スギ薬局、リテールメディアを「お茶の間」に再定義——AI・データ駆動で目指す「トータルヘルスケア」の未来——
リテールメディアは広告媒体ではなく、顧客と結びつく「お茶の間」へ
スギ薬局は現在、リテールメディアを軸としたデータ活用とDX戦略を強力に推進している。
その変革を率いるのは、マイクロソフトやAWS、KADOKAWAなどで実績を持つ異色の経歴の持ち主、DX戦略本部本部長の各務茂雄氏だ。
各務氏は一般的なリテールメディアの枠組みを超え、それを顧客と深く結びつく「お茶の間」のようなコミュニティの場づくりとして再定義している。

この戦略の要となるのが、各種アプリやID-POSデータを統合した顧客理解の深化である。同社は顧客の状況を可視化し、最適なタイミングで情報を提供するマッチング精度を高めるため、販促施策のフルファネル(購買プロセス全体)運用の「内製化」を進めている。
外部ベンダーに委託するのではなく、自社で仮説を立てて検証するPDCAサイクルを迅速に回す体制を構築している点が大きな特徴だ。
編集部コメント
IT業界のペルソナ概念を導入、データドリブンなアプローチで購買率144%に
スギ薬局のマーケティングのもう一つの特徴は、IT業界において一般的な「ハイタッチ」「ネームド」「テリトリー」といったペルソナ(顧客の特性)分類の概念を小売りに取り入れている点にある。

投網を打つような大まかなアプローチではなく、ロイヤルカスタマー層から未購買層までステージに応じた緻密な施策を展開している。
実践例として、某食品メーカーの商品プロモーションでは、YouTubeでの販促動画、アプリへのクーポン配信、店頭サイネージを連動させた結果、既存顧客の購買率が前年比144%、新規顧客が同138%という高い伸びを記録した。
各務氏がここで重視しているのは、単なる売上の増加ではない。何が顧客の行動ドライバーになったのかというエビデンスを細かく分析し、次の打ち手につなげるサイクルを自社内で完結させたことに大きな価値を見出している。
編集部コメント
「AIファースト宣言」でリアルとデジタルを融合、目指すはトータルヘルスケア
データドリブン経営をさらに加速させるため、同社では社内に分散していたデータを統合する「データレイクハウス」の構築も進めている。
構造化データ(購買履歴)だけでなく非構造化データ(社内Wikiなど)も統合し、現場が迅速かつ安全に活用できる基盤を整えようとしている。
さらに「AIファースト宣言」を掲げ、各店舗でAIを活用してデータ分析ができるダッシュボードの実装や、スギ薬局アプリのアジャイル開発といった「店舗DX」も推進中だ。
しかし、各務氏が見据える究極のゴールは単なるデジタル化ではない。リアル店舗を「デジタルとアナログの交差点」と位置づけ、人事や総務などの経営基盤改革を起点に現場を活性化させることだ。
最終的には、デジタル技術とリアルの店舗・地域ネットワークを融合させたPHR(パーソナルヘルスレコード)を構築し、顧客の健康から終末期までをまるごと支える「トータルヘルスケア」の実現を目指している。

編集部コメント
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