分散する実店舗の在庫をEC上で一元管理。4サイト統合と店舗連携がもたらす次世代オムニチャネル戦略
株式会社イシグロ
取材にご協力いただいた方
EC事業部 係長 浅田様
目的/課題
各店舗に分散する在庫を、EC上で正確かつ効率的に一元管理・販売できる体制を整えたかった
複数店舗の商品を同梱発送できず、顧客体験の低下と物流コストの増大が課題となっていた
複数サイトが別ドメインで乱立し、販促施策や在庫連動に多くのリソースを要していた
導入効果
店間移動機能の実現により、複数店舗の在庫をリアルタイムに把握し、一括発送できるようになった
4サイトを1つのプラットフォームに統合したことで、クーポン・セール・メール配信などの販促施策を、横断的に実施できるようになった
バックオフィス業務の自動化と権限管理により、誤操作を防ぎつつ店舗の作業負担を大幅に削減した
取材概要
釣具専門チェーン「イシグロ」を運営する株式会社イシグロは、静岡・愛知をメイン商圏に中部エリアで26店舗を展開しています。PB(プライベートブランド)商品『Tsulino』の企画・開発と、中古釣具の買取・販売を強みに持ち、中古釣具のEC販売では競合の少ない独自ポジションを確立しています。
旧システムでは中古・ロッドビルディングパーツ・PB(プライベートブランド)商品『Tsulino』の3サイトを別システムで運用・管理していたため、在庫管理の正確性と販促施策の一元化に課題を抱えていました。今回のリプレイスでは、旧3サイトに『シマノ』や『ダイワ』などのNB(ナショナルブランド)商品サイトを加えた4サイトの統合と、基幹システム・POSとのリアルタイム連携、そして複数店舗にまたがる注文を一元管理する独自機能「店間移動」の開発という大規模リプレイスを実施しました
本取材では、ECサイトリプレイスの背景や、独自開発で実現した「店間移動」機能の詳細、そして店舗とECが一体となった運営体制について詳しく伺いました。
1. 釣具専門店イシグロが歩んできた道と、EC事業への挑戦
御社の事業内容や主要ブランドについて教えてください
弊社は、静岡・愛知を中心に三重・岐阜・滋賀を含む中部エリアで26店舗を展開する釣具専門店です。新品の釣具販売だけでなく、中古釣具の買取・販売や釣具の修理、アパレル商品の展開など幅広いサービスを提供し、地域の釣り人を支える店舗づくりに取り組んでいます。
他の釣具店との差別化という点では、2つの軸があります。一つは、PB(プライベートブランド)商品『Tsulino(ツリノ)』を企画から製造まで自社で手掛けていること。もう一つは、中古釣具の買取・販売を中心としたリユース事業を展開していることです。
そして、このリユース事業をさらに後押ししているのがECの存在です。中古商品は、同じ型番でも状態・傷・使用感がすべて異なる一点ものです。実店舗の商圏は中部エリアに限られますが、ECを活用することで、こうした「一点もの」を探している全国のお客様へダイレクトに販売できることこそがECの強みだと考えています。
EC事業部のご担当範囲と、ECを通じてお客様に届けたい体験について教えてください
EC事業部では、梱包・ささげ・特集記事の制作など、EC運営にかかわる業務全般を基本的に私一人で管理しています。
釣具は専門性が高い商材で、どのような釣りをし、どのような環境で使うかによって必要な道具が全く変わってきます。店舗ではスタッフがお客様の状況を聞きながら提案できますが、ECでも同じような体験を届けたいと考えてきました。
ECでは、釣りの場面やケースに応じて必要な釣具を記事で紹介し、お客様が自然に購入へ進める環境を整えています。一方、ポータルサイトでは、店舗スタッフが各地の釣果情報を提供し、どこでどんな魚が釣れているのかというリアルな情報を共有できる地域のコミュニティとして機能しています。
様々な接点を通じた一連の体験により、釣りという楽しみをより豊かに届けていきたいと考えています。
2. 4サイト統合と在庫管理の限界
リプレイス前の課題を教えてください
今回のシステムリプレイスで最も重視したのは、各店舗に分散した在庫をECで一元管理できる仕組みの構築です。
店舗在庫を効率的に活用するためには、注文が入った際にどの店舗にどの商品があるかをリアルタイムで把握し、出荷元に集約して発送する仕組みが必要です。
その仕組みを実現するために不可欠だったのが「店間移動」という機能です。

| 用語解説 店間移動とは |
| 各店舗に在庫が分散しているEC事業者向けの機能で、複数店舗にまたがる注文が入った際に、各店舗の商品を中継拠点に集約してから一括発送する機能。通常、商品が店舗間を移動している間(積送中)も、EC上では在庫として表示されてしまうため、過受注が起きるリスクがあります。そこで積送中の在庫を別途管理し、販売できる在庫数を 「確定値在庫 − EC出荷前注文分 − 積送中在庫」 で正確に算出することで、重複販売を防いでいます。 |
中古品に加えて、NB商品やPB商品『Tsulino』についても、店舗在庫からの発送に切り替えたことで、複数店舗にまたがる発送が当たり前に発生するようになりました。
A店の商品とB店の商品がカート内に入った注文をまとめて発送するには、どの店舗に何があるかをリアルタイムで把握しながら、中継拠点で集約する仕組みが欠かせません。「どの店舗に何があるかをリアルタイムで把握し、まとめて出荷できる」店間移動の機能は、店舗中心の在庫構造を持つイシグロのECの基盤となっています。
W2 Commerceを選定された決め手は何でしたか?
弊社が求める要件を幅広くカバーできる「標準機能の充実度」と、独自の業務要件を実現できる「個別開発(カスタマイズ)の柔軟性」が決め手でした。
標準機能の面では、実店舗の顧客情報・ポイント統合を追加開発なしで実装できることが評価のポイントでした。また、NB商品・中古品・ロッドビルディングパーツ・PB商品『Tsulino』という商材の異なる4つのサイトを、標準機能で一元管理できることも、選定の決め手となりました。
個別開発(カスタマイズ)については、弊社のリユース事業特有の要件をどこまで実現できるかが選定の鍵でした。基幹システムとのリアルタイム在庫連携や、複数店舗にまたがる注文を一括出荷する「店間移動」のような固有な要件にも対応できることも、W2 Commerceを選んだ決め手となっています。
3. 「店間移動」の実現で大きく変わったEC運営の現場
W2 Commerceで実現できたことを教えてください
各店舗に分散した在庫をECで円滑に販売できる仕組みが実現したことです。店間移動機能により、複数店舗の商品を効率的に集約・配送できるようになりました。
この店間移動のおかげで、以前から実施していた「店舗受け取りサービス」もさらに活用しやすくなりました。店舗受け取りに対応していることで、お客様が最寄りの店舗での受け取りを選択する機会が増え、店舗への送客に大きくつながっています。
その結果、実際に商品を受け取るために来店されたお客様が、店内の他の商品にも興味を持ち、予定になかった商品も一緒に購入する「ついで買い」が生まれており、売上向上に貢献しています。
商品の見せ方という点でも、サイトごとの特性に合わせた作り込みができるようになりました。
特にロッドビルディングパーツサイトでは、専門店としてのこだわりを形にしています。商品点数が膨大なこのサイトでは、パーツ名で直接検索できる基本の導線に加え、探しているパーツをクリックすることで対応部品を絞り込める、独自の検索導線を開発実装してもらいました。。知識の深さを問わず、目的のパーツにたどり着けるUXが、EC経由での購入ハードルを下げることにつながっています。
このように、目的のパーツへ直感的にたどり着ける高いUI/UXを実現したことで、サイト内での迷いやストレスをなくし、ECでもスムーズに購入していただくための工夫を凝らしています。
W2 Commerce導入後の成果を教えてください
一番変化を感じているのは、ささげをはじめとするバックオフィス業務の効率化です。W2 Commerceを起点に商品情報が基幹システムと自動で連携されるため、店舗スタッフは現場でW2 Commerceに商品画像を追加して、送料区分を設定するだけで、ECへの掲載準備が完了するようになりました。
なお、POSシステムから基幹システムを経由してW2 Commerceへ、在庫情報が30分ごとに自動同期されています。どの店舗にどの商品が何点あるかをEC上で常時把握できる体制が整い、一点ものの中古商品においても在庫状況をリアルタイムで反映したEC販売が可能になっています。
さらに多くの店舗スタッフがEC業務に関わる上で、W2 Commerceの柔軟な権限管理機能が非常に活きています。
各スタッフには「担当店舗の必要な機能」を細かく制限して利用権限付与できるため、他店のデータを誤って書き換えるといった操作ミスや、不要な情報漏洩のリスクを未然に防いでいます。
スタッフ側も「自分に関係のある画面だけ」が表示されるため迷わず作業でき、本部としてもセキュリティを担保した状態で、安心して現場に業務を任せることができます。
店舗スタッフはささげ業務の負担が下がり、本来の接客や販売業務に集中できるようになっています。これにより、膨大な種類の商品をスピーディーにECへ掲載できるようになり、中古品の注文数も伸びています。
店舗とECの双方に成果をもたらす運営へと変化しており、今後もW2 Commerceを軸に店舗とECの連携をさらに深めていく予定です。
4. 実店舗×ECで描く、釣具専門店の次の戦略
今後の事業戦略について教えてください
直近では、店舗で扱っている調味料や食品のEC展開を計画しています。そのための準備として、現在は10%のみとなっている消費税の軽減税率対応を開発中です。釣りと食は非常に相性のよい領域であり、釣り場でのごはんや調理まで一緒に楽しむお客様に向けて、さらなる価値提供ができると考えています。
新規のお客様に向けたアプローチも、今後の重要な戦略の一つです。システム刷新を機に、会員登録なしでも購入できる「ゲスト購入」の仕組みを導入したことで、より気軽に買い物ができる環境が整いました。
このおかげで、現在は関東や関西など、実店舗のないエリアの新規開拓ができています。
中長期では、中古釣具の海外販路開拓を視野に入れています。日本の釣具は海外でも人気が高く、実店舗がある中部エリア中心の商圏から、ECであれば国内外へと一気に広がります。特に中古品は世界に一点しかないものですから、欲しいと思ってくれるお客様がいるならば遠くへでも届けたいという思いがEC事業の根底にあります。
店舗とECが一体となった運営の仕組みを育てながら、釣具専門店としてお客様の釣りライフをより豊かにしていけるよう、ECを通じた体験づくりにこれからも取り組んでいきたいと考えています。










