Knowledge Blog
アテニア、ECサイトに「接客AIエージェント」を本格導入——直営店舗の接客力再現でLTV向上へ
2026.04.22
AI・テクノロジー
戦略・マーケティング

アテニア、ECサイトに「接客AIエージェント」を本格導入——直営店舗の接客力再現でLTV向上へ

オンラインで直営店舗の接客を再現、LTV向上を狙う

ファンケル傘下のアテニアは2026年2月10日、自社のECサイトに接客ノウハウを読み込ませた接客AIエージェント「アテニア AIビューティアドバイザー」を実装した。

化粧品店舗のデジタル化を象徴する、アテニアの公式サイトに導入された「化粧品 店舗 AIエージェント」の接客画面。

同社は売り上げの約8割をECサイトに依存している一方で、店舗で購入した顧客のほうがLTV(顧客生涯価値)が格段に高いという課題を抱えていた。一人ひとりの肌質に合わせた丁寧なカウンセリングや、ニーズに合った別商品の提案をオンライン上でいかに再現し、購入点数や頻度を引き上げるかが社内の喫緊の課題となっていた。

今回導入されたAIの最大の特徴は、直営店舗の運営で長年蓄積された計数百ページに及ぶ接客マニュアルや、約200種類の商品の成分、肌の仕組みなどの知識を丸ごとAIに学習させている点だ。これにより、店舗を持たないDtoCブランドには容易に模倣できない、同社ならではの強みを生かした1to1の接客が可能になった。

編集部コメント

EC化が進む小売業界において、「効率化」ではなく「接客の質」をオンラインでどう担保するかは多くの企業にとって課題となっています。アテニアの取り組みは、実店舗で培った「接客マニュアルやノウハウ」という資産を、テクノロジーの力でデジタル空間に拡張する好例と言えます。店舗という強力な顧客接点を持ってきた企業だからこそできる、説得力のあるAI接客活用法として大いに注目されるでしょう!

過去の失敗と「クレンジング一強」からの脱却

実はアテニアにとって、接客AIエージェントの導入は今回が初めてではなく、一度はリリース直前で導入を見送った過去がある。以前はリアルな女性の3Dアバターを活用した先進的なデモを進めていたが、AIが自ら考えて回答を生成する段階になるとタイムラグや不自然な挙動が目立ち、最終的に人間がシナリオを書く本末転倒な手法となったため、経営会議直前に1年半のプロジェクトを白紙に戻すという苦渋の決断を下していた。

また、事業上の課題として、累計販売本数2200万本を突破する大ヒット商品「スキンクリア クレンズ オイル」を中心とした「クレンジングオイル一強」からの脱却がある。低価格で高品質という圧倒的なコストパフォーマンスで多数のファンを獲得する一方、高価格・高付加価値の別商品を提案しても購入されづらく、薄利多売の構造から抜け出しにくいという弱点があった。

化粧品店舗のAIエージェントが高いマッチング精度で推奨する、アテニアのスキンクリアクレンズオイル。

新AIはこの課題解決に大きく貢献しつつある。ハルシネーションによる薬機法違反等のリスクを抑えるため、マニュアルにない内容は無理に推測せず「分かりません」と返す安全な設計を採用した。導入後1カ月で、AIとの会話ラリー数は平均7〜8回(サービス全体平均は約4回)に及び、同ツールを経由したユーザーの大半がこれまで未購入だった商品を購入するという成果がすでに出始めている。

編集部コメント

AI導入において「とにかく最新で目を引く技術を導入すべき」という罠に陥り、肝心の顧客体験を損ねてしまうケースは少なくありません。直前でリリースを取りやめたアテニアの決断は、真に顧客価値に繋がるかを厳格に見極めた結果と推測できます。

顧客データとの連携で「究極の1to1接客」の実現へ

アテニアは今回の機能を、まずは影響範囲の小さいWebブラウザーで運用し、2026年中にはオンライン注文の大半を占める本丸の公式アプリへ展開する計画だ。

現在のAIビューティアドバイザーは、ブラウザーのセッションが切れると会話記録と顧客IDの紐づきが切れてしまうため、パーソナライズされた接客はまだこれからだという。しかし今後1年以内には、CRMやカートシステム、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)との連携を含めた体験設計の実装を予定している。

カートシステムやCRMと連携し、高度な接客を実現する「化粧品 店舗 AIエージェント」のシステム構成図。
将来的には顧客ID、会話ログ、購買データを完全に紐付け、過去の履歴から「前回買っていただいたクレンジングが、そろそろなくなる頃ではありませんか?」とAIがプッシュ通知を送り、そこから「今の季節なら、こちらの化粧水も合わせるとより効果的ですよ」とクロスセルを提案するような、シームレスで高度な接客体験の提供を目指している。

編集部コメント

AIが顧客のIDや購買データとシームレスに紐づくことで、これまでの受動的な「問い合わせ対応」から、能動的に提案を行う「ユーザー専属の美容部員」へと進化する可能性を秘めています。日常の雑談まで応じられるようになれば、AI自体がブランドの顔となり、顧客との強固な絆を築く日も近いでしょう。ECのあり方を根底から変えうる顧客体験の最前線例として、今後の進化から目が離せません!


EC・リテール向けメディア「Commerce Hack」とは?

Commerce Hack(コマースハック)のロゴバナー。「Commerceの常識をHACKして未来の顧客体験を創造するメディア」というキャッチコピー。

「Commerce Hack」は、commerce の常識を hack し、未来体験を創造することを目指す EC・リテール業界向けメディアです。コマースやAI、メディアコマースなど多種多様なノウハウ・知見からCommerceのイマとミライを考え、従来の商業の枠を超えた斬新なアイデア・視点をお届けします。

「Commerce Hack」アーカイブ動画配信中

Commerce Hackのオンラインセミナーのアーカイブ配信一覧。キリン、アルペン、ムラサキスポーツなどの企業事例を紹介するサムネイル群。

メーカーや小売業、EC 支援企業のキーパーソンをお招きし、企業戦略や成功体験を“裏話”とともにお届けする映像コンテンツがアーカイブで順次ご覧いただけるようになりました。

開始から約1年でリアルタイム参加1,000名を超え、多くの視聴者から高い評価をいただいています。EC・リテールの最前線で挑戦を続ける企業のリアルな戦略や、成長を生み出す仕組みづくりを、いつでも好きなタイミングでインプットできます。

過去のアーカイブ映像はこちら

=======================================

Commerce Hackメディア編集部