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ファミリーマート、実店舗とデジタルを融合した「メディアコマース」戦略を本格化——2030年度に広告売上400億円へ
2026.03.25
業界トレンド

ファミリーマート、実店舗とデジタルを融合した「メディアコマース」戦略を本格化——2030年度に広告売上400億円へ

実店舗の価値を“2乗”にする「FM²」で広告事業を4倍へ

ファミリーマートは2026年2月16日、メディアコマース戦略に関する説明会を開催し、自社決済アプリやデジタルサイネージを活用した広告事業を本格化させると発表した。

2030年度までに広告事業の売上高を現在の約100億円から400億円まで引き上げる計画だ。

今回の戦略の中核となるのが、全国の店舗網「FamilyMart」とデジタルインフラ「FamilyMedia」を掛け合わせる「FM²」という構想である。

コンビニエンスストア業界で店舗の飽和化が課題となる中、デジタルインフラを活用して店舗の提供価値を“2乗”に高め、競合他社との差別化を図るねらいがある。

細見研介社長は「従来の小売業の枠を超えて、情報産業や広告業など今までのコンビニ業界では考えられなかった分野に成長の領域を広げていく」と述べており、単なる小売業から広告・メディア企業への進化を目指す姿勢を鮮明にしている。

編集部コメント

ファミリーマートが「広告会社になる」と宣言したことの意味は、小売業界だけの話ではありません。これはメディア業界への参入宣言でもあります。テレビや雑誌が束ねていた「生活者へのリーチ」を、リアルな購買接点を持つ流通企業が奪いにいく構図です。 今後、広告主の予算配分の選択肢に「コンビニ」が本格的に入ってくる時代が来るとすれば、既存メディアにとっての競合環境は静かに、しかし確実に変わっていきます!

5500万IDの「Life-Liveデータ」が消費のリアルを可視化

FM²の土台となるのが、流通業界を横断した巨大なデータ基盤「Life-Liveデータ」だ。

自社決済アプリ「ファミペイ」の3000万IDに加え、合弁会社データ・ワンを通じた提携ドラッグストアや食品スーパーのデータを合わせ、日本の成人人口の約50%に相当する計5500万IDを集積している。 

この5500万IDに紐づく年間購買総額は約10兆円に上り、国内の生活消費財の年間流通総額37兆円の約3割を占める規模となる。データ・ワンの国立冬樹社長は、店頭での購買行動を日々反映したダイナミックデータを活用することで、「生活者の暮らしのリアルを360度”見える化”することができる」と説明する。これにより、平日にコンビニでエナジードリンクを買い、週末にドラッグストアで高級入浴剤を買う消費者に「セルフケア」アイテムを提案するなど、ライフスタイルに踏み込んだ高精度なアプローチが可能となる。

編集部コメント

5500万IDを束ねるデータ基盤が整ったということは、広告の「評価軸」が変わる可能性を示しています。これまでのデジタル広告は「クリック数」「インプレッション数」が主な指標でしたが、購買データと連動すれば「広告を見た人が実際に買ったか」まで追えるようになります。 広告効果の証明責任がより厳しくなる時代に向けて、購買データを持たないメディアや広告プラットフォームは、差別化の根拠を問われることになるかもしれませんね。

アプリやサイネージを活用したメーカーのマーケティング支援

ファミリーマートは、「ファミペイ」とデジタルサイネージを活用したマーケティング支援にも取り組んでいる。

「ファミペイ」では、「Life-Liveデータ」の分析を通じて、メーカーに対して顧客理解の促進および具体的な販促策を提供している。また、アプリ内では商品購入後にアンケート調査を実施しているため、リアルタイムで獲得した顧客の声をマーケティング支援に役立てることも可能となっている。

さらに2026年春からは、メーカーへのマーケティング支援の取り組みとして、アプリに新たなサンプリング機能を追加する。これにより、全国の店舗で新商品のサンプリングを無償または割引価格で受け取れるほか、店頭の棚に並んでいない商品についても、ファミペイを通じてターゲット顧客へサンプリング提供できる仕組みを構築する。この仕組みとアンケート機能を組み合わせることで、企業のマーケティング活動の後押しにつなげていく。

編集部コメント

「棚に並ばなくても商品を届けられる」仕組みが整うと、新商品のリリースプロセスそのものが変わる可能性があります。これまでは店頭の棚を確保することがマーケティングの出発点でしたが、ターゲットに直接サンプルを届けてフィードバックを回収できるなら、棚交渉の前にデータで勝負できます。スタートアップや中小メーカーにとっては、大手と同じ土俵に立てる機会が生まれるかもしれません!

小売の枠を超える「Beyond領域」とサイネージの進化

現在、出稿企業の約7割は店舗に商品を置いていない非配荷企業であり、ブランドの「認知メディア」としての活用が拡大している。これをさらに強化するため、店舗駐車場などのリアル体験と組み合わせた「ファミマまるごとメディア」を推進し、生活消費財の枠を超えた美容、健康、金融、住宅といった「Beyond領域」への展開も進めている。

その先行事例として、25年4月には電気自動車メーカーとの共同キャンペーンを実施した。店舗駐車場での試乗予約を促すため、売場、サイネージ、アプリ通知を連動させて広告を流した結果、5週間で10店舗から計約30台の自動車を販売するという成果を上げている。

細見社長は「リアルとデジタル双方のインフラを融合させることで、これまでと違う領域に進出できるとマーケットに発信できた」と手応えを語る。

今後は事業者の利便性を向上させ、独自のメディアコマースを新たな収益の柱に育てていく方針だ。

編集部コメント

この事例が示しているのは、「コンビニ広告=日用品のもの」という前提が崩れつつあるということです。不動産、金融、保険、医療 といった「日常的には検索しないが、接点があれば興味を持つ」カテゴリーにとって、毎日訪れる場所でのコミュニケーションは大きな意味を持ちます。リテールメディアの競争は、今後「業種の幅」で決まる局面に入っていくかもしれません!

(参考・関連記事)ファミリーマート、メディアコマース戦略を本格化 30年度までに広告事業の売上高を約4倍へ


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