企業が「美」に関するコラム記事を公開することが考えられます。
検索サイトを経由してこの記事にたどり着いたユーザーは、その内容について少なからず興味を持っているはずです。
そのため、同じサイト内にあるほかのコラム記事も読む価値があるかもしれないと考えます。
実際に役立つ記事が多ければ、ユーザーは繰り返しサイトを訪問するようになるでしょう。
これは、自社ブランドを好きになるようなコンテンツを継続的に配信することが、新規顧客の獲得につながるということを意味しています。
価値の高いコンテンツを十分に提供できれば、1度に限らず繰り返し商品を購入してくれるような優良顧客になってもらえる可能性もあります。
3-2.ECサイトならどうすればいいか?
コンテンツマーケティングは、ECサイトと相性のよいマーケティング手法です。
なぜなら、ECサイトには商品に詳しいスタッフがいることが多いからです。例えば、小物を中心に扱っているなら、その特徴や便利な使い方を紹介する記事を書けばコンテンツになります。
家具を扱うECサイトなら、部屋にあわせた選び方や暮らしへの取り入れ方といったコンテンツが考えられるでしょう。
商品に関するコンテンツを書くときは、あまり売り込みすぎないようにすることが大切です。
あくまでターゲットユーザーの役に立つことを考え、疑問を解消したり生活に応用したりしてもらえるような内容にします。
このとき、商品のことをよく知る専門家としての立場で情報を発信するように心がけることがポイントです。
誰にでも想像できるような内容よりも、そのECサイトのスタッフだからこその提案やアイデアに価値があります。
ECサイトのコンテンツマーケティングは、「SEO」と「SNS」を活用することでさらに効果が高まります。
次は、これらの2つについてみていきましょう。
4.SEO対策
「SEO(Search Engine Optimization)」とは、Googleなどの検索サイトに向けてWebサイトを改善していくプロセスを指す言葉です。
「検索エンジン最適化」とも訳される通り、適切にSEOを実施すれば自社サイトが検索結果ページの上位表示を獲得できる可能性があります。
例えば、女性をターゲットとする小物販売のECサイトの場合は、「母の日 プレゼント」のような検索ワードで上位表示されれば多数のアクセスを得られるでしょう。
また、この検索ワードは購買意欲の高いユーザーが使うと考えられるため、売り上げの増加も期待できます。
SEOでは、ユーザーが何に興味をもち、どのような検索ワードを使うのかを意識することが重要です。
ECサイトの場合は、扱う商品の関連用語をキーワードとするのが基本でしょう。
このとき、サイトの内容が充実しているほどSEOの効果は高くなります。
ユーザーにとって価値が高いと検索エンジンが判断したページほど、検索結果の上位に表示されるためです。
これは、コンテンツマーケティングに前向きに取り組むほど、サイトが上位表示を獲得できる可能性が高まるという意味でもあります。
コンテンツの拡充とSEOは、あわせて行うことでより効果を発揮できるのです。
なお、SEOに関する詳細なテクニックは、これまで頻繁に変わってきたことが知られている部分です。
今後も変わることが予想されるため、常に新しい情報を収集していく必要があるでしょう。
SEOは一度対策して終わりとせずに、継続的に取り組んでいくことが重要です。
5.SNS運用
TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSは、今やインターネットでのマーケティングに欠かせないものになっています。
サイト公式のSNSアカウントを作成すれば、「フォロー」という仕組みによって企業がユーザーひとりひとりと直接つながることが可能になるためです。
また、コミュニケーションを通じてユーザーが何に興味を持ち、どのような情報を求めているのかを探ることができる点もメリットでしょう。
大勢のフォロワーを獲得できれば、新商品やキャンペーンなどの情報を広く周知することができます。
コンテンツマーケティングと組み合わせ、新しいコンテンツの公開を知らせる使い方も効果的です。
ただし、SNSで新たなフォローを獲得していくのにはある程度時間がかかります。
集客を急ぎすぎたり、ユーザーの感情を逆撫でするような投稿をしたりしてしまうと、いわゆる「炎上」のような事態にもつながりかねません。
ユーザーのニーズをよく理解したうえで自社ブランドの認知度向上に努め、腰を据えて健全に運営することを心がけましょう。
長期的な視点で取り組めば、ECサイトへの流入増加による売り上げアップも期待できます。
6.効果のスピードを上げる「ネット広告」
SNS運用のように長期的な取り組みが求められるマーケティングではなく、より短期的な効果が見込める手法が必要な場面もあるでしょう。
そのためには、インターネットを通じて自社の広告を掲載する「ネット広告」が有効です。
ネット広告にはさまざまな種類がありますが、ここでは掲載先の異なる2つの方法について紹介します。
6-1.リスティング広告
リスティング広告とは、Googleなどの検索サイトで検索結果ページの上部などに表示される広告のことです。
どの広告が表示されるかは検索ワードに応じて決められるため、広告といってもユーザーが興味をもっていることに関連した内容になっています。
出稿者にとっては、ターゲットを絞った効率的な集客ができる点がメリットです。
リスティング広告はクリック課金になっているのが一般的で、ユーザーが広告のリンクをクリックするごとに所定の費用が発生します。
大量のクリックを獲得すればその分費用もかかりますが、事前に予算を決められるので低コストからはじめることが可能です。
ただし、広告費や表示順位を決めるための仕組みが少し複雑なところがあるので、ある程度時間をかけて勉強してからはじめることをおすすめします。
6-2.SNS広告
SNS広告は、SNS内のタイムラインなどに自然な形で挿入されるタイプの広告です。
属性や趣味趣向によるターゲティングで見せる相手をある程度絞り込むことができ、自分から検索することが少ないユーザーにも表示されるという特徴があります。
潜在顧客にアプローチしたい場合にも、適した手法だといえるでしょう。
SNS広告では、それ自体が広告であることは明確に表示されますが、通常の投稿と見た目が似ているため押しつけがましい印象を与えにくくなっています。
内容を気に入ってもらえれば、ユーザーの手による拡散も期待できます。
7.ECサイトの売上アップに貢献するCRM・MAツールとは?
ECサイトの集客と売り上げを向上させるためには、複数のマーケティング手法を組み合わせることや、それらの効果を確認しながら継続的に改善していくことが大切です。
しかし、そのためにばかり時間をとられてしまっては、肝心のECサイト運営に支障が出てしまいます。
マーケティングのためのツールを活用し、業務の効率化をはかる必要があるでしょう。すでに紹介したアクセス解析ツールもそのひとつです。
ほかには、CRMやMAのツールも検討してみる価値があります。
「CRM(Customer Relationship Management)」とは、顧客との良好な関係を維持するための管理手法のことです。
CRMツールの導入には、企業がもつさまざまな顧客情報を一元管理できるようになるというメリットがあります。
これにより顧客を中心に据えたサービスを提供しやすくなり、顧客満足度やリピート率の向上が期待できます。
「MA(Marketing Automation)」は、見込み客へのアプローチを効率化する手法です。
MAツールを導入すれば、メールやWebを通した見込み客とのコミュニケーションを自動的に行えるようになります。
これにより購買意欲が高まった最適なタイミングでのアプローチが可能になり、マーケティングの生産性が向上するというメリットがあります。
これらのツールは、意味をよく理解して用いることが肝心です。
裏を返せば、理解して使いこなすことが少し難しいところがデメリットといえるかもしれません。
顧客満足度や生産性に関する効果を実感できるようになるまでには一定の時間がかかるものなので、目的意識をもって活用しましょう。
PDCAを回せば小さなECサイトも大きな結果を出せる
ECサイトの集客は、アクセス解析による計測や分析にもとづいて進めることが大切です。
オンラインならではのマーケティング手法に取り組み、工夫を凝らした効果的な情報発信を継続的に行えば、大手に負けない成果を出せる可能性もあります。
常に新しい手法を取り入れながらPDCAによる実践と改善のサイクルを回し、ECサイトを成長させていきましょう。